時を司る指揮者のタイムピース ―― ブルガリを愛用するロレンツォ・ヴィオッティ氏インタビュー
指揮者、それは楽曲への解釈をオーケストラに伝え、それぞれの楽器の演奏のニュアンスや強弱とともに「テンポ」という「時」までもまとめ上げる仕事。東京交響楽団への客演のため来日した指揮者にして、【ブルガリ(BVLGARI)】のグローバル ウォッチ アンバサダーでもあるロレンツォ・ヴィオッティ氏に、「時」そして「時計」への思いを聞いた。
9月に行われた東京交響楽団での公演のため来日したロレンツォ・ヴィオッティ氏
―― 今日の時計は「オクト ローマ クロノグラフ」ですね? クル・ド・パリ仕上げの美しいダイアルが印象的です。この時計を選んだ理由を教えてください。
(ロレンツォ・ヴィオッティ氏)「僕が時計を選ぶ時に大切にしているのは、その時計が持つ雰囲気が自分やシチュエーションに合っているかということ。指揮をするシリアスな場面と、こうしてブルガリ ホテル 東京の部屋でカジュアルな装いでくつろぐ場面では当然、選ぶ時計は違ってきます。古代ローマの建築物をモチーフにした「オクト」との最初の出会いは、「オクト フィニッシモ」。最薄の記録を更新し続けている時計の美しさとテクノロジーに心を揺さぶられました。今年発表されたこの「オクト ローマ クロノグラフ」は、もう少しエレガントな印象。ビジネスシーンなら標準のステンレススチールのブレスレットも良いですが、僕は指揮者だし今はプライベートな時間なのでラバーのストラップにして着用しています。僕のアイデンティティにも肌にも寄り添ってくれて、こんなに自分にフィットする時計のブランドのアンバサダーを務められるのは幸せなことだと改めて感じています」
―― ロレンツォさんにとって時計とは?
「僕にとっての時計は、感情を揺さぶるもの。何時かを知るためだけならこの時代、スマートフォンがあれば用は足りるでしょう? でも、時計にはそれ以上の意味や役割があると思っています。たとえば自分の社会的地位や、ソサエティにおいて自分をどう見せたいかを時計で表現する人もいますよね。僕の場合は時計に自分の気持ちや思い出を重ねることが多いですね。父の形見の時計を身につけた日は、父と一緒に過ごした日々を思い出しながら過ごすこともできます。ブルガリにはジェムストーンをセッティングしたレディスウオッチも沢山ありますが、美しい芸術品としてそれらを眺めるのも好きですね」
―― 指揮者は大勢のオーケストラの演奏者を統括し、「テンポ」や「リズム」をまとめ上げる仕事でもあります。職業柄「時」に対する感覚は他の人よりも優れているものなのでしょうか?
「テンポが少しでもズレるだけで音楽は成り立たなくなるので、指揮者がオーケストラの演奏者みんなの「時」をまとめ、グルーヴを生み出すのは大切なことですね。ご存じかもしれませんが僕は指揮を学ぶ前に打楽器の勉強もしていて、ウイーンフィルの公演に打楽器奏者として参加したこともあり、リズムやテンポには人一倍敏感なのかもしれません。そして幸せなことに健康で、人生を楽しんでいる。これも指揮者にとって大切なことなのです。たとえば今回東京に来る飛行機は4時間遅れたのだけれど、時間をロスしたとイライラするのではなく、おかげで待ち時間に美味しいラーメンを食べることができた、とポジティブに考えることも必要だと思っています。“タイム・イズ・ラグジュアリー”。そう、常に精神的に豊かであることも指揮者として人として忘れてはならないと考えています」
―― ロレンツォさんはブルガリのグローバル ウォッチ アンバサダーを務めていますが、クラシック音楽と時計にはどんな共通項を感じますか?
「創業者のソリティオ・ブルガリ氏がブルガリというブランドをスタートするずっと前から時計が存在していたように、クラシック音楽は僕が音楽の世界に入る遥か昔から存在する偉大な芸術です。たとえば今回、東京交響楽団で指揮したベートーベンの「英雄」も、多くのお客様にとってはもう知っている楽曲だと思います。僕にとってはそこにいかに自分らしさを添えて新しく表現するか、が毎回の課題。ブルガリも同様にアイコニックな八角形のケースをデザインしたり、スケルトンのモデルを開発したり、伝統をリスペクトしながら新しい挑戦を続けているのではないでしょうか」
―― 「古典」に「自分らしさ」を取り入れるために心がけていることはありますか?
「古典に自分らしさを取り入れる方法は、それほど難しいことではありません。大切なのは、対話。オーケストラのメンバーに私が何者で何を考えているかをきちんと伝え、信じてもらうことで人はついてきてくれます。あとは音楽に対する愛情と情熱でしょうか。もしあなたが初めてブルガリのブティックを訪れたとして、お店のスタッフがどのように迎えてくれたかでブランドへの印象は変わるでしょう? 同様に、音楽という芸術に関わる者としては初めてクラシックのコンサートに訪れた観客には、リラックスして音楽を楽しんでいただき、また来たいと思っていただけるための使命と責任を感じて挑んでいます。敷居が高いとか、つまらないとか思われると、お客様は二度と来なくなってしまいますからね。クラシックのコンサートは感情の旅。お客様は演奏を通して歓びから哀しみまで、さまざまな気持ちを味わうことができます。皆さんもぜひ、ドレスアップして素敵な時計やジュエリーを身につけ、コンサート会場に足を運んでください」
ロレンツォ・ヴィオッティ氏
指揮者。1990年スイスのローザンヌ生まれ。父は指揮者のジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ。リヨン音楽院で指揮を学ぶ。2012年、カダケス交響楽団国際指揮コンクール1位。2015年、ネスレ・ヤング・コンダクターズ・アワードで優勝。2016年、MDR交響楽団の指揮者コンクールで優勝。2017年、国際オペラ賞「新人賞」受賞、ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に任命される。2022年よりブルガリのグローバル ウオッチ アンバサダーを務める。
ロレンツォ・ヴィオッティ氏着用モデル
ブルガリ「オクト ローマ クロノグラフ」 Ref.103471 132万円
2023年のリニューアルにより、サークルとオクタゴンを融合したユニークなフォルムがブラッシュアップされたオクト ローマのクロノグラフ。サテンとポリッシュで仕上げ分けした美しいケースに、高品質なマニュファクチュールムーブメントや、クル・ド・パリ装飾のブラックダイアルを備える。ケースと同素材のブレスレットのほか、交換用ラバーストラップが付属する。
スペック:自動巻き(自社製Cal.BVL399)、毎時2万8800振動、42時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm。100m防水。
問い合わせ先:ブルガリ ジャパン TEL.03-6362-0100 https://www.bulgari.com/ja-jp/
Text/清水井朋子 Photo/高橋敬大(TRS) ヘア&メイク/Eita(Iris)