オシアナスの切子デザインが描き出す新たなる水平線「OCW-SG1000CN」「OCW-S7000CN」企画担当者インタビュー

カシオが展開する上質ウオッチラインの「オシアナス(OCEANUS)」から、2018年より続く江戸切子モデルの最新作「OCW-S7000CN」と「OCW-SG1000CN」が発表された。とくに後者は、表現の可能性をさらに広げたブランド史上最高額の一本となっている。これらの新作にかける思いを、企画担当の佐藤さんに聞いた。

オシアナスの新たな時代を象徴する新作

「オシアナスは2025年で21年目を迎えました。これまで多くのお客様にお買い求めいただけており、ありがたい限りです。また、買い増しや買い替えで長くブランドをご愛用いただいているお客様も多くいらっしゃいます。そうした方々に新たなご提案をするとともに、これまでオシアナスがノーマークだった方にもご覧いただけるようなモデルを目指して今回の『OCW-SG1000CN』を企画しました」(佐藤さん)

オシアナス商品企画の佐藤さん

–オシアナスといえば「海」のイメージがあります。一方、今回の新作では象徴的なオシアナスブルーが控えめです。具体的にどのような表現を目指したのでしょうか?

佐藤さん:『CALM NIGHT』をデザインテーマとし、月の光に照らされた夜の静かな海をオールブラックのチタンと江戸切子のサファイアガラスベゼルで表現しました、今年の新作は総じてモノトーン、シック、レトロなモデルに注力してきており、それを踏襲したものでもあります。

–ベゼルひとつとっても、とても手が込んでいることがひと目で伝わります。

佐藤さん:オシアナスの江戸切子モデルは、初代『OCW-S4000C』からずっと堀口切子の三代秀石、堀口 徹さんにご協力いただいています。これまでにも色々な表現をお願いしてきましたが、ベゼルの表と裏で彫り分ける手法をはじめとして今回も数多くの加工を行なっていただきました。もちろん堀口さんだけでなく、このベゼルを一枚完成させるためにサファイアガラスをカットし、江戸切子を施して、蒸着をかけるという工程を経ており、多くの職人技の集大成となっています。とくにガリウムソーラー搭載の『OCW-SG1000CN』は、ベゼルの上半分をカットした後に堀口さんに作業していただき、またサファイアガラスをカットする職人さんの方に戻して下半分をカットしてから、再び堀口さんのところへ届けるなど、さらに手間も工程も多くなっています。

左から右へ徐々に完成に向かう。サファイアガラスをファセットカット加工し、表面上半分をカット+切子加工。今度は下半分にカット加工をして、その裏面に切子加工を施す。裏面下半分にシルバー蒸着を施したら、最後にグラデーション蒸着を施す。ベゼル内側の立面にもシルバー蒸着を施すことで、より豊かな表情を作り出す

–ベゼルにメタルフレームのある「OCW-S7000CN」と、完全なサファイアガラス塊から切り出した「OCW-SG1000CN」では、2倍以上の価格が設定されている理由ですね。

佐藤さん:さらに、先ほど少し触れました通り『OCW-SG1000CN』にはガリウムタフソーラーという先進技術を使っています。これは、昨年のカシオ計算機時計事業50周年記念としてオシアナスから発表した限定モデルのメカニズムがベースです。ですから新作もスケルトンデザインにしたカレンダーディスクの下層にガリウムソーラーセルがあり、そこから時計に必要な電力を賄っていて、そのおかげで金属文字盤を使うことができました。

OCW-SG1000CNの金属文字盤とサファイアガラスベゼル。どちらも難易度の高い様々な工程を経て完成する。

型打ち文字盤にはメッキと塗装を重ねてブラックに着色したあと、さらに塗膜ラップを施すなど、多くの工程を経ることで月の表情を作り出しています。一方の『OCW-S7000CN』の文字盤はポリカーボネート製ですが、こちらも遮光分散型ソーラーの採用のおかげで深みのあるブラックの全面透過ダイアルをとなっています。また、カシオの持つ高度な金型加工技術により、こちらも月面を想起させる梨地調の質感を盤面に作り出せました。

チタンのベゼルフレームを持つ「OCW-SG1000CN」は、サファイアガラスの裏面に切子加工を施す。表面の下半分には14面のファセットカットを入れ、水平の「千筋」を強調

宇宙までも強くイメージさせる機能とデザイン

–そういえば、ガリウムがとても高価であることは以前のモデルを取材した際にもおっしゃっていましたね。

佐藤さん:元々は人工衛星のソーラーパネルに使うような技術なので、それを腕時計のサイズに使うこと自体が前代未聞のチャレンジでしたからね。今回のデザインテーマである『CALM NIGHT』の要素のひとつに月があるので、機能とデザインの両面で宇宙を感じていただけたら嬉しいですね。

–改めてベゼルのことをもう少し詳しくお聞きしたいのですが、なぜ『OCW-SG1000CN』は表と裏で江戸切子を彫り分けたのでしょうか?

佐藤さん:サファイアガラスの塊から削り出すベゼルは、よりわかりやすくインパクトを追求しています。宝石と同じ24面のファセットカットを入れて、さらに不規則なカットを下半分に入れています。江戸切子の技法『千筋』は表面では放射状に20本、裏面下半分には水平上に12本。これら『千筋』を入れる作業工程上、上下でカット面が異なるベゼルの表と裏を一度にはできないのです。ちなみに、このサファイアガラスは裏面にシルバー蒸着を入れてから、それを剥がすという工程も入っています。もったいないように思えますが、こうすることで江戸切子の面に残るシルバーが際立つんですね。

このような手間を惜しまずに作り上げたベゼルに、ようやくグラデーションの蒸着をかけてデザインテーマに沿った色表現を仕上げます。蒸着もブラックとシルバーのモノトーンではあるのですが、実は光の反射によって青みを帯びて見えるようなカラーを狙って蒸着をかけています。こうした匙加減は、長年蓄積してきた技術の賜物といえるでしょう。

–色々と角度を変えると、確かに月明かりが反射した夜の海のような輝きが出現してきますね。雑誌編集者の目線で見ると、何が正解の色かわからないので印刷時に困るだろうな、と思ってしまいました(苦笑)。

自然光を当てると、複数のファセットを持つサファイアガラス内で乱反射した光があらゆる色を作り出し、豊かな豊穣を見せる。

佐藤さん:上下で異なる面が光を乱反射することから生まれる、“ゆらぎ”のような表現を堀口さんと追求してきた甲斐がありました(笑)。今回の新作で、オシアナスの新しい一面を作り出せたと自負しています。

オシアナス「OCW-SG1000CN-1AJR」68万2000円 モバイルリンク機能付きガリウムタフソーラー電波。ブラックDLCチタンケース&ブレスレット。縦47.5×横43×11.7mm。質量99g。10気圧防水。世界限定600本(店頭在庫のみ)
オシアナス「OCW-S7000CN-1AJR」30万8000円 モバイルリンク機能付きタフソーラー電波。ブラックDLCチタンケース&ブレスレット。縦47.5×横42.8×9.8mm。質量81g。10気圧防水。世界限定1600本

問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL. 0120-088925(時計専用) https://www.casio.com/jp/watches/oceanus/

Text/Daisuke Suito (WATCHNAVI)
Photo/Kensuke Suzuki (ONE PUBLISHING)