デザイナーが断言“「Timex Atelier」はタイメックス流のラグジュアリーを体現した最高峰コレクションである”

去る11月某日、タイメックスグループのクリエイティブ・ディレクターでデザイナーのジョルジオ・ガリ氏が約2年ぶりに日本へやってきた。今回の来日の目的は、彼が手にしていた新作「タイメックス アトリエ」のプロモーション。前回の来日の際にインタビューした「S1」や「S2」の流れを汲む、タイメックス流のラグジュアリーを体現した新たなハイエンドコレクションの誕生背景について話を聞いた。

「S1」「S2」の好評を受けて作り上げた新コレクション

「タイメックス アトリエ マリーン M1a」。文字盤やベゼルに本格的なダイバーズウオッチのデザインコードを踏襲しながら、随所に現代的なアレンジを加えている

-1年半前のインタビューでは、あなたのシグネチャーが入った限定モデル「S1」や「S2」について主にお話しを伺いました。今回の「タイメックス アトリエ」は、どのようなモデルになるのでしょうか?

ガリ氏:2019年に限定製造した「S1」と、その続編である「S2」は、“タイメックスの機械式時計が欲しい”というユーザーの声に応えてデザインしたものでした。タイメックスは1970年代にはスイスメイドの機械式時計も手掛けていたので、そうした過去に敬意を払いながら作り上げたのです。結果、とても高評価をいただき、いずれも完売を記録しました。こうした市場からの反響を受けてコレクション化したのが、今回の「タイメックス アトリエ」です。

タイメックスグループのクリエイティブ・ディレクターを長年務めるジョルジオ・ガリ氏。

–“アトリエ”という言葉にはどのような意味が込められているのでしょうか?

ガリ氏:タイメックスはスイスのルガーノにも拠点があり、そこをアトリエと呼んでいることもあってコレクション名に冠することに決めました。その名の通り、スイス製のムーブメントを使い、スイスで組み立てを行った時計なのです。どちらにもボックスシェイプのサファイアクリスタル風防を使い、マリーンにはセラミックインサートベゼルも用いるなど、素材使いでも特別なコレクションとなっています。

以前、タイメックスだけでも1000本近くの定番品があると伺いましたが、その中でも最高峰に位置するコレクションとなりますか?

ガリ氏:私たちは「タイメックス アトリエ」を、タイメックス流のラグジュアリーを体現するコレクションだと考えています。“ラグジュアリー=贅沢品”と考える方が多いと思いますが、そうした意味での特別さではなく、むしろ「タイメックス アトリエ」は日常に溶け込むことができる腕時計だと考えているのです。この時計は良質な素材、仕上げ、デザインが融合した、使う人のライフスタイルに寄り添うラグジュアリーの在り方を体現しています。そうした点において、ブランドの最高峰と言えるでしょう。

凹型の側面を持つブレスが中空きのケースと呼応。力強いリューズガードの奥にはブラックカラーのミドルケースが見える

レガシー オブ モダニティ

–ラグジュアリーという言葉を使うことは、「タイメックスも高級時計の領域に本格参入する」という宣言でもあるわけですね。

ガリ氏:そう捉えることもできるでしょう。私たちが使う“ラグジュアリー”には多くの意味が含まれていますから、ひと言でまとめることは難しいです。一例として、「タイメックス アトリエ」では使ううちに色々な発見ができて楽しめるよう、デザインには様々な工夫を凝らしています。インナーケースとアウターケースの構造や、リューズガードの取り付け方、文字盤の多層ラッカーなどは、私自身が何度見ても楽しめるディテールです。すでにアメリカではダイバーズとGMTを先行発売していて、どちらも多くの人々に好評を得ることができ初期ロットは完売しました。こうした事実からも、「タイメックス アトリエ」が高級時計市場の要求に応えた腕時計であることの証明になるかと思います。

取材時に届いたばかりの専用ディスプレイには“時間をかけてゆっくり発見できるようデザインされている”というガリ氏の言葉を記載。

–事前に読んだ製品リリースで気になった点があって、このモデルで初めてCATENA製ムーブメントの存在を知りました。「S2 オートマティック」ではセリタ製でしたよね?

ガリ氏:アメリカで発表したときにも多くのジャーナリストから聞かれました。「CATENAとはなんだ」って(笑)。 スイスのラ・ショー=ド=フォンに1947年に創業したこの会社には自社ブランドの時計もあるのですが、他社にムーブメントの供給も行っています。タイメックスグループとしてはヴェルサーチェやフェラガモといったライセンスブランドの機械式時計に同社のムーブメントを搭載していて、性能が安定していることもわかっていたので「タイメックス アトリエ マリーンM1a」での採用を決めました。確かにより良いスイス製のムーブメントはいくらでもありますが、逆もまた然りで価格以上のパフォーマンスを有するものだって多いのです。何より、やみくもに高級化を追求するだけでは、価格設定まで見据えて新規開発を行うタイメックスの流儀から外れてしまいますからね。

CATENA製ムーブメントの動きがシースルーバックから確認可能。ブレスは工具不要で簡単に取り外しや調整ができる。バックルはあえてスナップタイプの両開きのバタフライ式を採用。

–こちらのGMTのモデル のムーブメントは同じスイス製でもランデロン製なんですね。今後、適材適所でムーブメントを使い分けていくイメージでしょうか?

ガリ氏:プラン自体はいろいろとありますが、ローンチしたばかりのコレクションであらゆる可能性を見据えているため、今後の展開について明確にお伝えすることは控えさせてもらいます。「タイメックス アトリエ」のプロモーション動画に“レガシー オブ モダニティ”というキャッチコピーを添えた通り、この時計はやがてレガシーになることを見据えた現代性を表現しています。懐古主義ではないし、近未来志向でもない。確実に言えることは、「タイメックス アトリエ」が現時点におけるタイメックスの考えるラグジュアリーの象徴であり、ブランドの最高峰であるということです。

マリーンとともに発売となる「タイメックス アトリエ GMT24 M1a」。ボックス型のサファイアクリスタル風防を採用し、ランデロン製ムーブメントを搭載する。

インタビュー後記

こちらは筆者所有の「タイメックス ジョルジオ・ガリ S2 オートマティック」。

自身も「S2 オートマティック」ユーザーである筆者の約2年に及ぶ使用感として、この時計は間違いなく普段使いに適していると断言できる。ブランドのなかで最高峰に位置するだけあり仕上げなどのクオリティは極めて高く、中空きのケース設計は見た目のユニークさに加えて軽量化にも貢献。着け心地は軽快である。日々時計に携わる人と関わることの多い職業柄、時計について尋ねられることも多いが、「S2」を見せると好意的な反応ばかりと、あまりデメリットを感じたことがない。何より、これがタイメックスの時計であると伝えてすぐに時計の魅力に話が進められるという、ブランドの知名度の高さを改めて再認識できた。そのDNAを継承する「タイメックス アトリエ」が、すでにアメリカで好評を博している理由にも納得だ。日本での発売は2026年1月23日(金)の予定とのこと。その動向に注目したい。

「タイメックス アトリエ マリーン M1a」Ref.TW2Y72500/19万8000円 自動巻き(CATENA製)、毎時2万8800振動、約36時間パワーリザーブ。SSケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径41mm。200m防水。
「タイメックス アトリエ マリーン M1a」Ref.TW2Y72600/17万6000円 自動巻き(CATENA製)、毎時2万8800振動、約36時間パワーリザーブ。SSケース(シースルーバック)。直径41mm。NBR(合成ゴム)製ストラップ。200m防水。

プロモーション動画(34sec.)

問い合わせ先:ウエニ貿易 TEL.03-5815-3277 https://www.timexwatch.jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。

Text/Daisuke Suito (WATCHNAVI) Photo/Kensuke Suzuki (ONE-PUBLISHING)