【レッドブル・エアレース千葉2017】2連覇の快挙を成し遂げた無敵のパイロット・室屋義秀選手にインタビュー

先日開催された「レッドブル・エアレース千葉2017」で、前年に続き見事母国優勝を飾った室屋義秀選手。興奮と大歓声に湧いたレースから後日、室屋選手がスタジオ・ブライトリングでメディア取材に応じ、レース当日の思いや今後の目標などについてたっぷりと語ってくれました。

 

今年の1年間は、実力の通りに飛ぶと決めていた

Yoshihide Muroya of Japan (C) celebrates with Petr Kopfstein of Czech Republic (L) and Martin Sonka of Czech Republic (R) during the Award Ceremony at the third stage of the Red Bull Air Race World Championship in Chiba, Japan on June 1, 2017.//Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

―2年連続の千葉大会優勝と今シーズンの2連覇おめでとうございます! 今回は非常に難易度の高いレーストラックと言われていましたが、実際にどのように感じましたか?

難しかったのはゲート6番、7番という1番左のライン取りでした。攻めるとだいぶタイムは上がるんですが、切り返すタイミングが微妙で。目一杯奥までいって最後のゲートで角度をとって入ると、その後グッと伸びていくんですが、それをやるとものすごくリスキーなんです。

ちょうど風がゲートの後ろへと吹いているので、少しでも風が強いと飛行機が数メーター流されてしまう。結局パイロンヒットになるか、それを避けるためにウイングレベルを取れないか、というとこで。あそこは勝負どころでした。

Overview of the race track is seen prior to the third stage of the Red Bull Air Race World Championship in Chiba, Japan on June 1, 2017.//Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

ファイナルにいくときは“一か八か”だと負けると思いました。結果、ノーペナルティで55.2秒台を出せました。これが55.8秒ぐらいの記録だと、相手が「あ、もう大丈夫だ」と余裕に構えてくる。それぐらいの差です。

マルティン・ソンカ選手とマティアス・ドルダラー選手は、54秒台のペースで飛んでたので、このままいかれたらもう勝てないという攻め際でした。でも相手タイムに余裕はないのでパイロンヒットするし、焦ってミスするんですよね。勝てたのはラッキーでしたが戦略も間違ってなかった。

“実力の通りに、今年の1年間は飛ぶ”と決めているので、そこに戻ってやったのが結果として良かったと思いますね。

 

コンディションをキープするのは針の穴を通すような感じ

―自分が後ろで飛ぶ場合、前のパイロットの方が同じようなタイムの出し方をされると、飛び方を変えざるを得なかったりするんでしょうか?

ここ1番、優勝しようと思えばそうですね。ただ今年はちゃんとポイントを固めていく戦略なので、落ち着いて操縦することが重要だと思っています。といってもレースをすればどんどんヒートアップしてくるので、実際はなかなか難しいんです(笑)。

 

―ペトル・コプシュタイン選手に0.007秒上回り勝ち上がったわけですが、そのときの心境は?

あのときは無線でタイムを言われて、どっちかなと思ったんですけど。55.7とかでしたっけ? そのあとがいくつだったか、相手のタイムはさすがに覚えてないので(笑)。勝ったことしか、僕もわからなくて。何秒差というのは着陸してから知りましたね。

―「ファイナル4」のときにコックピットの映像が写って、室屋さんが気合を入れているような映像が写ったのですが…

気合を入れても早くはなりませんが、これはもうルーティンなんですよね。ただ叫ぶのではなくてちょっと緊張していると思えば顔の筋肉を動かしてテンポを作っていく、みたいなことを考えてやっています。

反応時間というのは本当に短くて、ちょっとした緊張感とかリラックスとかでずれちゃうんです。針の穴を通すような感じで、自分のコンディションをキープしないといけません。

いかにしてその状態を保つかは本当に難しいんですけどね。トラック中も声を出してタイミングを出していく、みたいなのはプランニングとしてやってます。

―昨年から機体を変えて準備を重ねてこられましたよね。去年の優勝とサンディエゴの優勝を経験して自信がついたことが、今回の優勝にも影響したと思われますか?

逆かもしれないです。チームが力をつけて勝てるだけの能力を作ってきて、その中で自分のメンタル的にも自信を作り上げなければ勝てないので。

勝ったから自信がつくというのは多少あるかもしれませんけど、実際は反対です。自信そのものを作り上げていくというのが必要なので、その中で勝ってきた結果というのは、やってきたことが正しかった証明にはなるという感じですかね。そういう意味では自分たちがやってきたことへの自信は生まれると思います。

1位ではなく年間のチャンピオンシップを狙うのが大事

―今シーズンとしての感触は、振り返るといかがですか?

頭から年間総合優勝は目標にしていましたし、その中で実力を少しづつ積み重ねていたおかげで2勝がとれました。それでも勝ったから手応えができたわけではなくて、昨年からそこに向かっていく準備をしてきているので。そういう意味では前半戦はうまくいったと思います。

―その中で2015年から着用されているブライトリングは、かなり思い入れの強い時計になってきているのではないですか?

そうですね。だいぶシャンパンも浴びてますのでね(笑)。

―ちなみに、普段から腕時計はされていますか?

わりと1日中つけっぱなしですね。ブライトリングって丁寧に扱われると思うんですけど、僕は作業中もつけっぱなしなので、かなり過酷な使い方をしています。やっぱりぶつかっちゃいますからね。

↑室屋選手が愛用するブライトリング「クロノマット ブラック カーボン」。レースでは欠かせない相棒だ

 

―時間はパイロットにとって重要なんですね

レース中にエンジンをかける時間も15秒単位ぐらいですし、離陸時間も15秒とか30秒とか制限されています。早くかけると燃料も減ってくるので、パイロットたちは燃料を減らしたいから早くかけるわけです。

2キロ弱が1分ぐらいで減ってくるので、ともかく早く離陸して早く燃料を燃やす、機体を軽くしようということになるんですね。

なので非常に時間で制限されるんです。そういう中に常にいるので、時計はけっこう見ます。フライト中はもちろん見られませんが、離陸前の何秒とか何分とか、というのは見ています。時間をいつも正確に見るクセはあるんだと思います。

―そうすると、プライベートでも時間は細かく気にされますか?

ずっとやっていると疲れちゃうので、プライベートになると一気に崩れてしまいます(笑)。だいたい10分単位ぐらいでいけばいいや、という感じで。あまり時間で縛るようなことはしないかな。オンとオフはちゃんと切り替えます。

飛行機に興味をもってもらうのが僕の大きな仕事のひとつ

―大会は7月のブダペストに始まって残り5戦あります。ロシア・カザンは初の開催地となりますが、レースに向けてご自分の見立てはいかがでしょうか?

千葉戦とかは結構ターンが多くGがかかって、全体の速度が少し遅くなるようなトラックでした。そうなってくると、ウィングレット勢(※)が速いんですね。今回は我々けっこうきつくて、トラックレコードも出せていないので一番のタイムは出てないんですね。なので、最終戦のインディアナポリス(アメリカ)はけっこう苦しいだろうというのと、ラウジッツ(ドイツ)もターンが多いので若干苦しめかなと思います。ブダペストはかなり直線型でけっこうスピードが出るので、そこは若干有利ではないかなと。

(※)浮力誘導抗力を減らして遅いスピードでも多くの浮力を生み出す翼の先端に取り付けられる小翼。翼の先端に取り付けられている

 

こんな見立てなので、有利なところは確実にとっていかないといけないし、苦しいところでもファイナルに残るぐらいできちっとポイントを固めていくのは大事だと思います。

あとは今チャンピオンシップでリードしているので、同じようなフライトを積み重ねてファイナルに残っていけられたら。そんなに優勝、優勝しなくても良くなってきていますからね。あと優勝したら、今年は勝っちゃうので(笑)。2勝ってけっこう大きいんですよ。

もうひとつぐらい勝っていれば十分トップにはいけるかと思います。あまり1位を狙いすぎても、結果ミスが出てきてしますので1年間のチャンピオンシップを狙っていくのが大事だと思います。

Yoshihide Muroya of Japan performs during the finals at the third stage of the Red Bull Air Race World Championship in Chiba, Japan on June 4, 2017.//Armin Walcher / Red Bull Content Pool

―最後にエアレース以外での今後の活動を教えてください。

今年も各地でエアロバティックのエアーショーを行います。ブライトリング関連のイベントでは、2人乗りのパッセンジャーフライトを含めて体験してもらうこともできます。

エアーショーって5万人以上集めたり、規模がすごく大きいんですよ。そういうところで飛行機が飛んでいるのを見てもらって、飛行機に興味をもってもらうっていうのは、自分にとってかなり大きな仕事のひとつだと思っています。