G-SHOCKが手首で計る心拍計を初搭載!! 5センサー+GPS仕様の「GBD-H1000」開発陣にその魅力を聞いた

より広いユーザーを想定したスポーツ向けラインとして発表された「GBD-H1000」。極地特化型の「GPR-B1000(レンジマン)」で培ったGPSやハイブリッド充電の技術をベースにして機能と性能を向上させ、さらに小型化も果たした本作は、G-SHOCK初の5センサー+GPSを搭載する。その進化の詳細を開発陣の5名に語ってもらった。

 

G-SHOCKのスポーツライン「G-SQUAD」がGPSと光学式心拍計搭載で大進化

左から、先日発表されたステップトラッカーとBluetoothを搭載するGBD-100/2万2000円。GPSとハイブリッド充電を搭載して2018年に発売されたGPR-B1000(レンジマン)。そして、こちらも発表されたばかりのGBD-H1000/5万5000円(5月下旬発売予定)。各サイズと重量は、縦58.2×横49.3mm(厚さ17mm)、重量69g。縦60.3×横57.7mm(厚さ20.2mm)、重量 142 g。縦63×横55mm(厚さ20.4mm)、重量101g。並べてみると大きさの違いがよくわかる

 

――新しいG-SHOCK(GBD-H1000)は、スマートウオッチと呼んでもよいのでしょうか?

牛山さん:「“G-SHOCKらしさ”=普通に腕時計として使えること」を前提に考えたとき、ソーラー駆動は外せませんでした。ただ、ソーラー駆動だけではGPSや心拍計を動作させることはできません。そこで太陽発電とUSB充電を併用する、ハイブリッド式のソーラーアシスト充電という発想にたどり着きました。時刻表示や歩数計測、Bluetoothによる通知などは太陽発電で駆動し、GPSや心拍計などのトレーニング機能で使われる電力はUSB充電で補うシステムです。

プロジェクトの中心メンバーである牛山さん

――G-SHOCKにGPSと心拍計を搭載し、ソーラーアシスト充電で駆動することを実現させたわけですが、繊細な技術の集合体であるモジュールを20気圧防水+耐衝撃性のG-SHOCKとして成立させるのは大変なことだったと想像できます。実現までの道のりは長かったのでしょうか?

全員:長い。長かったよね(笑)

牛山さん:技術的なベースとなったレンジマンの時には、GPS機能は位置情報に利用して“サバイバル”というコンセプトを持たせました。今回はGPSを移動する距離、速度、ペースなどのために振り分けています。さらに心拍計を追加したことで、コンセプトが“トレーニング”となったのです。

吉井さん:“トレーニング”での使用を想定した際、レンジマンからの小型化は必須の進化項目でした。さらに、ただ小型化をするのではなく、心拍計も加えるところからのスタートだったので困難も多かった。技術チームの努力の賜物ですね。例えば、20気圧防水を保ちつつ光学式センサー(心拍計)用の窓や充電用の接続端子を裏蓋に搭載するために、何度も構造を練り直すなどして、やっと完成にたどり着いたという感覚です。

 

デザイナーと設計チーム。膝を突き合わせてのせめぎ合いからニューモデルは誕生した

――G-SHOCKのスペックを保ちながら、新たにセンサーを追加するなど、いかにも制約が多そうです。外装デザインもご苦労が多かったのでは?

時計として最も重要な見た目、すなわちデザインを描いた山本さん

山本さん:まずサイズを小さくするという問題に対し、腕への装着性などを加味しながら良き落としどころを見つけていきました。外装設計の土居と膝を突き合わせて進めた結果、バランスの取れたデザインが生まれました。

商品企画からのリクエストがスポーツだったことも大きかった。スポーティかつ新しいG-SHOCKに相応しいモチーフとして思い浮かんだのが、トレイルランニング用のシューズ。タフさとスポーティの要素を兼ね備えていますよね。その“ゴツゴツしていても街履きできるシューズ”をヒントとしたのです。

ほかにもいろいろと変化はあります。例えばバンド。やわらかさと強度のある素材を使い、しなやかでフィット感も高いものに仕上げました。また、バンドの穴のピッチを5mmにすることで、誰の腕にも装着しやすいように工夫しています。これは光学式心拍計の計測性能を高めるうえでも重要でした。

――では設計チームのご意見も聞かせてください

土居さん:そうですね、今回のモデルは下側のベゼル部分がかなり薄い設計になっています。この形状を製作するにあたって、山本も話した通り、本当に膝を突き合わせる距離で何度も何度も議論しました。G-SHOCKは頑丈なケースの周りを、弾力性のある樹脂ウレタンで覆う構造にすることで耐衝撃性を実現させています。しかし今回のように、薄くて小さいベゼルをウレタンで構成すると簡単に剥がれてしまいます。そこで、ガラス繊維を含んだファインレジンを使った構造にすることで、本体の下半分をスリムにすることが可能となり、腕にフィットしやすいフォルムが出来上がったのです。

山本さんのデザインをもとに、設計を担当した土居さん

山本さん:ほとんどのG-SHOCKはケースをウレタンで覆う構造のため、裏蓋の方に向かって広がっているデザインになっています。これだとどうしても大きなサイズになってしまう。そこで新作はモジュールを緩衝ボディで挟み、サンドイッチのような設計にしました。この上下ツーピース構造とすることで装着感も優れたものとなり、カラーもツートーンとなってG-SHOCKらしいスポーティな外観を獲得するに至ったのです。

牛山さん:サイズの大きいG-SHOCKの場合、着ける方によっては手首を外側に曲げたときに手の甲にあたってしまうことがあります。新作はその問題を多くで解消するフォルムとなっており、着け心地の向上にもつながっています。

山本さん:そのほか、スタンダードなG-SHOCKはメインボタンを3時側に備えていますが、あえて9時側にレイアウトすることで親指でしっかりと押せるようにしました。

新作GBD-H1000の構成パーツ。左下パーツの両サイドにあるのが、新たに開発された「曲面形状バックカバー」

 

――(分解されたケースを見ながら)いままでのG-SHOCKでは見たことがないパーツが、下側のベゼルですね

土居さん:新たなパーツで「曲面形状バックカバー」と名前がついたようです(笑)。この形にたどり着くまでは本当に試行錯誤の連続でした。

山本さん:新パーツをどう固定するかが、非常に悩みどころです。シンプルな構造の方が強度面に優れるため、むやみにネジも増やしたくない。けれど、このバックカバーだけはどうしてもネジ留めしか考えられず……。

土居さん:デザインや設計を行う3D CADのデータを山本と共有しながら、激しく議論の空中戦を繰り広げていた状態で。最終的には私がCAD上にネジを一本置いて、「どこに打つの?」みたいな(笑)

山本さん:絵や口頭では伝えづらいんですよ(笑)。だから、「ココに!」みたいなやり取りをしていましたね。ベゼルとバックカバーを固定するネジのスペースが本当になくて。それを確保するために考えられない角度から打ち、またそれをカバーするためにケースデザインを改める。デザイナーと設計の痺れるような、そんなせめぎ合いが続きました(笑)

――その甲斐あって多機能ながら特大のレンジマンから、かなりコンパクトになりましたね

牛山さん:太陽光パネルの発電性能がアップしたことや、風防ガラスとパネルを貼り合わせた技術も初めて導入しました。これらは薄型化にも貢献していますし、パネル自体が小さくなったことで小型化への道筋も明るいものへとなりました。

レンジマンと比較すると、液晶のビューエリアはそのままですが、風防ガラスが小さくなっているのがわかります。いろいろなパーツと技術がこの2年の間に進化したことで、サイズダウンを実現できたのです。

アプリと連携してより効果的なトレーニングが可能に!! 通知にも対応

――新作では心拍計+GPSの搭載に加え、スマートフォンリンク機能も強化されたんですよね?

機能面の企画を担当した吉井さん

吉井さん:基本としてG-SHOCKの使いやすさは踏襲したいと考えました。シンプルに、9時側のボタンを押すとトレーニングモードに移行します。この状態で自動的にGPS機能が起動し、捕捉した段階でトレーニングを開始できます。GPSと心拍計の搭載によって走った距離やペース、心拍数がリアルタイムで表示されるため、レベルに合わせた運動ができるのです。

トレーニングをし終わってからは、VO2max(体重1kgあたり1分間に体内に取り込むことのできる酸素の最大摂取量)も算出可能です。トレーニングの効果があったかは時計が判断してくれますが、詳細なデータはスマホのアプリで確認できるようになっています。そのため次回のプランを立てるために役立てたり、改善点を見つけ出しやすくなっています。

東別府さん:このアプリは開発の段階で、計測した各種情報を読み取りやすく、自分の状態の変化に気づけるような工夫を凝らしました。トレーニング終了後、G-SHOCKが取得したデータはすぐにスマホへと転送され、アプリ上で表示できる仕組みになっています。こういった機能を求められる方は、効率のよいトレーニング方法を探されている方が多い。そのような、理想的なトレーニングを実現するためのG-SHOCKであり、専用アプリを目指したのです。

アプリ開発を担当した東別府さん

吉井さん:フィットネスデータの分析については、その分野で定評のあるフィンランドのファーストビート社のアルゴリズムを使用しています。その解析分野で信頼性が高く、スピード感をもって搭載したかった背景もあり、実績のある専門企業と協力関係を結ぶことにしました。トレーニングの分析結果は、アプリで履歴まで含めて確認と管理ができます。

東別府さん:トレーニング分析やフィードバックを中心に、シンプルかつG-SHOCKらしいユーザーインターフェイスのアプリに仕上げました。ホーム画面はウィジェット構成になっており、必要な情報に特化するようなカスタマイズも可能です。また、目標に合わせたトレーニングプランの自動生成もします。もちろんアプリから時計の設定変更もできます。多機能ではあるものの、あくまでもスマホに慣れていない方に使いやすいと思っていただけるようなアプリにしています。

牛山さん:従来のG-SQUADは加速度センサーで運動量を計測し、Bluetoothでスマホに転送していました。今回はこれに加えてGPSの搭載によって距離、速度、ペースを、光学式心拍計の搭載でどの程度の負荷がかかっているかを可視化します。そして専用アプリがトレーニングプランの提案まで行う。通知機能も充実させて、スマホが着信した内容(電話してきた相手の名前やメッセージ)まで表示可能になった。通常時の利便性も進化したわけです。

吉井さん:通知機能は時計本体で音やバイブの選択ができ、太陽発電で起動します。なお、トレーニングモードをフル稼働した場合、バッテリーはおよそ14時間。週に2回か3回走る私の使い方では、「充電しなきゃ」という切羽詰まった感情になることはありませんでした。

牛山さん:バッテリーはハイブリッド充電方式(太陽発電とUSB充電)を取っているわけですが、時刻表示はもちろん、Bluetoothを介する通知や振動モーターの駆動は太陽発電だけで賄うことができます。さらにその先の機能、すなわちトレーニングモードでGPSや光学式心拍計を起動させるシーンの前には、USBからの充電が必要となるわけです。極端なことをいうと、スマホとペアリングしなくてもすぐに使えますし、モードボタンを押せば心拍数も表示されます。

アプリとの連携によってトレーニングの効率は確実にアップする。この手の操作が苦手な人でも使えるようなデザイン

 

――トレーニング中に充電が切れることはありませんか?

吉井さん:普段のトレーニングではないですね。それに、充電がなくなってきたときは“LOW”の表示が出て、まずはGPSが止まります。さらにもう一段階進むと心拍計も停止しますが、加速度センサーを生かすことで可能なかぎりログを取るシステムになっています。

――G-SHOCKが電池残量を判断して、段階的に機能を止めていくわけですね?

吉井さん:ユーザーがトレーニング後にがっかりしないよう、できる限り記録を残すという手立てです。また電池の残量はほぼ全ての画面で表示されているため、バッテリーが切れるタイミングも判断しやすいと思います。

――これだけ機能が詰まっていますが、定価はどれぐらいに?

牛山さん:前回のレンジマンは10万円でした。しかし、今回は5万円に設定しています。

――おぉ!?

牛山さん:機能は増えているのに半額という。開発部門のコストダウンや営業部門の流通調整といった、様々な努力の積み重ねによる成果です。レンジマンにはセラミックのケースバックとサファイアガラスといった高級素材を採用していますが、その2つを省いたとしても十二分なスペックを誇っています。

東別府さん:アプリもまだまだ進化させる予定で、アップデートによる機能追加も可能です。いまよりもさらに便利なG-SHOCKとなるでしょう。

――トレーニング時はもちろん、日常使用にも活躍してくれるモデルですね

東別府さん:マラソン大会に行ったとき、G-SHOCKユーザーが非常に多いことに気づきました。だからこそもっと使い勝手の良いものを作らねばと、自分でも欲しいと感じましたね(笑)

吉井さん:“G-SHOCKを着けて走りたいけど、相応しいモデルがなかった”。という方はもちろん、トレーニングとは関係がなく、ソーラーで動く歩数計や通知機能がついた時計が欲しかった方にも響いてくれればと思っています。

牛山さん:実は同時期発売で、G-SQUADからもうひとつ「GBD-100」というモデルが登場します。これはGPSや心拍計、トリプルセンサーが非搭載ですが、歩数を測るステップトラッカーつきでBluetoothによってスマホと繋がる普及価格版です。こちらは2万2000円(税込)となります。GBD-H1000には劣りますが、トレーニングデータを連携アプリに記録したりする機能は同じです。

東別府さん:GPSと心拍計がないものの、GBD-H1000と同様にトレーニングをサポートするG-SHOCKとして期待していただきたいと思います。そのためにアプリの設計にも力を入れました。

吉井さん:GBD-100は連携させたスマホのGPSを使い、ユーザーの走るスピードを加味して距離の補正を行います。事前登録した身長から割り出した歩幅をデフォルトとし、キャリブレーションする行動を起こすことで精度も高まります。ちなみにGBD-H1000もGPSが使えない長いトンネルなどでは、加速度センサーが距離を測定していますが、過去にGPSで測った数値をベースにキャリブレーションし、算出しているのです。

東別府さん:実際にGBD-100とGBD-H1000を同時に着けてランニングしましたが、計測結果はほぼ同じでした。アプリのトレーニングプランも立てられており、普及価格モデルとはいえ利便性が高い。こちらもちょっと作り込みすぎたかもしれません(笑)

G-SHOCK「G-SQUAD GBD-H1000」各 5万5000円/クオーツ(電波ソーラー・Bluetooth)。樹脂ケース+ステンレススチールベゼル。ソフトウレタンバンド。縦63×横55mm(厚さ20.4mm)。重量101g。20気圧防水。5月下旬発売予定

 

G-SHOCKの特徴ともいえる大きなサイズは、運動には不向きという考えを持っていた。しかし今回、新G-SQUADの開発陣の話しを聞き、実機を腕に乗せてみたところ、以前から抱いていた懸念は払拭された。たしかに、他のスポーツウオッチと比べると大きさでいえば分が悪い。しかしながらGBD-H1000は、装着性を追求した外装、読み取りやすい液晶、操作性の良いボタンなど、このサイズだからこその実用性も特徴といえる。そしてさらにいえば、唯一無二のタフネスという価値も備えている。トレーニング向けではあるが、日常で役立つ新世代のG-SHOCK。ファッション性も高いことから、街中で着けている人を見かけることも増えるに違いない。

 

問:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.03-5334-4869
https://g-shock.jp/

 

聞き手/WATCHNAVI編集部 撮影・谷口岳史