MY TIME〜私の時間術〜 Vol.15 いちばん好きな時間は、社員と食事をしたりお酒を飲んでいる時間――犬養新嗣(株式会社 帆風 代表取締役社長)
時間は誰にでも平等。だからこそ1日24時間、その限られた時間をどう使うかが「人生を楽しむ」ための鍵となります。様々な業界で活躍する人物から「時間術」を聞く本連載。第15回は帆風(バンフー)社長の犬養新嗣さんにお話を聞きました。
撮影/高橋敬大 文/赤坂匡介
1978年生まれの犬養さんが現職に就任したのは、2013年のこと。わずか34歳での社長就任は、前社長からの指名によるものでした。
そんな犬養さんに、日々どんな時間の使い方をしているのか聞いてみると、そこには「18時以降はメールを返信しない」という犬養流の時間術がありました。
いえいえ、そんなことはないんです(苦笑)。むしろ最低の営業マンでした。私はひとりで何かをすることは向いてないんです。当時からマネジメントの方が得意でした。
私が代表を引き継がせてもらったいちばんの理由は、私が社内の誰よりも会社を愛し、社員のことを好きだったからだと思います。
また手前味噌ですが、2013年の就任以降、現在まで増収増益を継続できていますので、前社長の期待に少しは応えられているのではないかと感じています。
――そんな犬養さんの日課は何ですか?
前日にスケジュールを確認することです。秘書もいるのですが、私は基本的に自分でスケジュール管理をしているんです。
飛行機のチケットやホテルの予約も自分でやります。他社のサービスに直接触れる機会は、自社サービスに活かせる“気付き”に出会えるチャンスでもありますから、それを逃さないためにも基本は自分で何でもするようにしています。
――仕事をする上で決めているルールはありますか?
私は平日の9時から18時までしか基本的にメールは返信しません。なぜなら、もし私が18時以降にメールを返信してしまえば、社員はそれに対応しなくてはいけなくなるからです。
できれば私は、社員にずっと働いていると思われたくないんです。社長になったら責任が増え、働く時間が長くなると思われるより、社長になったり役職がついても、仕事もプライベートも充実させられると思われた方が夢があるじゃないですか。
――いちばん好きな時間は何をしているときですか?
社員と食事をしたりお酒を飲んでいる時間ですね。彼らが楽しそうにしている姿を見ると、自分自身のモチベーションにもなりますし、そうした機会は大切にしています。
そもそも弊社は昔から、社員同士の仲が非常によく、土日も一緒にいるほどなんです。それが弊社の最大の強みでもあると、私は思っています。
会社はフィールドであって、戦っているのはあくまで個人ですから、「個々が魅力的な企業であること」が重要だと私は考えています。そのためにも、社員が楽しく働ける環境作りをすることは常に意識しています。
記念に購入した、オーデマ ピゲとハリー・ウィンストンの腕時計
――今日お持ちいただいた1本は、オーデマ ピゲの新作ですね。
はい。今春に決算があり、業績がよかったので、ずっと欲しかったオーデマ ピゲの時計を買いました。
オーデマ ピゲは、世界三大腕時計にも数えられる由緒あるメーカーであり、その技術の高さからさまざまな会社に部品の提供もしています。巨大なグループ企業に所属することなく、業界を走り続けている姿勢も共感できますし、デザインも上品で、長く愛用できそうなところが気に入っています。
――もう1本のハリー・ウィンストンの時計はいつ購入したものですか?
これは社長に就任したときに、記念に購入したものです。ブルーの文字盤にしたのは、弊社のコーポレートカラーがブルーだからです。時計は好きで何本か持っているのですが、その中でも想い入れのある1本ですね。
――時計を買う際のこだわりは?
時計は何本か持っているんですが、現金で買うようにしています。私は社員の結婚式に呼ばれてスピーチをする機会も多いのですが、そうすると、車代を丁寧にくれたりするんです。
私はそれを封筒のまま、金庫に入れておくんです。そのお金は、時計を買うタイミングで使うことにしています。そうすると、そこに想いが入るじゃないですか。身に着けるものですし、自然と大切にしたいと思えます。
――今後の目標は何ですか?
私の夢は、社員全員が「この会社にいれて幸せだ」と心から思えるようにすることです。それが私にとって究極の夢であり、もしそれが実現できたなら、いつ辞めてもいいとさえ思っています。
そのためにもまずは、どんなことをしたら社員が喜んでくれるかを考え行動していきます。
犬養新嗣(いぬかい・しんじ)
株式会社 帆風(バンフー)代表取締役社長
1978年、神奈川県生まれ。これまでの印刷業という業態にサービス業の精神を導入し、ホスピタリティを軸にサービスの向上や社内活動を活性化。2013年3月代表取締役に就任。生産現場の効率化や海外の仕組み・設備の導入、新規ECサイトの開始など、お客様に最高のサービスを提供するために枠にとらわれない新しいチャレンジを続けている。