MY TIME〜私の時間術〜 Vol.19 自分で定義した“幸せ”を、日々実現する人生を――正能茉優(ハピキラFACTORY代表取締役社長、ソニー株式会社 商品企画担当)

時間は誰にでも平等。だからこそ1日24時間、その限られた時間をどう使うかが「人生を楽しむ」ための鍵となります。様々な業界で活躍する人物から「時間術」を聞く本連載。第19回はソニーの新商品を企画しながら、自身が代表取締役を務めるハピキラFACTORYの経営も行う、正能茉優さんにお話を聞きました。

撮影/高橋敬大 文/赤坂匡介

慶應義塾大学在学中の2012年、地方にある魅力的な商材をかわいらしくプロデュースして発信・販売する「ハピキラFACTORY」を起業した正能茉優さん。現在は、同社の経営をしながら、ソニーの正社員として商品企画も担当しています。

ハピキラの事業では、2017年3月、日本郵便とコラボした商品群が全国約2万4000局の郵便局で発売。さらに北海道天塩町の政策アドバイザーも務めているという正能さんに、日々どんな時間の使い方をしているのか聞いてみると、そこには「自分が“幸せ”と感じるバランスで、人生を配分する」という正能流の時間術がありました。

――ソニーの会社員と経営者、2足のわらじを履く正能さん。どんな風に時間を使っているのですか?

私は2000年代以降に成人した「ミレニアル世代」と呼ばれる世代なのですが、バブル世代の人たちとは少し違った「時間」への価値観を持っているかもしれません。例えば、「働く」ということひとつ取っても、「24時間戦えますか?」という働き方をしたいなとは、あまり思わないんです。

そこには、東日本大震災やリーマンショックを通して感じた“いつか”への不安が大きく作用しているのではないでしょうか。「いつか仕事が落ち着いたら家族と過ごそう、趣味に没頭しよう」。こんな考え方は「そのいつかが来なかったらどうしよう」と不安になるので、できません。だから、仕事もプライベートも含めた“いま”を大切にしたいという思いが強くあります。

私の場合、人生で大切にしたいことがたくさんあるので、「人生配分表」という表を作って、自分の人生を何にどれくらい使うかを気にしています。仕事・友人・家族・恋愛……、それぞれ大切にしたいことの割合を決めて、調整するんです。

いまはハピキラ30%、ソニー30%、家族8%、友人10%、恋愛7%、その他(睡眠、食事など)15%という感じです。

――想像よりも仕事のウェイトが多い印象を受けました。

そうですね。私は仕事も結構好きなので、その分時間も多く割いています。ハピキラもソニーも、「好き」を仕事にしているので、気分が乗っている時は一生やっててもいいって思うくらい(笑)。ただ、それと同じくらい、家族や友人との時間も大事なんです。だからこそ、バランスを決めておきたい。

こんなことを言うと、「そこは仕事優先でしょ?」と驚かれることもあります。そういう考え方も確かにあるなとは思いますが、いまの私はそうは思わないかな。でも、どちらの考え方もあっていいと思います。

インド人はカレーを手で食べるじゃないですか。でも、私たちは否定せず、それを受け入れますよね。なぜなら「文化が違う」とわかっているからです。同様に、世代が違い、生きてきた環境が違えば、文化も価値観も違うから、理想とする働き方もそれぞれに違って、当たり前かなと。だから、人生の使い方や優先順位にも、いろんな考え方があって、いいんじゃないかと思います。

――正能さん自身、幸せについて考え始めたのはいつですか?

大学の在学中に、学校のプログラムの一環で、長野県小布施(おぶせ)町を訪れたんです。東京に比べれば不便な場所ですし、歩いていける距離にコンビニもカフェもない。それなのに、小布施の人たちは、自分たちの住んでいる「小布施」という地を誇りに思っていました。生まれも育ちも東京の私は、東京を誇りに思ったことが一度もなかったので、小布施の人たちの姿を純粋にうらやましく思えました。彼らの姿は、東京で物理的に豊かな暮らしをしている自分以上に、幸せそうだったんです。このとき、それまで自分が漠然と求めていた「幸せの定義」がひっくり返ったような気がしました。

いい大学を出て、いい会社に勤めて、いい家に住んで、いい車に乗る。そういった物理的なところに、本当の幸せが詰まっているわけではないとハッとしたというか。こうして自分が感じた地方の魅力や豊かさを、多くの人に伝えたいと思い始めたのが、ハピキラFACTORYという会社でした。

「誰か」の温度とかニオイがあるものが好き

――今日お持ちいただいたのは、ソニーのスマートウォッチシリーズ「wena wrist」とシチズンの腕時計ですね。

はい。どちらも思い入れがある大切にしている1本です。

ソニーには、SAP(Seed Acceleration Program;新規事業創出プログラム)という制度があり、年齢やキャリアに関係なく商品アイディアのビジネス化にチャレンジする場があります。そこで生まれたのが、このスマートウォッチ「wena wrist」です。友人たちが開発メンバーなので、友人が一生懸命作ったプロダクトを身に着けられることが、とてもうれしい。デザイン性が高いのに電子マネー機能などが内蔵されていて、自然なのに便利なところも気に入っています。

シチズンの時計は、中学生のとき、サンタさんという名の両親におねだりしたものです。私には年の離れた妹がいるので、サンタさんがプレゼントをくれる期間が人より長く、いろんなものをおねだりしました(笑)。この時計は、もう10年以上使っています。

どちらもそうですが、私は「誰か」の存在が見えるものが好きなんですよね。その人の思いも丸ごと、大切にしたくなります。

↑左・友人が開発したソニーのスマートウォッチシリーズ「wena wrist」。右・中学時代から愛用しているシチズンの腕時計

――今後の目標は何ですか?

身の丈を広げること。実は私、最近まで「身の丈」って上下概念だと思ってたんです。より上のステージに行ってこそ、幸せに近づけると。でも最近、「身の丈って、実は横概念なんじゃないか」と思い始めました。私の場合、自分の会社だけでなく、ソニーでも働くことで、自分のやってみたいことや楽しいと思えることがますます広がって、「人生の選択肢」が増えて、「幸せ」の定義が広がってきた実感があります。

こうして「人生の選択肢」を増やしながら、自分にとっての“幸せ”を追いかけているのが、いまはすごく楽しいです。だからこそ、自分の幸せをきちんと定義して、これからも試行錯誤しながら、日々それを実現し続けていきたいです。

正能茉優(しょうのう・まゆ)

株式会社ハピキラFACTORY代表取締役社長、ソニー株式会社 商品企画担当

1991年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中の2012年、地方にある魅力的な商材をかわいくプロデュースし発信する「ハピキラFACTORY」を起業。大学卒業後、広告代理店に一度は就職。その後転職し、現在はソニーで商品企画を担当しながら、ハピキラの経営を行う。自社事業として、2017年3月より、日本郵便とコラボした商品群が全国約2万4000局の郵便局で発売。北海道天塩町「政策アドバイザー」、経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」の委員にも。