「アノーニモ」ってどんなブランド? 気になったので直接CEOにインタビューしてきました

約20年前にイタリア・フィレンツェで生まれ、現在はマッターホルン近くを拠点にスイスメイドの腕時計を手がけている時計ブランドがあります。その名もアノーニモ。時計好きならケース形状を見て思うところがあるでしょう。なぜ、このような形状を採用しているのか。気になったので、来日したCEOのジュリアン・ヘンリーさんに直接聞いてみました。

 

アノーニモの方針を決定付けた人物「ディノ・ゼイ」

––アノーニモの時計を見た率直な感想として、非常にイタリア生まれの別のブランドと似ているという印象を受けます。この形状は、どのような経緯で採用されたのですか?

私たちは、1997年にフィレンツェで創業したブランドです。創業者はフィデリコ・マサチェシですが、彼の知人であり当初からブランドに参加していたディノ・ゼイのキャリアが、非常に重要となっています。

1931年にイタリアのヴィテルボで生まれ、38歳のときには海軍特別攻撃隊とダイバー本部の研究の責任者となりました。イタリア海軍やダイバーたちと密接な関係を持っていたディノ・ゼイは、やがてパネライの経営にかかわるようになり、その関係はリシュモンがパネライを買収する1997年まで続いていたのです。

パネライを去ったあとの彼のもとには、自身のブランドを設立するオファーが数多くあったなかで、彼が選んだのはアノーニモを立ち上げることでした。

クッションケースをベースにした製品展開は、すべてディノ・ゼイのキャリアからはじまったといえるでしょう。

↑1931年にイタリアのヴィテルボ生まれたディノ・ゼイは、1972年より「Guido Panerai e Figlio」のマネジメント職に就任。以来、1972年まで同社で要職を務めあげた

––アノーニモは2013年よりスイス・ジュネーブへ本社を移し、人員に関しても新体制に移行していますよね? これから先、具体的なビジョンはあるのでしょうか?

以前は、全モデル限定製造を大きな特徴としてきました。流通網も決して広くなく、知る人ぞ知るブランドであろうとしていたんです。それこそ、あまり知られていませんが、ここ数年で腕時計によく使われるようになったブロンズを最初に使ったのは、アノーニモなんですよ。

おかげで他と違うものを求める人に好んでもらえるブランドにはなりましたが、ブランドが続くと今度は需要と供給のミスマッチが生じてきました。固定の顧客が増える一方、新たに欲しいと思った人にまで、商品が届かなくなってしまったのです。

そこで、2013年にブランドの方向転換を行い、よりグローバルな視点で販売網を考え、生産量も増やすことにしました。とはいえ、私たちはビッグブランドではありませんし、1本1本を丁寧に作ることを心がけています。いまでも年産2000本もありませんし、希少な時計ブランドという立場はしばらく変わらないでしょうね(笑)。

––これからブランドの規模を拡大するにあたって、軸となる商品を教えてください。

アノーニモには2つのフラッグシップコレクションがあります。ひとつはミリターレ、もうひとつがナウティーロです。

ミリターレは、12時側にリューズを持つモデルで、ブランドの起源ともいうべきコレクション。クラシックやヴィンテージといったシリーズがありますが、基本的なデザインは共通しています。

↑アノーニモ「ミリターレ ヴィンテージ クロノグラフ」50万7600円。自動巻き。ステンレススチールケース。直径43.4mm。120m防水
↑アノーニモ「ミリターレ ヴィンテージ クロノグラフ」50万7600円。自動巻き。ステンレススチールケース。直径43.4mm。120m防水

一方のナウティーロは、4時側にリューズを備えたダイバーズスタイルのコレクションとなっています。よりスポーティな雰囲気を強めたもので、インデックスはバーとドットのシンプルなものとなっています。

↑アノーニモ「ナウティーロ セーリング エディション」26万4600円。自動巻き。ステンレススチールケース+チタニウムケースバック。直径44.4mm。200m防水。世界限定300本
↑アノーニモ「ナウティーロ セーリング エディション」26万4600円。自動巻き。ステンレススチールケース+チタニウムケースバック。直径44.4mm。200m防水。世界限定300本

どちらのコレクションも12、04、08のインデックスに特徴を持たせて、ANONIMOのAを連想させるダイアルデザインに仕上げています。ストラップにイタリア製のハンドメイドのものを使うのは、ブランドとしてのこだわり。コストはかかりますが、品質と価格のバランスを見失わないことが、私たちにとっては非常に重要なのです。

日本の時計愛好家は、品質と価格のバランスに厳しいと聞いています。ぜひ、その厳しい目で、アノーニモの製品を吟味し、そして気に入っていただけたら嬉しいですね。

↑10年以上時計業界でスキルを磨いたのち、2015年9月にアノーニモ入社。ブランドマーケティング&コミュニケーションディレクターを経て、2017年よりCEOに就任した