五輪ゴールドメダリスト・四十住さくら選手(スケートボード 女子パーク)と地元・和歌山の時計店【oomiya】の絆

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大によって、1年延期された2020年東京五輪が閉幕を迎えた。連日のように日本人選手が活躍し、国中に感動がもたらされた。とくに今大会は、選手らのコメントに共通点が見受けられる。それは今日までサポートしてくれた人々への感謝だ。本記事では、時計雑誌『ウオッチナビ』が日頃から関係を築いている正規時計販売店【oomiya】と、スケートボード 女子パークのゴールドメダリスト・四十住さくら選手の絆について紹介する。

右・四十住さくら選手 左・oomiya代表取締役の出水孝典氏

「淀みのない真っ直ぐな子。それが彼女の第一印象でした」

四十住選手は、和歌山県岩出市出身。小学校6年生のときに年上の兄の影響からスケートボードを始め、すぐにのめり込んでいった。当初は反対していた家族の理解を得るようになったものの、住まいの近くには本格的に練習できる環境がなく、往復3時間以上をかけて両親が自動車で神戸や三重などの練習場に送迎する日々を過ごした。楽しみながらも血が滲むような努力を重ね、みるみると実力をつけていった四十住選手は、日本国内で開催される大会に参加するごとに上位の常連となり、国際大会へも参戦するようになっていった。

一方、和歌山を拠点とするoomiyaは、心斎橋(大阪)、京都、鹿児島、仙台にも出店を果たすなど、西日本を代表する正規時計販売店。和歌山県民の多くが知る存在で、地域密着をテーマに掲げているのも特徴である。そんなoomiyaが地元に貢献できるような取り組みをスタートする運びになり、代表取締役・出水孝典氏が提案した“地元・和歌山で頑張っている若者をサポートしよう”というアイデアが採用されることになった。

支援者を募っていた四十住選手と、夢に向かって進む若者を探していたoomiyaの出会いは、彼女が通っていた高校を介して実現した。出水氏は初めて面会した4年前のことを鮮明に覚えている。

「彼女が中学校3年生のときに初めて会いました。アザや傷が気になる年頃ですが、彼女の足や腕には練習の過酷さがわかる勲章がいくつもありました。それにも驚きましたが、何よりも夢を追う真っ直ぐさに感心しましたね。すでに世界のトップを狙っていることを公言しており、その溢れる想いに心を打たれました」(出水氏)

この面会を通し、時計界でも温厚篤実な人柄で知られる出水氏は四十住選手の熱心な姿勢と家族の献身さに惚れ込み、彼女へのバックアップを決断。oomiyaのサポートを得て挑んだ最初のスケートボード世界選手権で見事優勝を果たした。

「大会の前後には、必ずといっていいほど報告に来てくれます。来なくていいよ、と伝えているのですが、真面目な彼女は練習の合間を縫って訪問してくれるのです(笑) そんな姿勢は苦労をかけている両親に対しても同じで、感謝の気持ちでいっぱいなのが伝わってきます」

今回の五輪直前にも、四十住選手はoomiyaを訪問したそうだ。

「とにかく思いっきり楽しんで来て!! そう伝えました。選ばれた人だけが立てる場所で、自分らしいスタイルを貫いて、と」

出水氏が出会った頃はまだまだ幼く、けれども芯の強さを持った少女は4年を経て、本当に世界の頂点へと上り詰めた。

「次に会ったら、最高に楽しかったか? そう聞きたいですね。和歌山出身者としてゴールドメダリストに輝いてくれたことをお祝いしたい」

有言実行という最高のかたちで家族や支援者たちの期待に応えた四十住選手。地元・和歌山では彼女の凱旋を暖かく迎える人々が待っている。

 

Text/WATCHNAVI編集部