MY TIME〜私の時間術〜 Vol.22 いまは、フリーランスとしての働き方を追求してみたい――及川卓也(技術コンサルタント/組織づくりアドバイザー)
時間は誰にでも平等。だからこそ1日24時間、その限られた時間をどう使うかが「人生を楽しむ」ための鍵となります。様々な業界で活躍する人物から「時間術」を聞く本連載。第21回はマイクロソフトでWindows、グーグルではChromeの開発に携わり、現在は企業への技術面を中心としたコンサルタント、組織づくりアドバイザーとして活躍する及川卓也さんにお話を聞きました。
撮影/高橋敬大 文/赤坂匡介
“及川卓也”さんの名前を、エンジニア界で知らない人はいません。マイクロソフトではWindows、グーグル社では現在多くの人が利用しているブラウザChromeの開発に携わり、当時はNHKのドキュメンタリー番組の密着を受けるなど、大きな注目を集めました。
その後、スタートアップを経て独立。現在はIT関連の技術コンサルタント、エンジニアの組織づくりアドバイザーとして、フリーランスで活動しています。そんな及川さんに、日々どんな時間の使い方をしているのか聞いてみると、そこには「能動的に情報をインプットする」という及川流の時間術がありました。
――大手企業からスタートアップを経て独立。変わったことはありますか?
「技術は人のため」という信条は変わりません。正しい選択をすれば、技術は人の生活を豊かにしてくれると、いまも昔も信じています。
しかしインプットへの意識は変わりました。グーグル時代は、グーグルという大きな社内コミュニティの中にいましたから、社内にいるだけでも、多様なインプットを得ることができました。ですがいまは、自分から能動的に情報を取りに行かなければ、新しい情報を得ることはできません。
最近は、Kindleでビジネス系や技術系の電子書籍や雑誌をよく読んでいます。そして以前より、積極的に人に会うようになりました。人に会うことがインプットにつながることは多いので、「人に会おう」という意識は常に持つようにしています。
――独立したことで、自分の時間は増えましたか?
ありがたいことに、現在多くのお客様がいますから、自分の時間は決して多くありません。ですが、それを決めたのは自分ですし、広い意味での“自由”を感じながら、日々楽しく仕事できています。
――そんな及川さんにとって、いちばん好きな時間はどんな時間ですか?
仕事が好きなので、お客様と話している時間は好きですね。企業ごとに受ける相談というのは、どこか似ているようで、やはり異なります。その課題をどうすれば解決できるかを考えているのも、好きな時間のひとつです。
それはきっと、エンジニア時代と同様に、「課題解決」に喜びを感じているんでしょうね。企業に属していたときは自社のみ、それが現在は多くの企業と関われている。そこに喜びと面白さを感じています。
――フリーランスだと打ち合わせも多いと思いますが、スケジュール管理はどうされていますか?
Googleカレンダーを使って、移動時間、乗る電車まで正確に入力して管理しています。予定の間に生まれる空き時間は、カフェに入って作業していることが多いです。
気が付けば、すっかりスターバックスのヘビーユーザーになりました(笑)。
――フリーランスで困ることはありますか?
あります。ですがいまは、「あえて法人化せず」活動してみようと思っているんです。フリーランスでも働きやすい環境を整えようという社会の動きもありますし、この機会に「フリーランスで働く」体験をしてみようと考えています。とはいえ、法人化しないとできない事業に出会った際には、法人化も検討しなければならないとは思いますが。
フリーランスになると、これまで気付かなかった“違和感”に出会います。たとえば、イベントの参加者登録をしようとすると、「会社名」「部署」の記入欄が必須項目になっている場合があります。これは社会に出ているプロフェッショナルは、どこかの組織に所属しているという前提で社会ができあがっているからですよね。
他にも、大企業に打ち合わせで訪れた際、受付でシートの記入を求められ、会社名を空欄にして、名前だけ記入したことがあったんです。そうしたら、受付の方に「(採用)面接の方ですか?」と聞かれたこともありました(笑)。
まだまだフリーランスで働くことが一般化していないことを感じることも多いですが、私自身がフリーランスとして活動することで、少しでも「フリーランスという働き方」を知ってもらう機会になればと思っています。
ハミルトンとブライトリングの腕時計を愛用
――今日お持ちいただいたのは、ハミルトンとブライトリングの腕時計ですね。
はい。ハミルトンの腕時計は、10年ほど前に時計店で偶然見つけて、衝動買いしたものです。実は世界限定1000本の50周年モデルだと知ったのはあとからで、見つけたときは特徴的なデザインと、ゴールドなのに上品な点に一目惚れして購入しました。
ブライトリングの時計は、15年くらい前に銀座の天賞堂さんで購入したものです。機械式時計がひとつ欲しいなと思っていたときに、ブライトリングのことを知りました。
ブライトリングは航空業界(飛行機)ともつながりが深く、さらに漫画家の松本零士さんも愛用されていると知り、「これだ!」と思ったんです。見た目のメカっぽい感じも、理系の私の心をくすぐりました(笑)。
当時はマイクロソフト社に勤めていた時代で、自分へのご褒美として、この時計を買いました。気に入っているのは、使いやすく、何年経っても色褪せないシンプルなデザインですね。
――及川さんの夢は何ですか?
外資系の企業に長くいましたが、「いまは日本の企業を応援したい」という気持ちが強くあります。
そして現代は「人生100年時代」と言われる時代ですから、80歳を過ぎても仕事をしていたいと思っています。やっぱり私は、仕事が好きなんです(笑)。
大手企業にいる頃は、定年後のことを考えることもありました。「退社後の私に何があるのだろう?」と。しかし独立したことで定年がなくなり、自然と80歳まで働き続けたいと考えるようになりました。
今後、さまざまな事情によって、どうなるかはわかりませんが、いまは可能な限り“フリーランスで働くことの可能性”を追求し続けたいですね。