10月20日から始まるG-SHOCK初のカスタムオーダーサービス「MY G-SHOCK」の全貌をカシオ本社で開発陣に聞いてきた

10月20日14時から、全G-SHOCKファン待望の新サービス「MY G-SHOCK」がスタートする。その名の通り、自分だけのG-SHOCKが作れるというもので、約40年の歴史のなかで初めての試みとなる。だが、腕時計のカスタムオーダーという点では正直なところ、かなり後発といえる。このタイミングでサービス開始に踏み切った狙いをカシオ本社で開発陣に聞いた。

TEXT/Daisuke Suito(WN) Photo/Kensuke Suzuki(ONE-PUBLISHING)

オールカシオで挑んだデジタル領域でのG-SHOCK体験

–カシオはここ数年、CMF(カラー、マテリアル、フィニッシュ)展開に力を入れてきました。今回のMY G-SHOCKも、その一環といえるのでしょうか。

今回取材に応じていただいたデジタル統轄部 デジタル共創推進部の丸 憲太郎さん(左)と阿部 亙さん(右)

丸さん:今回のMY G-SHOCKの狙いは、ファンの方と一緒になってG-SHOCKの新しい楽しみ方を共創したいという思いから立ち上がりました。そのため、従来のG-SHOCKのCMF展開の開発とはまったく異なる過程を経ています。私が所属するデジタル統轄部はDX(デジタルトランスフォーメーションの略)を全社横断で推進する部門として今年の4月に立ち上がり、そこに参加した一人が阿部です。

阿部さん:MY G-SHOCKのプロジェクトはデジタル統轄部だけでどうにかなるものではなく、社内のさまざまな部署から理解と協力を得る必要がありました。それら調整を丸が行いながら課題を解決し、それを受けて私たちは皆さんがストレスなくG-SHOCKのカスタム体験ができるようなシステムを構築してきました。

丸さん:1年半がかりのプロジェクトは、最初から最後まで大変なことばかりでしたね(笑)。これまで私が全く縁のなかった資材部や山形カシオなども巻き込む必要があったのですが、コロナ禍だから当然リモート会議のみ。画面越しでは伝わりにくい部分があったり、なかなか苦労しました。

阿部さん:結果、いつものG-SHOCK開発の枠を飛び越えて、合計100人ぐらいはこのプロジェクトに関わっていると思います。

丸さん:一部の限定品を除いてG-SHOCKは量産を見越して開発を行なっているため、1個単位でパーツを作るなんてとんでもないことなんですよね。しかもそれを1万円台で出すという。大体の部署で驚きを超えて呆れられました(笑)。

手作業をベースに最大6億通りの組み合わせを実現

–9月15日に行われたオンライン発表会では、「MY G-SHOCKは一つ一つ手作業で組み立てる」という説明がありました。確かに1万円台のG-SHOCKとしては破格の高待遇ですよね。

丸さん:おっしゃる通りです。MY G-SHOCKのオペレーションは、専任の技術者がお客様のオーダーシートに基づいて手作業でパーツを組み上げていくことになります。ですので、どうしてもオーダーを受けてからお届けまでに3〜5週間はかかる。はっきり言ってリスクしかないのではないか、という懸念もありました。ただ、この手作業を行うことで、どのお客様がどの組み合わせをオーダーされたのか、シリアルナンバーで容易に管理できるようになります。そのため、たとえばMY G-SHOCKを受け取ったお客様からのお問い合わせに対しても、裏蓋に打刻されたシリアルナンバーを読み上げていただくだけで、いつ頃購入されたものかなどが把握でき、すぐお問い合わせの本題に入れるようになります。

阿部さん:生産性だけでなく、画面上でオーダーしたものが、実際に手作業で組み上げられ、お客様に届けられる、という一連の流れの中で今後どのような事象が起きるか、こればかりはサービスを始めてみないことにはわかりません。ただ、絶対につまらないものは作りたくないという認識だけは全員が共通して持っているので、必ず楽しんでいただけると信じています。

–はじめてMY G-SHOCKのオーダー画面を拝見しましたが、誰でも直感的に選べそうな仕様でつい操作したくなります。

ベースはカーボンコアガード構造になった定番DWE-5610。ベゼル・バンド・遊環は、それぞれサービス開始時の限定カラーを含め19種類以上のバリエーションを揃える。シングル遊環で、約190万通りの組み合わせから選べる。(画像はテスト環境のため、本番のサイトとは一部表示が異なる可能性あり)

丸さん:選べるパーツはベゼル、フェイス、長いバンドと短いバンド、美錠の色、遊環となっており、ベゼル、バンド、遊環はカラーバリエーションの数にもこだわりました。さらに細い3連遊環の1つずつ色が変えられる「トリプル」という選択肢を選んでいただくと、組み合わせ方はなんと約6億5800万通りにもなります。カラーバリエーションの中にはG-SHOCK初期のカラーシリーズをリバイバルした限定色もあるのですが、これは早いもの勝ちになっており予定パーツ数に達すると注文できなくなります。

阿部さん:ただ、注文できなくても、画面上ではしばらく選択できるようにしておくつもりです。MY G-SHOCKで選んだ組み合わせのデータはダウンロードできるので、オリジナルの組み合わせを色々と遊んでみてほしいですね。

丸さん:この選択画面、使っていただくとわかるのですが、ベゼル、フェイスと選んでいくと、そのパーツごとに最も「カッコいい!」と私たちが考え抜いた構図に自動的に切り替わります。立体的な表現によって、画面上でもリアルな仕上がりをイメージしていただきやすくなっています。アングルは全部で10。組み合わせた画像データのダウンロードもできます。その画像データをシェアして自分の友人やフォロワーに意見を聞いたり、実際に購入する前から楽しめます。

丸さんの組み合わせ。トリプルを選ぶときはアングルが裏側に切り替わる。写真奥にいるのは広報部の秋田さん(右)と奥田さん(左)。手前は筆者

–練りに練ったアングルが10個もあってすごいと思います。が、これって360度ぐりぐり動かせる仕様だったらすべて解決しませんか?

阿部さん:(苦笑)もちろん考えましたよ。ただ、デバイスの性能やデータ通信量などを気にせず快適に長く検討していただくには静止画に留めておく方が良い、と最終的に判断しました。デバイスの違いによる変化で気を使ったのは、動作環境、ユーザビリティ、そして色ですね。たくさんある色の一つ一つをデザイナーと協議、検討しながら、デジタルデータの方の色調を検討しました。

カスタマイズ可能なパーツはベゼル:19色、バンド:19色、美錠:2色、シングル遊環:20色、トリプル遊環:19色、フェイス:7種。このサンプルセットは社内用で基本的に見ることはできない

丸さん:選択できる色はすべて歴代G-SHOCKで使ってきたものなので、画面上で選べる色はすべて実物に合わせています。ちなみに、色のセレクトは世界中の国旗を成立させられることを目指しました。これだけの選択肢があれば、たとえば学生さんのクラブ活動のチームカラーなども網羅できると思っています。そういったニーズも考慮して、ベースモデルは大定番のDW-5600系統から選びました。DWE-5610は電池交換の必要はありますが、このロングセラーの信頼性なしにはMY G-SHOCKのようなチャレンジはできなかったでしょう。

–そんなこと言いながら、すぐにラウンド型とかアナログタイプとか、別のベースモデルが出したりしませんか?

丸さん:いまは、とにかく当初目標の月産1000本を達成していくことだけに集中しています。その反響次第によっては、ベースモデルから選んでいただける可能性は大いにあります。

阿部さん:せっかくなので編集長もMY G-SHOCKを作ってってくださいよ。もし悩んだら、私たちが提案した組み合わせもありますので、そちらをベースにカスタムしてもらっても大丈夫です。

“作る”ことに関連し、ペーパークラフトが楽しめる専用パッケージを用意。色を塗ってから組み立てれば、2本目のオーダーのイメトレにも最適!?

ということで、筆者もMy G-SHOCKのカスタマイズをさせてもらうことに。この流れを予見し、前日に2時間かけて組み合わせのシミュレーションは終えている。現在WATCHNAVIには特定のテーマカラーがなく、レアなカラーモデルの再現は同じタイミングで限定復刻が発売される。オールブラックなどは使えるけど物足りないし、そもそも既存品であるだろう。色々と悩んだ結果、いったん時計専門誌編集長という肩書きを忘れて自分の好きなものにしようと思い至り、私の人生を変えたバンド、レッチリをオマージュすることにした。かの有名なアスタリスクロゴをモチーフに白、黒、赤の3色を使うことを事前に決めつつ、中心が赤だと日の丸モチーフと間違われそう……などとパーツごとの配色に悩んだものの、イメトレの成果もあって割とスムーズに決めることができた。

水藤カスタム。名付けて「RHCP」。シカゴブルズ、エア ジョーダン 1的でもあり、昭和50年代男らしい感性となった気がする

今回は特別にその場で完全体まで組み上げてもらい、「カスタマイズ例にあるHAZARDとちょっと似てるかも」と突っ込まれつつも、丸さん、阿部さんからも良さげな評価をいただいた。

これがカスタマイズ例のひとつ「HAZARD」

上機嫌で腕に装着。そのまま挨拶して帰ろうとしたら、背中越しに広報部の秋田さんが慌てて「あっ! G-SHOCKは置いてってください!!」とのひと言。イメトレしすぎて完全にマイG-SHOCKだと思い込んでしまった。うわー、猛烈に恥ずかしい!

ということで逃げるようにカシオ本社をあとにし、10月20日14時にサービスが始まったらすぐ注文しようと誓った次第である。

<ベースとなるDWE-5610の主な仕様は以下の通り>

耐衝撃構造。防水性能:20気圧防水。[ストップウオッチ]1/100秒(00’00’’00~59’59’’99)/1秒(1:00’00’’~23:59’59”)、24時間計、スプリット付き [タイマー]セット単位:1秒、最大セット:24時間、1秒単位で計測、オートリピート [アラーム]マルチアラーム、時報 [その他の機能]フルオートカレンダー、12/24時間制表示切替、ELバックライト(残照機能付き)、報音フラッシュ機能(アラーム/時報/タイマー連動発光)。常温携帯精度/平均月差±15秒。使用電源/電池寿命:CR2016/約2年。サイズ/質量:48.9×43.8×13.7mm/約54g

問い合わせ先:カシオ計算機お客様相談室 Tel.03-5334-4869(時計専用)
MY-GSHOCKサイト:https://www.casio.com/jp/watches/mygshock/ 
※スマートフォンアプリ「CASIO WATCHES」からもアクセス可能