なんでオシアナスを四角くしちゃったの!? 新型OCW-T5000で開発陣が目指したのは新たなる定番の創出だった

11月よりスクエアケースのオシアナスOCW-T5000が発売開始となった。2004年のデビューから17年で初となる角形デザインへの試み。このタイミングで発表となった経緯と、完成に至るまでの開発秘話をカシオの企画者とデザイナーに聞いた。

オシアナスに個性と遊び心ある製品を加えたかった

オンライン取材に応じていただいた開発推進統轄部の佐藤貴康さん(左)と、デザイン開発統轄部の鈴木貴文さん(右)。写真はカシオ広報部提供

–オシアナスといえば丸型のエレガントウオッチというイメージが定着しているように思います。このタイミングでスクエアケースの発表に踏み切った経緯を教えてください。

佐藤さん:オシアナスは、スポーティなデザインに軸足をおきながらエレガントさを追求するブランドです。最新作は、従来のイメージにさらなる個性や遊び心を表現する手法としてできることはないか。そう考えたときに派生型としてスクエアケースがあっても良いだろう、という発想です。角形には高級時計でも名作と呼ばれるモデルが多いので、うまく行けばオシアナスの新たな定番になる可能性を秘めていると思っています。

鈴木さん:企画からスクエアのオシアナスのデザインのアイデアを振られたとき、一番最初に考えたのは特有の流麗なスタイルをどうやって角形に落とし込むか、という点でした。実際の数値以上に大きく見えることもあるので、いかに小さく見せるかという点も難しかったですね。

–実際にどのような点で、課題点を克服したのでしょうか?

鈴木さん:スクエアケースのデザイン自体はG-SHOCKやデータバンクなどで製造してきた実績があるので、防水性能の確保などノウハウがないわけではありません。まず流麗なラインについてはベゼルとガラスを湾曲させるデザインにしました。そのベゼル自体も丸みを持たせた造形にすることでモダンな雰囲気に仕上げています。

佐藤さん:とくに新規軸になるような商品開発の場合は、有識者からの意見を取り入れることがあるのですが、最も多かった意見がクロノグラフは厚みのある時計が多いということ。新作はこれまでの技術成果を活かしてオシアナスらしいスリムな設計にできたので、他社製品に比べてアドバンテージがあると思っています。

–厚みは10.4mmと、カーブガラスを使ったスクエアのクロノグラフとしては確かにスリムといえるサイズですね。この新しい多機能スクエアモデルは、細かい仕上げ分けも特徴だと感じました。

鈴木さん:おっしゃる通りで、かなり細かく磨き分けています。サテンとポリッシュの使い分けを徹底することで、ガラスからバンドまでの一体感を生み出しているのです。この削り出しのチタンブレスレットもOCW-T5000のために新しく開発しました。より腕に馴染むようコマのピッチを短くしているので、しなやかに装着できます。ちなみにリューズもスクエア型のものを新設計しました。

–従来の丸型モデルでは見どころの一つだったインダイアルのメタルパーツが、このスクエアモデルで不採用にした理由はなにかありますか?

鈴木さん:OCW-T5000の場合は、スクエアのベゼルを強調するため、インダイアルを主張させず縦のストライプ模様もさりげなく際立つぐらいのミニマルなデザインにしました。

佐藤さん:控え目な上質さという点では、レザーストラップも、OCW-T5000に相応しいものとなっています。耐久性などで弊社の基準を満たすコードバンをリサーチした結果、姫路にある馬革専業のタンナー「新喜皮革」さんに協力を依頼することができました。コードバンならではの高級感ある艶を楽しんでいただける皮バンドに仕上がっていると思います。

オシアナス「クラシック・ライン」左/OCW-T5000-1AJF 16万5000円 右/OCW-T5000CL-1AJF 15万4000円 Bluetooth搭載ソーラー電波時計。チタンケース&ブレスレット/コードバンストラップ。縦47.4×横38.2×厚さ10.4 mm。10気圧防水

また折角、世界屈指のタンナーさんにお願いできることになったので、ラウンドケースの方でもバリエーションに加えています。

オシアナス「クラシック・ライン」OCW-T4000CL-2AJF 10万4500円 Bluetooth搭載ソーラー電波時計。チタンケース。コードバンストラップ。縦48.1×横42.8×厚さ11.9mm。10気圧防水

高級時計で長く親しまれているスクエアウオッチのロングセラーは、その誕生から基本デザインを大きく変えていません。このモデルも同じように、時計好きの方々から「角形の定番」として認知されることを願っています。

時計市場の新ジャンル開拓の可能性を感じた一本

「レベルソ」「モナコ」「ヴィンテージ 1945」「BR 05」など、スイス製の高級時計には確かにロングセラーの角形ウオッチが複数ある。だが、どのブランドでも角形ウオッチがあるわけではない。その理由は製造上の問題で、とくに機械式時計の場合はケースを四角くすることで内部機械の設計難度が上がり、裏ブタをスクリューバックにできないため防水性能の確保も困難を極める。

オシアナスもBluetooth搭載ソーラー電波時計と、電気エネルギーで動く腕時計ではあるものの、その多機能からダウンサイジングは通常のクオーツ式よりも格段に難しく、厚さ10mmの壁を突破したのも2019年のこと。OCW-T5000がたどりついた10.4mmの厚みには、さまざまなカシオの技術革新が詰まっている。

思い返せば、10〜20万円代のアナログソーラー電波ウオッチのジャンルを切り拓いたのはオシアナスだった。このブランドが、今度はフルアナログの角形ソーラー電波ウオッチで唯一無二の地位を築く可能性は大いにあるだろう。

TEXT/Daisuke Suito(WATCHNAVI)
Photo/Katsunori Kishida

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