【時計用語】人に説明できますか?→クロノグラフ/トゥールビヨン/GMT【機構編】

時計のことを深く知るためには、いくつかの用語を知っておきたいものです。今回は、機械式時計の実用性を高める様々な機構を取り上げます。

 

【アニュアルカレンダー】
【アラームウオッチ】
【均時差表示】
【クロノグラフ】
【GMTウオッチ】
【セミ・パーペチュアルカレンダー】
【デュアルタイム】
【電波時計】
【トゥールビヨン】
【トリプルカレンダー】
【ハック機構】
【パワーリザーブ・インジケーター】
【フライバック】
【ヘリウムガス・エスケープバルブ】
【ムーンフェイズ】
【レトログラード】
【ワンプッシュ式クロノグラフ】

 

【アニュアルカレンダー】
1年に一度、2月の末日〜3月1日にかけてだけユーザーが手動操作で日付調整を行えば、以後の364日のカレンダー情報を正確に表示できる機構。パテック フィリップが1996年に世界で初めて開発した。年次カレンダーと呼ばれることもある。

↑パテック フィリップの年次カレンダーは閏年表示を持たないトリプルカレンダー表示が特徴

 

【アラームウオッチ】
あらかじめ設定された時刻になると、ケース内部に設置されたアラーム用のハンマーが金属塊やリング部品を叩いてベルを鳴らす機構を備えた時計。腕時計では1947年にスイスのヴァルカンが世界で初めて実用化に成功したと言われている。

↑フォルティスは1998年に世界で初めて自動巻きクロノグラフにアラームを搭載したモデルを発表

 

【均時差表示】
1日を24時間と定めた「平均太陽時」と、実際にその日の太陽が天空の真上を通過し、次の日に再び真上を通過するまでの時間「真太陽時」との差を表示する機構。地球は太陽の周りを公転しているため絶えず真太陽時は変化しており、均時差表示ではその変化の度合いをダイアル上の針と目盛りで「+8分」「−12分」などと表示する。

 

【クロノグラフ】
ボタン操作が可能なストップウオッチ機能を備えた時計のこと。ケースサイドやリューズ同軸に設置されたボタンを押すと、計測専用の針が動き出して計測をスタート。もう一度ボタンを押して針を停止させるまでに経過した時間を、秒単位で表示する。多くのクロノグラフは文字盤上に60秒、30分、12時間の表示を有しており、11時間59分59秒まで1秒単位で把握できる。

↑ブライトリングは現代のクロノグラフ機構の礎を築いたブランド。写真は同社製クロノグラフキャリバー01

 

【GMTウオッチ】
時針とは別に12時間、または24時間で1周する針(これを副時針、GMT針と呼ぶこともある)や、12〜24時間表記のベゼルなどを用いることで、同時に第2時間帯、第3時間帯の現在時刻まで把握できる時計。

↑ロレックスのGMTマスターは24時間で1周する針を備えた第2時間帯表示モデルの先駆け

 

【セミ・パーペチュアルカレンダー】
4年に一度、閏年の2月の末日だけ手動で調整すれば、その他の年&月は自動的にカレンダーを正しく表示する機構。年に1度、修正が必要となるアニュアルカレンダーの発展型。

↑ブライトリングで1461と名のつくモデルはセミ・パーペチュアルカレンダーを搭載する。1461とは、365×4と1日分まで正確なカレンダー表示を表す意味でつけられたもの

 

【ソヌリ】
ユーザーが起動させるリピーターに対し、ソヌリは毎正時や15分ごとに、自動的に鐘の鳴らす。鐘はボタン操作で任意に作動させたり、音が出ないようオフ状態に設定しておくこともできる例が多い。ちなみに毎正時と15分ごとに鐘の鳴るものはグランソヌリ、毎正時と30分ごとに鳴るものはプチソヌリと呼ばれている。

↑ソヌリ機構を搭載したムーブメントは複雑を極める

 

【デュアルタイム】
1本の時計で2つの時間帯を表示する機構全般を指し、搭載モデルは「デュアルタイマー」と呼ばれることもある。狭義では、メインダイアルとサブダイアルのそれぞれに時分針を持ち、ひとつの文字盤で2タイムゾーンが表示できる時計のこと。

 

【電波時計】
誤差が10万年に1秒しか生じない超高精度な原子時計で制御された標準時刻データの電波を、時計に内蔵された受信アンテナで自動受信。もし誤差があった場合、それを自動的に修正する機能を持った時計のこと。電波の発信基地局は世界に6局(日・独・英・米・中 ※日本は2局)あり、世界の主要都市で時刻情報が受信可能。発展型として、GPS衛星から位置情報と時刻情報を受信できるモデルもある。

 

【トゥールビヨン】
天才時計師として著名なアブラアン-ルイ・ブレゲが、19世紀初頭に発明した機構(特許取得は1801年6月26日)。時計部品が受ける重力の影響を平均化することで、「腕に着けた状態」「机に横向きに置いた状態」「ケースに文字盤を上向きに収納した状態」など、時計がどんな姿勢の時でも安定した精度を維持できるよう、テンプやアンクルなどの調速&脱進機構を「キャリッジ」と呼ばれる小さなケージに収め、常に回転させておく装置。

【トリプルカレンダー】
日付、曜日、月という3種類のカレンダー表示を行う機構のこと。ムーンフェイズまで搭載されることも多い。

 

【ハック機構】
時刻合わせを秒単位で正確に行えるよう、リューズを引いた瞬間に秒針が止まる機能のこと。兵士が任務の遂行にあたる前に、部隊全体で時間を統一する際の掛け声が命名の由来と言われている。

 

 

【パワーリザーブ・インジケーター】
ゼンマイの巻上げ残量を、ダイアル上に針や数値、色の変化で表示する装置。アブラアン-ルイ・ブレゲが1780年代に自動巻きモデル「ペルペチュエル(懐中時計)」に搭載したのが、そのルーツとも言われている。

↑パワーリザーブ表示のことをリザーブ・ド・マルシェと呼ぶこともある

 

【フライバッククロノグラフ】
クロノグラフの計測中に、ボタンひとつでリセットと再スタートを同時に行う機構のこと。通常のクロノグラフでは再計測するためにストップ、リセット、スタートと3つの手順が必要となるところ、フライバッククロノグラフでは1回のボタン操作で可能となる。

 

【ヘリウムガス・エスケープバルブ】
ヘリウムガス・エスケープバルブは、時計内部のガス抜きを行うダイバーズウオッチのための装置。作業ダイバーが飽和潜水を行う際、身に着けている時計の内部には加・減圧室での加圧中に分子の小さいヘリウムガスが侵入。潜水後の減圧中に気圧が低くなると、自然に抜けきれなかったそのガスが膨張してケース内圧が高まり、ガラスなどを破損してしまう恐れがある。そうした事故を防ぐために考案された。

 

【ムーンフェイズ】
その日の夜空に現れる月の姿を時計に表示する機構。一般的な機構では、月の満ち欠けの周期を29.5日とし、2つの月が描かれた59枚の歯を持つムーンフェイズディスクで示す。ただし、この仕組みでは、実際の月の周期は29日12時間44分2.8秒のため、約2年7か月20日で1日分の誤差が蓄積されることになる。一部のブランドでは、よりディスクの歯数を厳密化するなどして1日の誤差が生じるまでに約122年を要する高精度モデルも展開されている。

 

【レトログラード】
ゼロ位置からスタートした針が終点まで達すると、瞬時に出発位置(ゼロ)まで戻り、再び動き始める運針方式。針が円運動ではなく往復運動を行う為、表示部が円ではなく扇型になっているのが大きな特徴となっている。

↑右側にあるのが、扇型のレトログラード式日付表示

 

 

【ワンプッシュ式クロノグラフ】
ひとつのボタンで「スタート・ストップ・リセット」の順に操作できるクロノグラフのこと。単独ボタンのほか、リューズ同軸タイプもある。モノプッシュ、シングルプッシュなどとも呼ばれる。