【腕時計の素朴な疑問を解消!】自動巻きと手巻きムーブ、どんな所にトラブルが発生しやすい?
同じ機械式時計でも、自動巻きと手巻きではトラブルの発生箇所が違うのはご存知ですか?似ているようで異なる構造を持つ両者は、もちろんダメージを受ける箇所もそれぞれ。まずはムーブメントの仕組み知って、トラブルを未然に回避しましょう。
定期ケアと正しい使い方が大前提
一流ブランドの時計なら、消耗などのトラブルは設計時に想定済み。その対策として、部品の硬性を高めたり、オーバーホール毎に部品交換などを行っているので、定期的なケアと正しい使い方を心がけていれば、どちらも基本的にトラブルは発生しないのが原則です。ただ、それを怠ると駆動や負荷の激しい部品に摩耗などが発生することもあるので要注意!
【自動巻きの基本構造】
自動巻きの場合、写真左にある自動巻き機構部の反対側に設置されたローターが動き、切り替え車にまずその回転が伝わります。切り替え車の回転は、隣にある減速車へ下部のカナ部品を通じて伝達。ちなみにカナとは歯車部品の裏側下に設置される小さな歯車のこと。
減速車が回転すると、同じく下部のカナ部品で接続された角穴駆動車を回転させ、その隣の角穴車と香箱真を回してゼンマイを巻き上げるという仕組み。人間の指の力に比べローターの回転は弱いので、各歯車はカナ部品を通じることでギア比を変え、徐々にパワーを増大していく工夫も施されているのです。
傷みやすい箇所は?
自動巻きムーブの場合は、手巻き機構部の部品に加え、自動巻き機構部(減速車、切り替え車、角穴駆動車)にかかる負荷が大きいです。オーバーホールを怠ると、部品同士がこすれて微細な金属カスが発生。そのカスが部品に付着して、研磨剤で削ったように歯車の歯先や下部のカナ、軸を摩耗させてしまうこともあります。
【手巻きの基本構造】
手巻きのゼンマイの巻き上げ機構は実に単純明快です。まず、リューズを回すとリューズの軸である巻き真と、下部に設置されたキチ車が同時に回転。キチ車は巻き上げ機構部(写真左)の丸穴車と縦方向に噛み合っているので、さらにこれが回転。丸穴車が回転すると、隣にある角穴車とその軸(香箱真)を回し、内部にあるゼンマイを巻き上げる構造になっています。
ちなみに、角穴車の横にあるコハゼは、ゼンマイの力で角穴車が逆回転しないよう、ストッパーの役目を果たす部品です。
傷みやすい箇所は?
手巻きムーブの場合は、リューズを巻く指の力が直に伝わるキチ車の歯と丸穴車の歯先が、縦方向に噛み合う構造。そのため設置面積が少なく損傷が出やすいです。また、ゼンマイの強いトルクが常にかかっている角穴車の軸にも摩耗の危険性があります。
定期的なオーバーホールを行っていれば、ほとんどのトラブルは未然に防ぐことができます。リューズを回す動作はソフトに、時計を振り回してローターを激しく動かさない、といった点にも普段から注意するようにしましょう。
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