【再販超希望】12分計測と現在時刻を示すだけのサウナ専用腕時計「サ時計」を体験したら頭から湯気が出るほど欲しくなった
カシオが12月2日正午よりクラウドファンディングを開始し、10分を待たず予定製造本数の2300本の上限に達したという期待の新製品が、「サ時計」である。もはや購入不可能となったレアウオッチを、実際に体験させてもらえる機会をカシオより得たので当日の模様と合わせて使用感をレポートする。繰り返すが、もう買えないのであしからず。
当時入社2年目の4名がチームとなり3年がかりで製品化を実現
『サ時計』に触れるより先に、カシオの働き方についておく必要がある。同社はマーケティング視点で顧客価値を生み出せる人材の育成を兼ねて、社員が新規事業の創出に挑戦できる仕組み「IBP(Idea Booster Program)」を2020年から実施しているのだという。今回の『サ時計』は、そうした仕組みの中から誕生したことになる。ただし、あくまでも『サ時計』はイレギュラーな製品のため、「通常の勤務時間の中に割り振られている1割程度の自由時間で開発と検証を行っていた」と後で聞いた。さすがに大詰めを迎えた時期は『サ時計』にかかりきりだったそうだが、3年かかるのもやむなしである。 ということで、体験会のレポートだ。会の冒頭、「『サ時計』がクラウドファンディングが想定を超す反響で瞬く間に上限数量に達してしまい、もう入手できない」ことが参加メディアに伝えられる。本来であれば、この体験会もクラウドファンディングを盛り上げるための取り組みとして企画されたものだっただろう。ただ、筆者としては気になっていた時計を着けて、サウナにも入れるのだから役得であることに変わりはない。
体験会はまず『サ時計』の特徴と開発経緯の説明から始まった。登壇者はサ時計PJリーダーで実装設計を担当した山田さん、外装設計の小林さん、ソフト開発の百貫さん、デザインの鈴木さんという『TEAMサ』の4名。もともとサウナーだった山田さんが感じたサウナでの時間確認の不便さから構想が始まり、デザインの鈴木さんがサウナに入りながら12分計を見てひらめき、外装設計の小林さんが耐熱電池やサウナ耐性のある素材を調達、ソフトウェア開発の百貫さんがサウナ環境での時刻表示と12分計の機能を検証込みで行ったという。この件は「Makuake」のクラウドファンディングページの漫画に詳しく書いてあるので、興味のある方は読まれたし。開発に際しては日本No.1サウナ検索サイトである「サウナイキタイ」の協力も得たという力の入れよう。サウナブームの盛り上がりのなかで、本当に『サ時計』に需要があるのかを見極める最終局面が、クラウドファンディングだったわけだ。そして結果は、冒頭にお伝えした通りである。
「TEAMサ」による開発秘話のあとは、サウナ大好き芸人&熱波師のマグ万平さんをお迎えし、リーダー山田さんと「サウナ楽しみ方講座」のトークが始まる。マグ万平さんが「2024年で最も短時間の仕事」というわずか10分程度のトークながら、「腰掛ける姿勢では頭とつま先で10度ほど温度が違うので、できればあぐらで座ると温度差が生じにくい」「サウナの後は体に熱のバリアがあるので、水風呂が冷たすぎるときでも静かに入ればバリアに守られる。反対に水風呂がぬるいときはよく動いた方が良い」など、ためになる情報を知ることができた。さすがは、2019年から続くサウナ専門番組「マグ万平の のちほどサウナで」のメインMCである。 トークが終わり、いよいよ『サ時計』を着用してのサウナ体験に。今回のイベントは、錦糸町にある「黄金湯」(東京都墨田区太平4丁目14−6)さんが全面協力。特別に水着とTシャツを着用しての入浴を可能にしてもらったのだという。ということで着替えて、掛け湯して、サウナへ直行! 圧倒的に使いやすいぞ『サ時計』!! 実は普段からメガネ着用の筆者がサウナに入る時はもっぱら裸眼。両目とも視力0.1のため、サウナ室の12分計を見ることさえままならない。時間制限のあるコースで入ることの方が多いため、現在時刻も気になる。とはいえ、たとえG-SHOCKであってもサウナの100度から水風呂の20度以下という急激な温度変化を繰り返すのは忍びなく、かといってそれ以外の腕時計を着けては入りたくない(壊れそうなので)。というわけで、開発秘話に出たスライドと完全に同意だったのである。
サウナ環境においては確実に『サ時計』が最強であることを、入室から1分を待たずに完璧に理解した筆者。共用ではなく、自分だけの12分計があること、そしてボタンひとつで現在時刻がわかることの便利さを痛感した。時計メディアの編集者として20年を超えてなお、これほど時間を知ることの大切さを知るとは正直思わなかった。しかもサウナ専用腕時計で。
などと考えつつ体験会なのに本気でととのおうと張り切るのも気が引けるので、サウナ12分→水風呂2分→外気浴5分の1サイクルで早々に終了。よく考えたら濡れた服のままで12月上旬の外気に触れてもサウナ効果がテキメンだったのは、黄金湯さんの塩梅が良すぎたからだろう。最後はオロポ片手に黄金湯さん自慢の「サ飯」をいただいて体験会は終了。
ととのったかどうかはさておき、昼間のサウナは労働意欲を一気に吹き飛ばしてくれた。このあと職場に戻る足取りのなんと重いことか。しかも『サ時計』はもう買うことができないのである。のぼせた頭を揺らしながら考えるのは、『サ時計』の再販について。これを欲する人の声が多ければ多いほど復活の可能性が高まることは違いなく、これから先も筆者はことあるごとにカシオの方々とお会いするたびに再販を訴えかけていこうと強く心に誓ったのであった。
『サ時計』製品紹介
近年のサウナブームで、心身のリラックス状態を「ととのう」と表現するのが話題になっている。「ととのう」ためには、サウナ、冷水浴、外気浴を数回繰り返す。のぼせや冷えすぎを防ぐため、適度な時間管理が重要だ。しかしながら、これまで高温・高湿の環境では、腕時計やスマートフォンは持ち込めないため、正確な時間を把握することが難しいという課題があった。さらに多くの施設ではサウナ室に12分計を設置しているが、視力の悪い人には見にくいという意見や、脱衣所以外に時計が設置されていない施設では、現在時刻が分からないので利用時間を過ぎてしまわないか不安になるという声も聞かれた。このようなサウナに関する問題を解決するために誕生した『サ時計』は、サウナーがいつでも時間を確認できる利便性を提供したいと感じた開発者の思いから生まれた。