“優等生”が劇的変化で超絶イケメンに! ゼニス「エリート」がデファイから出たらこうなった
2018年の新作で衝撃を覚えた時計のひとつに、ゼニスの「デファイ エリート」がある。この時計は、「エリートキャリバー」に対して筆者が持つイメージを一変させるほどのインパクトがあった。例えていうなら、真面目で優等生だった同級生が、夏休み明けにあか抜けて登校してきたような……。クラシックで使いやすいものもいいけれど、たまにはこんな時計で冒険するのもいいのでは? そういうゼニスからの提案のように思えた。
文/水藤大輔
ゼニス初のCAD設計で生まれた「エリート」キャリバー
ムーブメントを自社一貫製造するル・ロックルのマニュファクチュール・ゼニスの旗艦ムーブメントは二つある。ひとつは時計界で唯一量産されている毎時3万6000振動の自動巻きクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」。そしてもうひとつが、1994年にゼニス初のCAD設計で作られた薄型自動巻きムーブメントの「エリート」である。
エル・プリメロは、高級時計の購入を検討したことのある人なら、一度は耳にしたことがあるだろう。だが、エリートに関しては、クラシックなデザインの時計に搭載されていたため、ここ数年の新作発表でも大きく扱われることは少なかった。その印象が、2018年のバーゼルワールドで一変したのである。
変わるきっかけとなったのは、前年に登場した新シリーズ「デファイ」。デビューコレクションは、先にエル・プリメロに1/100秒計測対応のクロノグラフモジュールを追加したモデルで、オープンダイアルとクローズドダイアルの2パターンで発表された。そして迎えたデファイの2年目に、エリートキャリバー搭載の3針モデルのお披露目となったわけだ。
これまでは普遍的で、永く使えるデザインという、多くの人が好む時計に搭載されてきたエリート。そのオープンダイアルの仕上がりは、筆者にとってかなり衝撃的だった。
中心から5方向に向かって枝分かれする幾何学的なプレートは、シンボルであるゼニススターをかたどったもの。その奥からは、エリートキャリバー670をベースに、デファイ向けに手を加えたスケルトンムーブメントの動きが確認できる。これを前面に垂直のヘアライン仕上げが施されたデファイ共通のアシンメトリーケースに収めたわけだ。
このモダンでスポーティなデザインは、従来のエリート クラシックとは明らかに一線を画すもの。「あの控えめな雰囲気は一体どこへ!?」。そう思いながら腕に乗せると、薄く、軽快な着け心地にエリートの面影を感じる。アグレッシブな見た目だが、実は厚さは10.75mmにまで抑えられていたのだ。※デファイ エル・プリメロ21は厚さ14.5mm。
「あいつ、やんちゃなグループに入ってすっかり変わったと思ってたけど、実は根は真面目なままだったよ」
そんなギャップに、私のような毎日時計のことばかり考えている時計誌の編集者はすっかりヤラれてしまったのである。
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