【SIHH2017ヴァシュロン・コンスタンタン】ソヌリと天体表示で見せた世界最古級ブランドの技術力
ジュネーブで開かれているSIHH2017で発表された新作から、注目モデルを現地より発信していきます。今回は、ヴァシュロン・コンスタンタン。前年はオーヴァーシーズの一斉再編で注目を集めましたが、2017年はコンプリケーションウオッチが豊富に発表されました。「ソヌリと天体表示の出発点」という名門メゾンの新作を取り上げます。
リファレンス57260の流れを汲む複雑機構
ヴァシュロン・コンスタンタンが2015年に発表した史上最も複雑な時計「リファレンス57260」は、時計史上に残る傑作といっても過言ではありません。この至高のコンプリケーションの開発が、ヴァシュロン・コンスタンタンの新たなるストーリーの始まりとなったようです。
2017年のSIHHを「ソヌリと天体表示の出発点」と位置付けた通り、それぞれの機構を搭載したコンプリケーションが発表されました。この記事では、代表的なモデルを1本ずつ取り上げます。
開発期間に10年をかけたブランド初のグラン・ソヌリ
時打ち機構を作ることは、それだけで優れた技術力の証明となります。それは、ただ組み立てるだけではなく、目指すべき音の調整までを時計師が行う必要があるから。機構の複雑さはもちろん、精度の追求に加え、音の鳴り方・音色までもハイレベルな技術と経験が要求されます。
ヴァシュロン・コンスタンタンが発表した「レ・キャビノティエ・シンフォニア・グラン・ソヌリ 1860」は、オートオルロジュリー製作を得意とする同社が10年もの開発期間を経て完成させたユニークピースです。
搭載ムーブメントは、ジュネーブ・シール取得のCal.1860。合計727個に及ぶパーツを、一人の職人が500時間かけて組み上げます。サイズは直径37mm、厚さは9.1mm(ケースサイズは直径45mm、厚さ15.1mm)。時計用のパワーリザーブは約72時間で、チャイム用にも約20時間が確保されています。
ソヌリは、正時と15分ごとに音がなるグラン・ソヌリ、正時のみのプチ・ソヌリ、音が鳴らないサイレントをユーザーが選択可能。ファンクションセレクターをベゼルに配すという設計も大きな特徴となっています。
精緻を極めたミニッツリピーターは、使い方も繊細さが要求されるもの。ですが、本機では故障を防ぐために機構の相互干渉や、作動中のゼンマイ切れを防ぐために様々な配慮がなされています。
世界に一つしかない時計を製造する部門「レ・キャビノティエ」で作られるため、オーダーした個体はすべて世界に1本の限定品。価格は要問い合わせとなります。
同じくレ・キャビノティエから開発された圧巻のグランド・コンプリケーション
ヴァシュロン・コンスタンタンが発表した、天文表示付きコンプリケーションの最高峰モデルが「レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600」です。この時計は、表と裏に文字盤を持つデュアルフェイス仕様で、合計23もの機構が搭載されています。
表示機能は以下の通りです。
時、分、永久カレンダー、デイ/ナイト表示、高精度ムーンフェイズ、 月齢、連続作動均時差表示、日の出・入り、 昼夜の長さ、四季、至点、分点、黄道 12 星座 、潮位表示、潮位表示太陽 、太陽 -地球 -月の位置関係(合、衝、矩)、北半球の透明な天空図(銀河表示、黄道および天体の赤道付き)、 恒星の時と分、 トゥールビヨン、3週間パワーリザーブ(6個香箱)、パワーリザーブ表示
自社に特別な製造部門や研究開発部門を置き、その成果を形にするブランドが徐々に増えていますが、ヴァシュロン・コンスタンタンもレ・キャビノティエの技術力をいかんなく発揮してきました。今後も超絶ユニークピースの製造で、世の時計好きを楽しませてくれるに違いありません。