時計ジャーナリストが語る〝最新こそ最良〟を体現する1本――ヴァシュロン・コンスタンタン「フィフティーシックス」

〝最新こそ最良〟。時計に限らず議論されることだが、2019年を振り返るとこの法則にあてはまる新作がいくつも見受けられた。時計専門誌・ウオッチナビが、絶えず高みを目指すブランドの姿勢に心動かされた、〝最新こそ最良〟を体現する2019年ニューモデルについて、著名なジャーナリストに評価してもらう本企画。今回はヴァシュロン・コンスタンタンの実用性に優れるステンレススチールモデルについて、時計とジュエリーに精通する岡村佳代さんに語っていただいた。

ヴァシュロン・コンスタンタン「フィフティーシックス・コンプリートカレンダー」Ref.4000E/000A-B548 250万8000円/前年発表のフィフティーシックスコレクションに加わったペトロールブルーダイアルにより、モダンクラシックな顔立ちがさらに新鮮に。ジュネーブシール取得のCal.2460 QCL/1を搭載。12時位置のウインドウでデイ&マンス表示、ポインターデイトを採用し、6時位置には高精度ムーンフェイズ表示も備える。整然とした配置はブランドの真骨頂だ。自動巻き。ステンレススチールケース。直径40mm

「デイリーに楽しんでこそラグジュアリー」

「いつかはこの手に、マルタ十字」――時計を愛する男にとって、ヴァシュロン・コンスタンタンは特別な憧憬を抱く存在だ。世界最古の歴史を誇る雲上ブランド、そのステイタスはいつの時代も揺るぎなく、時計好きが最後に行き着く「上がり」の一本として、そして人生の目標にもなりうる特別なマニュファクチュールとして認識されてきた。

しかし、昨年発表された新しいコレクション・フィフティーシックスの登場によって、その既成概念は過去のものになりつつある。自らがもっと成熟した暁に手にしたいという「夢」ではなく、いま現在の「リアル」――等身大の自分に寄り添うデイリー・ラグジュアリーウオッチという、ヴァシュロン・コンスタンタンの新たなイメージを切り拓いた。

その「最新」にして「最旬」は、日本に上陸したばかりの、ペトロールブルーの文字盤の新作だ。ステンレススチールのケースに合うよう、特別に開発された洒脱なブルーは、ネイビーよりやや明るく、グリーンやグレー味を帯び、手元の洗練度を確実に底上げする。

昨秋あたりからメンズファッション界でも注目されているこのニュアンスのあるブルーを、タイムラグなく取り入れる瞬発力。そして、中心部はオパーリン、外側はサンバーストと、異なる仕上げを施すことによって表情に奥行きを持たせるデザインセンスは、歴史や伝統にあぐらをかかずに、常に現在進行形であり続けるヴァシュロン・コンスタンタンの真骨頂といえるだろう。

1956年に発表された伝説の名品「Ref.6073」を踏襲したケースは、ブランドのシンボルであるマルタ十字の4枝を表現するラグが静謐に主張し、若々しさと高級感、軽やかさと重厚感とが、バランス良く共存する。「いつかは」ではなく、「いま」! そう気持ちを駆り立てるさりげない名品は、ラグジュアリー・デイリーウオッチというカテゴリーを確立。ヴァシュロン・コンスタンタンを代表するスタイリッシュなアイコンウオッチとして、時計界に新たな伝説を紡いでいく。

 

岡村佳代
ウオッチ&ジュエリージャーナリスト。日本の女性誌にて機械式時計の魅力を啓蒙した第一人者。男性誌や時計専門誌も手がけ、本格機械式時計を語れる女性ジャーナリストとして活躍中。スイス時計取材歴は今年で20年。

 

問:ヴァシュロン・コンスタンタン TEL.0120-63-1755
https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html