A.ランゲ&ゾーネが、新型キャリバー搭載モデルを発表した。2020年は、すでにオデュッセウスやツァイトヴェルク・ミニッツリピーターのホワイトゴールドバージョンが発表されているが、これに続く新作となる。
新しいランゲ1・タイムゾーンの進化のポイント
ランゲ1・タイムゾーンは、A.ランゲ&ゾーネのフラッグシップコレクションに2005年から加わったデュアルタイム表示モデルである。8時側のボタンを押すと、文字盤外周の都市リングとホームタイムの時針が1時間単位でジャンプ。いま自分がいる地点の時刻表示(ローカルタイム)が正確であれば、時差を調べずとも世界主要都市の時刻が把握できる(10時側のボタンはラージデイトの日送り用)。
この実用的なタイムピースの進化版となる2020年モデルは、前作からほとんどの外装が変わっていないのが特徴。よく見ると前作のホームタイム表示用サブダイアルにあったマークが変更されているのだが、これはサマータイム判別機能だという。EUは2021年にサマータイムを廃止予定なので、この機能は筆者の頭の中では「?」でしかない。この狙いについてはA.ランゲ&ゾーネ側に後日インタビューできる予定なので、その際にでも問うてみたい。
と、いきなり水を差すような内容になってしまったが、機械式時計に詳しい人なら“ドイツ時計の至宝”とも言われるA.ランゲ&ゾーネが新キャリバーを開発したことの重要性がお判りいただけるだろう。前作は、直径42mmというサイズに対してランゲ1のムーブメントをベースに採用していたため、ケースとムーブメントのサイジングに多少の調整が必要となっていた。これが新型では、グランド・ランゲ1のキャリバーがベースとなり、ケースに対してムーブメントがジャストサイズに。ローカルタイムとホームタイムを連動させる出車を支えるブリッジも大きくなり、特徴的なハンドエングレービングがよりはっきりと確認できるようになった。3/4プレートのデザインにも余裕が生まれ、裏側からでも優雅な雰囲気を堪能できる。
持った感触では新型の方がやや軽く感じられたのは、キャリバーがジャストサイズになったぶん、ケースの設計に変更が生じたからだろう。ストラップには引き続きピンバックルが採用されており、サイズ感もほぼ同様。ちなみに価格も継承されているので、すでにランゲ1・タイムゾーンを所有している人に余計な感情の揺さぶりを起こす心配はなさそうだ。
ガジェット系なら新しいものが出ると買い替えたくなるものだが、そうはならないのが機械式時計の良いところ。A.ランゲ&ゾーネほどのブランドであれば、なおさら大幅なモデルチェンジというのはファンから求められていないのだろう。一方で、日進月歩で進化する技術で取り入れた方がより良いものを作ることができるのであれば、積極的に採用するのが“一生モノ”を手がけるブランドの使命でもある。新作ランゲ1・タイムゾーンは、そうした「期待」と「使命」を秤にかけ、絶妙なバランスをとりながら構築されたタイムピースといえるだろう。
<新作「ランゲ1・タイムゾーン」 サンプル巡回展>
◇ A.ランゲ&ゾーネ 銀座 6月26日(金)&27日(土)、30日(火)、7月1日(水)~6日(月)
◇ A.ランゲ&ゾーネ 伊勢丹新宿店 7月8日(水)~ 15日(水)
◇ A.ランゲ&ゾーネ 阪急うめだ本店 7月17日(金)~ 22日(水)
※日本に届いたばかりのピンクゴールドとホワイトゴールドモデルの実機サンプルを店内展示
※6月28日(日)、29日(月)は、三越日本橋本店で開催中の「ジャーマンウォッチフェア」内で特別展示