新連載【腕時計2.0】WATCHNAVI×BEAMS 第1回「ジャケットスタイルと現代の腕時計」

2018/11/7 7:00
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多様化する腕時計と洋服の合わせ方を再定義する連載【腕時計2.0】

文/小暮昌弘 撮影/鈴木泰之

フォーマルシーンには白文字盤の2針か3針、革ベルトの時計がいい――

ひと昔前、腕時計にはTPOが存在していて、シーンによって着用する時計のテイストに決まりのようなものがあった。しかしながら、いまやカーボン素材を用いたケースや45mm以上の大きさのものなど、多種多様な時計が生まれ続けている。一方、今回の取材でも明らかになったが、ファッションの世界でもフォーマルな着こなしに変化があったり、経営者と呼ばれている人たちのなかでも、堅いスーツだけでなくセットアップのようなものを着ている人も多い。時計もファッションもかつての常識が変わりつつあるなか、それぞれをいかに合わせて楽しむべきか。老舗セレクトショップであり、業界をリードし続けるビームスと本誌がタッグを組み、本連載では【腕時計2.0】スタイルを考えていく。

時計は腕に身に着けて初めて成立するもの。ならば時計選びだけでなく、全体のコーディネートにも十分注意を払いたいものだ。今回は、「ビジネスシーンにおけるジャケットスタイルと時計のコーディネートついて」、ビームスのシニアクリエイティブディレクターの中村達也さんと本誌編集長の関口優が語り尽くした。

関口優(以下関口):今日は最新の時計を前に、ビームスのクリエイティブディレクターを務める中村さんと一緒に、時計のコーディネーションや身に着け方を模索できればと思っています。中村さん、いつから時計に目覚めましたか?

中村達也さん(以下中村):私は子供のころから時計が好きでした。でも時計は貴重品で、安い時計がない時代だったので、どれもそこそこの値段がしました。祖父がしていて、使わなくなったのをもらったのが、私の初めての腕時計です。「貴重で、いいもの」。それが初めて時計に触れたときのイメージですかね。

関口:確かに腕時計は、「貴重で、高い」という印象がありましたね。

中村:今やスマホを見れば時間がわかる時代ですが、私たちが育った時代は「時計を身に着けていないと落ち着かない」という感じがしていました。

関口:もしかしたら、現代は機能としては「絶対に腕時計をしていなくてはならない」という時代ではないかもしれませんね。でも時計は今でも人気で、どれを選ぶか、みんな迷っています。

中村:経験から言うのですが、時計選びって、ファッションととてもリンクしていると思います。たとえば私が中学生のころは(流行は)アイビーの時代でしたから、スポーツウオッチは服装にマッチしないので、薄型のドレスウオッチがいいと言われていました。その後、アメカジとかミリタリーが出てくるとファッションとしてドレスウオッチは合わない時代になってきて、スポーツウオッチが流行り、市場にいろいろなものが出てきました。

いろいろなデザインの時計を身に着けるようになったのはおそらく90年代に入ってからのことではないでしょうか。イタリアのクラシックスタイルが流行ったときに、イタリア人がスーツにクロノグラフ、ダイバーズウオッチをしていたんです。「スーツにダイバーズを合わせていいんだ!」と。いわゆる“ハズシ”のコーディネートの誕生です。それがやがて一般的になり、時計においてはTPOをあまり問わなくなってきたのではないでしょうか。

関口:イタリアが日本、いや世界の時計市場に与えた影響は多大なるものがあると言えますね。

中村:イタリア人が世界でいちばん時計が好きな人種だったということも大きいのではないでしょうか。

関口:日本人もそうとう時計好きな人種ですね。“攻める”デザインのモデルも意外に売れているんです。特に中村さんも今回非常に面白がっていたウブロ。世界的に人気ですが、ヨーロッパよりも日本での人気が高いんです。「ビッグ・バン ウニコ チタニウム」を今回のスタイルに選んでいただきましたね。これは新しさが香ります!

中村:この時計に合うスタイルとしてコーディネートしたのが、ジャケットを使ったスタイリングです。

ジャケット:チルコロ1901 7万3440円、バンツ:ジェルマーノ 3万240円、シャツ:ルイジ ボレッリ 3万4560円、タイ:ビームスF  1万800円、シューズ:クロケット&ジョーンズ 8万5320円、ベルト:アンドレア ダミコ 2万520円、チーフ:ビームスF 3024円 /問ビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623、時計:ウブロ 227万8800円/問LVMHウォッチ・ジュエリージャパン ウブロ 03-5635-7055

関口:グレンチェックのジャケットですね。トレンドの英国調を感じさせる素材が粋です。

中村:このジャケットの素材、実はジャージなんですよ。

関口:えっ。そんな風に見えないですね。

中村:ジャージにプリントしているんです。これがツイードだと、ウブロのこのデザインにはマッチングしないと思うんです。ジャージにプレイド(柄)をプリントするのって、見え方としては斬新じゃないですか。ウブロの時計も斬新でしょう。この時計の色を考えて、コーディネートもあまり色を使わずにモノトーンで。ネクタイはネイビーのニットタイで。白とネイビーのモノトーンで表現される着こなしならば、ビジネスシーンで盤石でしょうし、この時計が合うと思います。スポーティなスタイリングなんですが、エレガント過ぎるジャケットだと時計に力負けするなと思いまして、素材をジャージにしてみました。

関口:ジャケットを軸に、そのイメージを生かして時計とコーディネートしているわけですね。

中村:色合わせから来るイメージと、ジャケットの新しさが、ウブロのクロノグラフの新しさ、今の時代感にもマッチすると思います。

関口:ウブロは割と斬新なデザインなので、オーソドックスにクラシックなスーツに合わせるのには手強いと思いますが、このような着こなしならば、ビジネスシーンのきれいな格好にも合いますね。

中村:今、シワにならないセットアップを着て、Tシャツにスニーカーを合わせているような職業の方も多いと思います。IT関係の方とか。そういう人ならば、スーツスタイルでもこのウブロを合わせてもいいかと思います。ウブロはラグジュアリーな時計です。スーツに合わせるならば、それをあまり強調しないようにする方が逆に洒落ているのでは。

関口:ウブロは異なる素材を必ず組み合わせることがブランドポリシー。ラバーストラップを採用し、セラミックなどの新素材にも挑戦、ケースも多重構造で、進化に貪欲です。このジャケットも素材が斬新で、プリントでこんなジャケットが出来るなんて驚きました。

中村:ここ数年ですね、これだけプリント技術が発達したのも。ジャージ素材でも型崩れしなくなったので、ジャケットのきちんとしたシルエットが出るようになりました。

関口:次のコーディネートにセレクトされたのは、IWCの「パイロット・ウォッチ・マーク XVIII “プティ・プランス”」ですね。

スーツ:ブリッラ ペル イルグスト 9万7200円、シャツ:ギ ローバー 2万1600円、タイ:アルテア 1万4040円、ベルト:サドラーズ 1万800円、チーフ:ジョン コンフォート  7344円/問ビームス六本木ヒルズ 03-5775-1623 時計:IWC 52万9200円/問IWC 0120-05-1868

 

中村:どちらかというと、イタリアらしい、柔らかいクラシックなスタイルに、このIWCの時計を合わせて見ました。パンツはグレーで、ちょっとオシャレなビジネスマンという感じでしょうか。オーソドックスな合わせならば、3針のベーシックな時計を合わせるのでしょうが、それだとクラシックになり過ぎるので、ちょっとミリタリー要素が入ったドレスウオッチを選ぶことで、ビジネスのシーンが和らぐ、ストイックになり過ぎない感じに仕立てました。

関口:これはIWCの中でも流行を意識したモデルですからね。

中村:最近、NATOストラップが流行りじゃないですか。あれだとちょっとくだけ過ぎてしまう。でもこれは革ベルトでステッチも入っています。クラシックでミリタリーな感じはコーディネートの肝になるかと思いました。

関口:カジュアルなテイストが手元で演出できますね。

中村:これもちょっとした“ハズシ”ですね。でもあまり“ハズシ”過ぎない、かつ堅過ぎるようにも見えない。それがこのコーディネートのポイントでしょうね。これが普通のストラップ、例えば、クロコダイルのものだったりするとドレスウオッチに近くなります。時計のブルー文字盤、ステッチが効いたストラップが“ハズシ”になると思います。

関口:映画で007ジェームズ・ボンドがNATOストラップをして、スーツでもあの手のストラップを着けるのが流行っていますからね。

中村:悪くはないのですが、イタリアの柔らかいクラシックスタイルには、断然こちらの方がいいと思います。ミリタリーウオッチは、ドレスウオッチとスポーツウオッチの中間にあるものだと思います。そういう意味ではシンプルな3針のモデルはコーディネートの可能性は高いと思いますね。ドレス寄りにもカジュアルにも装えていいと思います。

関口:これはかなりエレガンスだと思いますが、ビジネスシーンでジャケットを着こなすことも一般的になっていますから、そういう着こなしに合わせる時計としては、こうしたシンプルなミリタリーウオッチはいいということですね。

中村:今回はチェックのジャケットですが、これが無地だとごくごく普通ですからね。また時計にもシーズンがあると思います。秋冬になると、こうしたレザーストラップを選べば、雰囲気が出る気がします。私がいつもしている時計も夏場は汗をかくので、メタルブレスやNATOストラップをしているのですが、秋冬になると全部レザーに変えるんです。ベルトは“着替える派”なんです。

関口:たくさんお持ちなのでは。

中村:ベルト、めちゃくちゃありますよ。久々に出したらこんな持っているのかと。色も、素材も、いろいろと。自分で付け替えしていますよ。工具もあるので。

関口:そういう風にストラップで着こなしを楽しむというのもとてもいいアイデアですね。本日はいろいろと時計とコーディネートについてご教示いただきまして、ありがとうございました。

<今回の着用コーディネート時計>

IWC「パイロット・ウォッチ・マーク XVIII “プティ・プランス”」

IW327010/52万9200円/自動巻/ステンレススチール/直径40mm

サン=テグジュペリによる「星の王子さま」をモチーフとした本機は、ミッドナイトブルーの文字盤と、ブラウンのカーフスキンストラップが高級感あふれる逸品です。

ウブロ「ビッグ・バン ウニコ チタニウム」

Ref.411.NM.1170.RX/227万8800円/自動巻/チタニウムケース/直径45mm

同社が4年の歳月をかけて開発したクロノグラフムーブメント「ウニコ」を搭載したモデル。
クロノグラフにはフライバック機能が付いています。

 

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