天才時計師アブラアン−ルイ・ブレゲの技術や信条を継承するザ・シンプルウオッチ
時計界の雲上ブランドには、これぞといったドレス系デザインの“ザ・シンプルウオッチ”がラインナップされている。それらは栄光の歴史や技術の高さを物語るシンボリックな存在であり続けている。
本記事では、時計の歴史を2世紀早めたと賞されるアブラアン−ルイ・ブレゲのDNAを受け継ぐ、同名ブランド「ブレゲ(BREGUET)」のシンプルモデルの魅力を掘り下げる。
古典の様式美に沿った圧巻のギヨシェ装飾
19世紀に活躍した天才時計師、アブラアン−ルイ・ブレゲ。時は腕時計の誕生以前。彼の偉大な功績の数々は、当時主流であった懐中時計で成し遂げられたものだ。現代のブレゲが19世紀の様式美に沿ってスタイリングしたコレクションはふたつ。まずはスースクリプションと呼ばれた、シリーズ生産ムーブメントの輪列構造を模した「トラディション」。もうひとつは、アブラアン−ルイ・ブレゲが腕を振るった帝政フランス時代の装飾様式を腕時計にアレンジした「クラシック」である。シンプルウオッチとしての魅力を、より強く訴えかけてくるのは、間違いなく後者だろう。
ブレゲらしい古典の代表ディテールとして知られるのが、ケース側面に設けられたフルート装飾だ。19世紀のフランスで、金貨の不正回収防止策として施されたギザギザ模様を、アブラアン−ルイ・ブレゲはいち早くケース装飾に採り入れた。別名コインエッジ装飾と呼ばれるのはこのためだが、当時としては非常にウィットに富んだ意匠だったに違いない。帝政様式と呼ばれたこのケースに、後から“猫手のラグ”を溶接したようなスタイリングが「クラシック」の基本。つまり懐中時計から腕時計へと時代が移り変わる、その端境を生きたデザインが「クラシック」の基本だ。他にも“ブレゲ数字”という独特な書体のアラビックインデックスや、“ブレゲ針”と呼ばれるアップルハンドなどはよく知られている。
象徴的なもうひとつのディテールが、ダイアルに施されたギヨシェ装飾だ。まずインデックスサークルやブランドロゴを描く部分の外周線を彫り込み、それ以外の部分にさまざまなパターンの幾何学装飾を彫り込んでゆく。「クラシック 7147」では、メインダイアルにピラミッドパターンの“クル・ド・パリ”、スモールセコンド用のサブダイアルに市松模様の“ダミエ”、細かなドットを打ち込んだミニッツサークルなどの外周に、並行な山型パターンを並べる“リズレ”を施している。圧巻はアワーマーカーのサークル外周とダイアル中央部との境目で、クル・ド・パリとリズレが寸分の誤差もなく隣り合う。彫り込まれたシークレットサインも同社らしい。
12リーニュ(直径27.07mm)に対し、厚さ2.4mmで仕上げられた薄型ムーブメント「キャリバー502.3 SD」を搭載。厚みが増してしまうフルローター式のため、このパッケージングの巧みさは驚異的。パワーリザーブがやや短いが、脱進機効率が高く、精度は抜群だ。 ※写真は18Kローズゴールドモデル。
現代に蘇ったクラシズムの象徴
ブレゲ「クラシック 7147」Ref.7147BB/12/9WU 256万3000円
約45時間のパワーリザーブを持つ薄型ムーブメントを搭載。古典的な帝政様式のケースが目を引くが、中身はシリコン製の脱進機と、同じくシリコン製のヒゲゼンマイを備えた最新スペックとなっている。ゴールド製のダイアルをベースに、精密なハンドギヨシェを彫り込んだうえで、19世紀の懐中時計を思わせる銀色仕上げが施される。自動巻き。18Kホワイトゴールドケース。直径40mm(厚さ6.47mm)。3気圧防水。
問い合わせ先:ブレゲ ブティック銀座 TEL.03-6254-7211 https://www.breguet.com/jp