腕時計の大型催事「TOMIYA 創業祭」から考察する【トミヤ】が90年以上継続する老舗たる理由

創業91年の【トミヤ】は、岡山を拠点に倉敷や広島などに支店を構える国内有数の規模を誇る腕時計正規販売店だ。歴史が裏付ける信頼性やステイタス性から支持を集める西日本の老舗は、毎年7月に「TOMIYA 創業祭」を開催しており、今年は7月7日から10日にかけて行われた。その盛況ぶりを振り返るとともに、地元・岡山に重きを置く経営スタイルについて考察する。

中四国エリア最大級の時計&ジュエリーの祭典が放つ特別感

 

「TOMIYA 創業祭」が生まれた背景については前回お届けした古市社長へのインタビュー記事で触れたため、本記事では割愛させていただくとして、まずは今年の模様をレポートする。例年通り、開催場所は岡山市街を一望できる岡山国際ホテルのイベントスペース「瑞光の間」にて実施。コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてきた状況もあり、連日快晴とはならなかったものの今回も目標の来場者数を上回る多くの人々が訪れた。本来であれば、同施設の外に特別展示された映画『 007 』シリーズの“ボンドカー”として知られるアストンマーティンが来場者の気持ちを高ぶらせるところだが、天候が万全とならなかった点はやや悔やまれる。

“夢の世界”への入り口のような演出がなされたエントランスをくぐった先に広がる「TOMIYA 創業祭」の雰囲気は、まさに空模様とは対照的なものだった。今年のテーマは『祭り』とのことで、楽し気で明るい装飾を施し、トミヤスタッフははっぴを着用するなど、夏祭りをイメージさせる演出がなされ、会場を盛り上げていた。


販売および展示の時計はブランドごとにラインナップされ、久々の出展となったカルティエ、ブレゲ、ブランパン、IWC、ブライトリング、タグ・ホイヤー、パネライ、フランク ミュラーなどは大きなブースを構え、催事ならではの特別感と各々の世界観を表現した装いで来場者を出迎えた。なおブランドからは製品に精通し、最新情報も知る営業担当者らが参加しており、トミヤスタッフを交えて来場者と談笑する姿があちらこちらで見られた。メーカー側と直接話せるこうした機会はめずらしいため、時計への興味がさらに深まったという人もいるに違いない。


“おもてなし”の精神は接客だけでなく地域に対しても

シンボリックな「TOMIYA 創業祭」だけでなく、言うまでもなくトミヤは各店舗においても“おもてなし”の精神を重視した接客で、中四国エリアを代表する時計店として認知されている。消費者との信頼関係こそ、90年を超える継続に繋がる大きな理由であり、リピーターの多さがこれを証明している。

また今回、WATCHNAVI取材班は特別にトミヤスタッフと各ブランドの営業担当者による懇親会にお邪魔させていただき、両者の良好な関係を垣間見る機会が得られた。その会では、トミヤの三代目社長・古市聖一郎さん自ら進行役となって場をあたため、スタッフたちを労う言葉とともに自作のムービーをスクリーンに映し出すなどし、創業祭に取り組むモチベーション向上のための工夫を凝らしていた。さらに会長・古市大藏さん(二代目社長)も登壇され、関係者への謝意を述べつつ、地元に対する想いを次のように語った。

「表町で育ったトミヤは、岡山をもっと輝く街にするために貢献していきたいと考えています。時計とジュエリーを中心としつつ、これからもたくさんの方々に幸せをもたらすあらゆる商材を扱いながら、お客様とはもちろんのことメーカー各社様との繋がりも大切にし、未来を見据えた前向きの企業でありたい。この創業祭も地元の活性化に繋がるものと信じております。そしてスポーツやカルチャー、アートといったものを介して地域に還元していきたいです」


↑スタッフらの懇親会に登壇されたトミヤコーポレーションの会長、古市大藏さん

 

日本各地に地域密着型の時計店はいくつも存在するが、「TOMIYA 創業祭」のようにクローズドイベントとせずに一般客が入場でき、これだけの大型催事を行っている例は数少ない。当然ながら企業であるからして創業祭は営利の一環であるものの、来場者、メーカー、そして岡山との絆においても成功させるべきトミヤの恒例行事となっている。100名規模の従業員を抱える大きな時計店グループであるトミヤだが、そのほとんどは地元採用だと聞く。またJ2に参戦しているプロサッカークラブのファジアーノ岡山FCやバレーボール Vリーグ所属の岡山シーガルズをスポンサードするなど、強い“地元愛”が感じられる。

「老舗」とは、「仕似す(しにす)」という言葉に由来するものとされ、代々の家業を継承することや商売を長年続けていることで信用があることを意味する。老舗トミヤは二代目社長から三代目社長へと受け継がれた理念をさらに発展させ、より地域に貢献できる企業の在り方を示しているように思える。そして創業100周年に向け、ポジティブなビジョンを持って日本の時計市場をリードしてゆくに違いない。

 

<取材・撮影協力>

◆トミヤ タイムアート


TEL:086-235-1038
住所:岡山県岡山市北区表町2-2-60
営業:11:00~19:30
定休日:火曜

取り扱いブランド:パテック フィリップ、ベル&ロス、グランドセイコー、ウブロ、H.モーザー、JPN、タグ・ホイヤー、チューダーなど

https://www.tomiya.co.jp/

 

Text/Yuya Yamaguchi(WATCHNAVI)