クロノグラフのメカニズムを学ぶ【ブライトリング/キャリバー01】分解(後編)
クロノグラフとは、端的にいえば時計におけるストップウオッチ機能のこと。そのムーブメントは多くのパーツを組み合わせた複雑な構造となっており、時計好きやメカ好きの憧れとなっている。本記事では、クロノグラフムーブメントの中でも完成度が高いスイスの高級時計ブランド【ブライトリング(BREITLING)】が自社製造する「キャリバー01」を、前編・後編の2回に分けて解説する。
ブライトリングの完璧を追求する姿勢が生んだ傑作「キャリバー01」
キャリバー01は、クロノグラフの名手とされるブライトリングが創業125周年という節目に生みだした完全自社開発・製造のムーブメント。従来のメインムーブメントであるキャリバー13との比較では、クラッチが振動ピニオンから垂直クラッチへ、制御方式が作動カムからコラムホイールへ、パワーリザーブが約48時間から約70時間になるなど、スペックを大幅に向上させている。さらに、長く使用するための配慮までがなされた設計となっている。
直径:30mm 振動数:毎時2万8800振動 巻き上げ方式:両方向回転 COSC認定クロノメーター。
「キャリバー01」はリセットハンマーや垂直クラッチが優秀
キャリバー01は、計算されたモジュール構造を採用することで整備手順などが合理化され、オーバーホール作業中のミスなどのリスクの軽減も実現している。また、熟練の修理士でないと調整が難しいリセットハンマーの組み付けは、特許取得の調整不要機構を取り入れて解消しているほか、日付調整禁止の時間帯をなくす機構を備えるなど、数々のアイデアが詰め込まれている。さらに、GMT表示やスプリットセコンドクロノグラフを追加した派生型ムーブメントも開発。さらなる進化も期待されている。
【キャリバー01のケースバック側】
◆時クロノグラフ車:時積算計を司る時クロノグラフ車。動力源はクロノグラフランナーで、キャリバー01の場合は中間車に重ねられた上部歯車が、時積算専用の中間車2枚を経由して、動力を時クロノグラフ車に伝えていく。
◆分クロノグラフ車:分積算計を司る分クロノグラフ車。その動力源は1分間に1回転するクロノグラフランナーである。クロノグラフランナーのフィンガーが1分間に1歯、中間車を介して動力が分クロノグラフ車に伝わる。
◆秒クロノグラフ車:いわゆるクロノグラフランナー。クロノグラフ計測の起点となる歯車であると同時に、秒積算を担う歯車でもある。キャリバー01では垂直クラッチが組み込まれている。
◆ハートカム:各クロノグラフ車をゼロに戻すためのパーツ。リセットハンマーが叩く際、どの向きにあっても帰零するようにハートの形になっている。
※自動巻きのローターやモジュールを取り外した状態。写真では上が時計の6時側となる。
ブライトリングの技術者は、キャリバー01を次のように評価する。
「クロノグラフ特有の調整を不要としているのが秀逸です。とくに特許を取得した自動センタリングハンマーや形状記憶合金を用いた30分計歯車の規制バネなど、新技術が導入されています。これらは他で見られない工夫といえるでしょう」
シビアな調整が必要とされるポイントは、技術革新で解消しているキャリバー01。機械式クロノグラフムーブメントにおけるベンチマークとして、揺るぎない存在感を放っている。
キャリバー01搭載モデル
ブライトリング「クロノマット B01 42 ジャパン エディション ブラック マザー オブ パール」 Ref.AB0134101B3A1 132万円
航空クロノグラフとしてのルーツを持ち、現在ではあらゆるシーンに似合うマルチパーパスな実用的スポーツウオッチとして2020年に誕生。ラグとブレスレットの間に段差のないスマートな一体型デザインが特徴で、逆回転防止ベゼルや余裕のある防水スペックなども魅力となっている。
スペック:自動巻き(自社製Cal.01)、毎時2万8800振動、約70時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ15.1mm。200m防水。日本限定発売。
問い合わせ先:ブライトリング・ジャパン TEL.0120-105-707 https://www.breitling.com/jp-ja/
※撮影に使った分解ムーブメントは修理トレーニング用のデモ機。価格は記事公開時点の税込価格です。本記事は『ウオッチナビ Vol.88』より抜粋・編集しています。
Text/長谷川 剛(TRS) Photo/岸田克法