1世紀ブランドを徹底解説【カルティエ】世界初の紳士用腕時計「サントス」や「トーチュ」を誕生させるなど独自の美意識と確かな技術で栄華を誇る
時代の変化や流行に流されず、一貫してクオリティを提供する時計ブランドには、創業から1世紀を超える存在も少なくない。とりわけ機械式時計に対するこだわりの強いブランドは、ユーザーが求める厳しい基準を満たして信頼や安心を獲得してきたからこそ、現在の地位を確立しているのだ。本連載では、1世紀以上の歴史を持つ10の名門をピックアップ。第4回となる今回は、世界初の紳士用腕時計である「サントス」を生んだ【CARTIER(カルティエ)】を解説する。
装飾性と実用性を兼備する高級時計界のパイオニア
イギリス国王エドワード7世が「王の宝石商、宝石商の王」と称えたカルティエは、1847年、ルイ=フランソワ・カルティエによってパリにて創業された。当初から高品質な宝石細工が評判で、その後、息子アルフレッド・カルティエの参画をきっかけに、繊細な手仕事を得意とする背景やグリニッジ標準時が導入(1847年)されて時計の需要が高まっていた理由から、時計製造をスタートさせた。
転機のひとつが、1904年に開発した傑作時計「サントス」の存在だ。アルフレッドの一人息子であるルイ・カルティエが、ライト兄弟と並び称される飛行界のパイオニア、アルベルト・サントス=デュモンと親交があり、彼の「操縦桿から手を離すことなく時間が読み取れ、堅牢性にも優れた腕時計」というオーダーを受け、世界初の紳士用腕時計「サントス」を完成させた。飛行船でエッフェル塔を一周(1901年)するなど、空の冒険家だったアルベルト・サントス=デュモンは、同時に当時の社交界のファッショニスタとしても知られており、彼の期待に応えた「サントス」は、まさに機能においてもデザインにおいても革新的な腕時計だった。
その後、ルイは3代目としてカルティエを継ぎ、1917年には戦車にインスピレーションを得た「タンク」を、発展型の「タンク サントレ」や「タンク アシメトリック」も手掛けた。そして1932年発表の「パシャ」も同様である。現在カルティエでは、これらの歴史的アーカイブを元にモダンな解釈と最新機能を与え、「サントス ドゥ カルティエ デュアルタイム」のような優れた現行コレクションを続々と輩出している。
ルイ・カルティエはまた、ジュエリーデザインにおいても才能を発揮し、カルティエの象徴といえる豹のモチーフを1914年に初めて採用した。ダイヤモンドとオニキスで見事なまでに豹紋を描いた「パンテール」ウオッチの登場は、まさにジュエリー界におけるパラダイムシフトだった。
そして近年、カルティエはウオッチの更なる拡充やハイエンドピースのマニュファクチュール化を目的に、次の世紀を見据えたファクトリーをラ ショード フォンに、実験・開発を行うイノベーションラボをヌーシャテルに設立。卓越した技術や傑出したデザインを受け継ぐ、万全の環境を整えている。
《カルティエ主要コレクション》
モダンデザインの新世代サントスに控えめな第2時間帯表示をプラス
カルティエ「サントス ドゥ カルティエ デュアルタイム」 Ref.CRWSSA0076 145万2000円
2024年春に発表されたデュアルタイム仕様。エレガントなグレーフェイスに、第2時間帯表示のスモールダイアル、アプライドのローマ数字インデックスを配する。付属するブレスレットとアリゲーターストラップのいずれにも「クイックスイッチ」交換可能システムを搭載。
スペック:自動巻き(SW330ベース)、毎時2万8800振動、約42時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース&ブレスレット。縦47.5×横40.2mm、厚さ10.1mm。10気圧防水。
上陸50周年記念の日本限定モデル
(左)カルティエ「パンテール ドゥ カルティエ」日本限定モデル Ref.WGPN0044 369万6000円
エレガントなダイアルに、ルイ・カルティエ個人のアーカイブから発見された壁紙のモチーフをあしらう。この幾何学模様を彷彿とさせる、柔軟さと高級感を両立したパンテールブレスレットをセット。リューズのスペサルタイトガーネットカボションが存在感を放つ。
スペック:クオーツ。18Kイエローゴールドケース&ブレスレット。縦30.3×横22mm、厚さ6mm。日常生活防水。日本限定150本。
(中)カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」日本限定モデル Ref.CRWGSA0101 620万4000円
華やかなイエローゴールド外装の表面にサテン加工を施し、グレイン仕上げのマットなグレーダイアルを合わせ、趣きを持たせた日本限定50本モデル。定番のローマ数字インデックスは、光沢のあるアプライド仕様だ。多角形のリューズにサファイアカボションをセット。
スペック:自動巻き(Cal.1847MC)、毎時2万8800振動、約40時間パワーリザーブ。18Kイエローゴールドケース(シースルーバック)&ブレスレット。縦47.5×横39.8mm、厚さ9.38mm。10気圧防水。日本限定50本。
(右)カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」日本限定モデル Ref.CRWSSA0078 174万2400円
日本限定220本のモノプッシャークロノグラフ。本機も光沢のあるアプライドインデックスを配したグレイン仕上げのマットグレーダイアルを用い、秒計測用の目盛りはサファイアクリスタル風防に。リューズに象徴的なブルーシンセティックスピネルカボションを備える。
スペック:自動巻き(Cal.1904-CH MC)、毎時2万8800振動、約47時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。縦51.3×横44.9mm、厚さ12.4mm。10気圧防水。日本限定220本。
《カルティエ注目の復刻モデル》
1912年のデザインを現代に。名作「トーチュ」
カルティエは女性の社会進出をはじめ、貧困に苦しむ地域の人々の生活支援、若い起業家たちの事業サポートなど、多岐にわたる社会貢献活動を展開してきた。影響力の大きい世界的なメゾンとして、社会的に意義のあるミッションに真摯に向き合っている。もちろん、時計製造においても、精力的な商品開発を行っており、近年では、ルイ・カルティエが1912年にデザインした名作「トーチュ」を再び世に送り出し、時計業界内外で大きな話題を呼んだ。フランス語で“亀”という意味を持つ、この時計は亀の甲羅のように滑らかなカーブを描く優雅なトノー(樽)型のケースを特徴とし、カルティエ独自の美意識を体現するコレクションとして知られている。
ワンプッシュクロノグラフを搭載
かつて、「CPCP(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ)」という特別なコレクションから、ワンプッシュクロノグラフを搭載した「トーチュ」が登場し、瞬く間にコレクター垂涎の逸品となった。復刻版となる「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」は、その伝説的な系譜を継ぎながらも、ケースサイズとムーブメントを刷新。43.7mm×34.8mm、厚さ10.2mmのスリムなボディに新開発の自社製クロノグラフムーブメント、キャリバー1928 MCを搭載する。通常のクロノグラフでは複数のプッシュボタンが設けられるが、本機はリュウズと同軸のプッシュボタンひとつで、スタート、ストップ、リセットの全ての操作をこなすモノプッシャー式が採用されている。
文字盤の表面には、独特のざらつきを持つグレイン仕上げを施し、光の反射を抑え、視認性を高めるだけでなく、アンティーク時計のような温かい表情を演出。外周を彩る古典的な鉄道の線路を思わせるレイルウェイミニッツトラック、細くスッキリと印字されたローマ数字のインデックス、先端が丸くくり抜かれたブルーのブレゲ針など、細部にわたる徹底したこだわりも本機の見どころとなる。
シンプルながら洗練された装いの2針モデル
2針モデルの「トーチュ」も展開されており、こちらも「トーチュ」の特徴的なケースデザインを踏襲しつつ、サイズは41.4mm×32.9mm、厚さは7.2mmとクロノグラフよりややサイズダウン。内部にはカルティエの自社製となる自動巻きムーブメント、キャリバー430MCを搭載する。この2針モデルは、機能美を追求しつつも、より純粋な時計の美しさを求める人々にとって、魅力的な選択肢となるだろう。
カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」 Ref.CRWHTO0008 897万6000円
スペック:手巻き(Cal.1928 MC)、毎時2万8800振動、約44時間パワーリザーブ。プラチナケース(シースルーバック)、レザーストラップ。縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm。日常生活防水。世界限定200本。
カルティエ「プリヴェ トーチュ」 Ref.CRWGTO0006 488万4000円
スペック:手巻き(Cal.430MC)、毎時2万1600振動。約38時間パワーリザーブ。18Kイエローゴールドケース、レザーストラップ。縦41.4×横32.9mm、厚さ7.2mm。日常生活防水。世界限定200本。
問い合わせ先:カルティエ カスタマー サービスセンター TEL.0120-1847-00 https://www.cartier.jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
◎本記事は『ウオッチナビ 2024 Autumn Vol.95』より抜粋・編集しています。
Text/WATCHNAVI編集部、三宅裕丈 撮影/高橋敬大