国産最高峰ブランド【グランドセイコー】の人気の秘密は卓越職人の技にあった!~前編~

いまや世界を賑わすグローバルブランドとなった日本の誉れ「グランドセイコー」。このブランドがなぜ国産最高峰であり続けるのか、その秘密を探るべく、岩手県雫石にある工房を取材しました。
グランドセイコーの「最高峰への探求の姿勢」を体現する、職人の卓越した技術力や工房内のシステムなどを、キーワード別に早速ご紹介します!

世界に誇る工房と先進的な製造工程がGSの矜持を体現

時計製造の第一歩は、まずはパーツ製作からスタートされます。マニュファクチュールであるグランドセイコーにとってムーブメントを構成するあらゆる部品を自社製造するのはもちろんですが、厳格を極めるのはその徹底した品質基準の管理。時計の精度や耐久性を確保するためには、熟練職人の卓越した組み立て・調整技術だけでなく、その前提として部品の「設計と寸分たがわぬ工作精度」が絶対条件となります。

パーツ製造の職場内では、その条件を満たすため、コンピュータ制御の超細密加工機器が数多く導入される他、MEMSなど同社独自の半導体製造の応用技術が採り入れられ、部品を極限の正確さや強度、耐久性で製造。各工程には専任の技術者が配置され、仕上がり精度が検査されています。

部品の製造が完了すると、地板やローターなどへグランドセイコーの個性を際立たせる、流麗な装飾紋様やストライプなどが施されます。最後にアンクルに爪石をセットしたり、ひげゼンマイをテンプの中心部に溶接、地板の軸受け部に石を設置するなどサブアッセンブリが行われ、組み立て・調整工程へと移されます。

KeyWord①:霊峰岩手山

雫石高級時計工房の窓からは、岩手県のシンボルのひとつとされる岩手山の全貌を眺めることができます。グランドセイコーには、この山肌をイメージした微細な紋様をダイアルに表現したモデルも存在し、角度によって異なる表情を見せる仕上げとして「岩手山パターン」と呼ばれ、人気を博しています。

八幡平地方を代表する名山のひとつ。標高2038mで、岩手県最高峰を誇る。なだらかな裾野と険しい稜線が織り成す美しい山容が特徴で「南部片富士」とも呼ばれる。

KeyWord②:世界有数のマニュファクチュール

原生林に囲まれた静逸な環境のなかに創設された工房内では、世界でもトップレベルの設備・テクノロジー・機器・陣容でグランドセイコーの時計が製造されています。膨大な敷地内には各工程がフロアや棟ごと、作業内容に応じて効率良く配置されています。

正面入り口を入ると、1階ロビーには同社が製造するムーブや時計の解説展示、工房オリジナルモデルの直売所などが設置されている。

 

クリーンルームで行われる組み立て・調整作業。厳格なGS規格に合致するよう、各パーツは幾度も調整を重ねながら組み上げられていく。

 

歯車の製造工程。潤滑油で摩擦を減少させながら、コンピュータに設定された通りの形状や大きさに製造される。

KeyWord③:1/1000mm

CADやCAMシステムを使った超細密加工技術が導入され、グランドセイコーが誇る「世界最高水準の精度」を持つメカニカルウオッチの根幹を支えています。ここではまた、時計製造に必要な治工具や金型までも自社製造されています。

微細な軸部品や歯車は、専用の研磨機でブラッシュアップ。専任の技術者により、仕上がり精度は1/1000㎜単位まで厳格に管理される。

①~③は地板の製造工程。円盤状の金属塊の表と裏を交互に切削しながら、複雑な形状に地板を作り出します。

KeyWord④:相伝される美意識

一見するとただの溝を刻んだストライプ紋様に見えますが、微細に見ると溝部分は滑らかな傾斜を描くように刻まれています。「どんな角度から見ても美しく見える」そんな、ユーザーのための細やかな配慮と工夫が、グランドセイコーのディテールには伝統的に施されています。

 

専用の装飾加工用旋盤機で、溝の傾斜角や間隔などを均一に保ちながら紋様が刻まれていく。

 

シースルーバックから眺めることができる紋様の美しさは、ユーザーに審美に満ちた時計を所有する充実感を与えてくれる。

 

KeyWord⑤:MEMS

MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略で、半導体などの超精密部品製造に用いられるハイテク技術。グランドセイコーではこの技術を応用して、極めて工作精度が高く、摩擦の少ない滑らかな表面と、高い硬度を持つパーツを各種製造しています。

MEMS技術により製作されたCal.9S85のガンギ車とアンクル。微細な加工が可能なMEMSによりパーツ表面の滑らかさが向上しただけでなく、肉抜き加工によって軽量化も実現。

 

超細密加工技術やハイテク技術の導入により、どんな角度から見ても美しく見える時計の仕上がりを実現したグランドセイコー。後編では、3タイプのムーブが選べる多様なコレクションなどをご紹介。お見逃しなく!