陸・海・空 人は腕時計でサバイブできるのか!? 【空編】宇宙空間で人命を救ったオメガのクロノグラフ「スピードマスター」
時間を知ることは生きていくうえでとても重要なことです。では、時間さえわかれば人は過酷な環境下でも生き抜いていくことができるのか? そんな疑問を、いかなる環境でも「正確な時間を報せる」ことを宿命づけられた時計にまつわる3つのエピソードとともに、ひもといていきます。
パイロットの運命を分けた〝14秒間〞のエンジン噴射
アポロ11号による人類初の月面着陸に携行された偉業と並ぶスピードマスター伝説。それが、「最も成功した失敗」と呼ばれるアポロ13号の逸話です。
NASAの「アポロ計画」は、月に有人宇宙船を着陸させることが目的でした。アポロ13号も月にあるフラ・マウロ高原を目指し、1970年4月11日に地球を出発しています。しかし、打ち上げから55時間55分後に機械船の酸素タンクが爆発。電力と酸素の供給は低下し、アポロ宇宙船は次第に機能を失っていったのです。
パイロットの3人はヒューストン管制センターからの指示で、月着陸船アクエリアス号へと避難。このときより、アポロ13号の目的は「月着陸」から「地球への生還」となりました。
あらゆる計器の表示が頼りにならない危機的状況で、管制センターは「通信装置以外の電源を切る」という決断を3人のパイロットに指示。空気も水も制限されてなおパイロットは、船体の角度や姿勢について100分の1単位のやりとりを管制センターと行い、着々と地球への帰還方法の体制を整えます。
アポロ13号の帰還には、アクエリアス号を救命ボートとする方法がとられました。具体的には、同号が月着陸用に備えていた大きなエンジンを使って宇宙船をより高速に推進し、月の裏側を回って通常の自由帰還軌道に乗るという方法です。ただし、その軌道に乗るためにパイロットは管制センターから指定された時間に、正確に"14秒間"エンジンを噴射しなければならなかったのです。
通信手段以外の電源をすべて落とした船内では、時間を計る電子機器はありません。そこでパイロットが頼りにしたものこそ、彼らが身に着けていたオメガの腕時計「スピードマスター」だったのです。
1秒でもズレが生じれば確実に宇宙の彼方へと消えてしまったであろうアポロ13号は、スピードマスターのおかげで無事に自由帰還軌道に乗ることができ、太平洋に着水。3名のパイロット誰1人欠けることなく、地球への生還を果たしました。そして、この出来事を経てスピードマスターはNASAより栄誉あるスヌーピーアワードを授与されることになったのです。
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