時計史を見守った老舗が語る「平成」――天賞堂、カミネの見た時代の変遷
時計史を見守った老舗「天賞堂」と「カミネ」に、“平成”を振り返ってもらいました。
「本格ブランドを身に着けるようになった平成の女性たち」(天賞堂)
「平成の時代はケースサイズの変化が顕著に表れました。特に15年ほど前から、多くのメーカーから毎年のようにビッグサイズが発表され、最終的には懐中時計サイズにまで大型化。でも、ここ2~3年は、縮小傾向にあります。一方で、価格上昇も著しく、いまやSSでも100万円超えは当たり前の時代になりました。
私が時業業界に入った頃は『腕時計は薄く小さくするのに技術力が必要で、ゆえにスイス一流ブランドは高額』と言われてきました。世界的な素材高騰や技術の進化に合わせて、今後も価格は上昇していくと思いますが、昨今のケースサイズや価格のバランスを見ると、なんとなく矛盾を感じることもあります。
また平成の女性は、いわゆるファッション系ブランドではな く、本格的な時計ブランドを身に着ける方が増えてきました。 日本ではどの年齢層でも、それなりの時計ブランドを身に着けているし、複数本所有している 方も多く、諸外国に比べ時計に造詣が深いのも当然でしょうか」(天賞堂 銀座本店 係長・備前良太さん)
「時間を“見る”時計から 個性を“見せる”時計へ」(カミネ)
「平成に発売された時計で、特に印象に残っているのは、フランク ミュラーのコンキスタドールと、まったくの無名から短期間で人気が出たパネライのルミノール マリーナ、そして最高のコストパフォーマンスを誇るクロノマット 44 (ブライ トリング)です。
平成の間に、時計市場は時計 =『時間を見る』から、ファッションや個性を表現するアイコンとして『見せる』ものに変化しました。時代ごとに潮流やトレン ドは変わりますが、平成はまさに腕時計のルネッサンス期。ひとことで言い表すなら『Progressive=進歩』です」(カミネ クロノメトリー店長・魚住哲也さん)
天賞堂
1898年に日本で初めてオメガを輸入し、1913年には ゼニスなどの日本総代理店 としては舶来時計の普及に努めてきた老舗名店。現在 も約20の名門ブランドを 扱う他、オリジナルウオッ チも積極的に展開中。
カミネ
港町・神戸で1世紀以上の歴史を持ち、個性的な5店舗を展開する正規時計宝飾店カミネ。そのなかでクロノメトリー店は、エントラ ンスの位置づけを担い、ス イス時計の素晴らしい世界を幅広く伝え続けている。