稀代の天才時計師が考案した、驚天動地の機械仕掛け――トゥールビヨン・ヒストリー

時計の機械部品は、地球上では常に重力の影響を受けています。その重力の影響を平均化(均一化)するための装置が、トゥールビヨンと呼ばれるハインコンプリ機構です。今回は、機械式時計が誕生した14世紀以降、500余年の間、誰も思いつかなかった革新機構「トゥールビヨン」の歴史をご紹介します!

 

超高級コンプリとして主にハイブランドが製造

ブレゲは、トゥールビヨンの生みの親。写真は、ブレゲ クラシック トゥールビヨン・メシドール 1972万800円/Ref.5335PT/42/9W6

トゥールビヨンの起源は古く、1795年のアブラアン-ルイ・ブレゲの発明がそのルーツ。ただ、その設計理論は確立されても、実際の製造は困難を極め、製品化されたのは1805年のことです。

生前のブレゲは合計35本のトゥールビヨンを完成。他のブランドもそれに追随しましたが、製造には①微細な専用部品の開発、②キャリッジ全体の絶対的な軽量化、③特殊な調整技術が要されるため、製品例はごく少数となっています。

調速・脱進機構を収めた「キャリッジ」。一般的にはその構造上1分間で1回転するため、秒目盛りを描いて秒針として利用されることもある(写真のモデルは秒目盛りを不採用)

腕時計の時代を迎えた1900年代中期になると、一部のブランドが特別モデルなどで腕時計トゥ ールビヨンを製造。市販モデルとしては、 80年代にブレゲが販売を開始。その後、2000年代以降は、主にマニュファクチュールがその技術力を誇示すため積極参入しました。 2つのキャリッジを備えたモデル や、3次元回転する発展系モデルなども、多彩に発表されています。

1812年に製造されたトゥールビヨン・ポケットウオッチN°2567。開閉式の裏蓋を開けると、キャリッジ部が眺められる構造になっていた

 

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