正確無比な時の表示と優美な回転。それはまるで繰り返す天体のよう――TOKYOタイムピース(ジャガー・ルクルト)

東京の風景とともにハイエンドウオッチを愛でる連載「TOKYOタイムピース」。今回は、スイス随一のマニュファクチュールブランド(ムーブメントから自社一貫製造を行っているブランド)であり、複雑機構の名手でもあるジュウ渓谷のトップメゾン「ジャガー・ルクルト」による渾身のトゥールビヨンウオッチを取り上げる。

構成/ウオッチナビ編集部 文/小暮昌弘
撮影/シバサキフミト スタイリング/石川英治(TRS)

ジャガー・ルクルト「デュオメトル・スフェロトゥールビヨン・ムーン」Ref.Q6086420 価格要問い合わせ/ひとつは時刻表示、もうひとつは複雑機構を作動させるためにそれぞれ別の輪列を持つ「デュオメトル」構造を持つトゥールビヨン。その装置のゲージに20°の傾斜をつけた軸を追加した立体駆動トゥールビヨンが、優美な時の調べを奏でる。時計があらゆるポジションにおいても正確に時を刻むことはもとより、立体的に回転するその様は、他のどれにも代えがたい魅力を持つ。手巻き。プラチナケース。直径42mm。5気圧防水

時計の中にもうひとつの地球を見る

“人は芸術品になるか、さもなくば、芸術品を着なければならない”―― これは19世紀に活躍した作家オスカー・ワイルドの言葉である。『幸福な王子』『ドリアン・グレイの肖像』などの名作を書いただけでなく、ダンディとも知られ、ファッションに関する名言も多数残した。また紳士の服が黒一色の時代に、鮮やかなベルベットの上着、膝丈のトラウザーズという耽美的な衣装で周囲の度肝を抜いた人物でもある。そんな耽美主義者の心を揺さぶるような時計が、名門ジャガー・ルクルトの「デュオメトル・スフェロトゥールビヨン・ムーン」だ。

2015年に発表されたモデルで、同社は天文学に関する知識と発明の才でこの時計を設計した。重力の影響やムーンフェイズの誤差などを精査し、独自の解決策を探し当て、時計の精度を高めた。一般的なムーンフェイズの場合には2年半に1日の誤差が生じるというが、このモデルは適切にムーンフェイズが調整されていれば、3887年間に渡ってその精度が維持される。

地球の地軸に近い約20°の傾きを持たせたスフェロトゥールビヨンは、まさに芸術品だ。悠久の時を刻むだけでなく、芸術品としての価値を持った時計、耽美主義者のワイルドもきっと身に着けたかったことだろう。

 

問:ジャガー・ルクルト TEL.0120-79-1833
https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp