ウオッチナビ注目のクロノグラフ――針飛びを抑える「グランドセイコー」の高度な技術

腕時計型のクロノグラフが誕生してから100年余年となる。これまでに数々の関連技術が生み出されて進化してきたが、そのなかでも歴史的な偉業を成し遂げたクロノグラフをルーツに持つ、現代のマスターピースを時計専門誌・ウオッチナビが選び出し、解説する。まずは国産時計の雄、「グランドセイコー」の最上級クロノグラフをピックアップ。

「グランドセイコー スポーツコレクション スプリングドライブ 20周年記念限定モデル」
ゼンマイのほどける力を動力源に水晶振動子やICで精度を制御するスプリングドライブは、実は耐衝撃性も優秀。その利点を生かしてスポーツモデルに仕上げた世界500本リミテッド。たてがみを想起させる文字盤や爪に見立てたラグなど、ブランドを象徴する獅子を力強く表現した

 

計測スタート時の針飛びを解消する垂直クラッチを採用

セイコーの計時技術の大きな転機となったのは、1964年の東京五輪である。日本で開催されるオリンピック公式時計を国産ブランドで担当すべく、セイコーは急ピッチで計時機器の開発に取り組んだ。既存のストップウオッチでは計測時に機械的誤差が生じたのに対し、この誤差をなくす機構を開発。例年の海外メーカーを抑えて公式計時の座をつかんだ。

その後も72年の冬季札幌オリンピック、92年のバルセロナ大会など、計6大会でオフィシャルタイムキーパーを担当。その過程で培った高い技術力で市販クロノグラフの開発に取り組み、1969年5月に自動巻きクロノグラフを発売する。同年、スイスからもクロノマチックやエル・プリメロが登場したが、技術的に難しい日付・曜日表示を同時搭載した点でセイコーは世界初の快挙となった。

垂直クラッチを組み込んだ世界初の自動巻きクロノグラフ「セイコーファイブ スポーツ スピードタイマー」

だが、時計史に与えた影響が大きいという意味で、より注目すべきは皿バネを使った垂直クラッチの考案だろう。これにより動力伝達時の針飛びをなくし、高精度な計測が可能になった。

2007年に完成した、独創の駆動方式スプリングドライブ初のクロノグラフは、さらに改良を加えた垂直クラッチを採用。それはゼンマイで駆動する、最も高精度なクロノグラフだった。

【垂直クラッチの構造】1969年以前の標準機構だった水平クラッチは針飛びを起こしやすかったが、垂直クラッチ(1)は歯車のかみ合わせがないため、基本的に針飛びは起らない。計測スタート前(2)は、両側から青いツメが入って上下が切り離されているが、スタート後(3)は、そのツメが引いて上下がくっつき、動力が伝わるようになる

 

「グランドセイコー スポーツコレクション スプリングドライブ 20周年記念限定モデル」Ref.SBGC231 151万2000円/自動巻きスプリングドライブ(自社製Cal.9R96)。72時間パワーリザーブ。コラムホイール。垂直クラッチ。ブライトチタンケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径44.5mm、厚さ16.8mm。20気圧防水

 

問:グランドセイコー専用ダイヤル TEL.0120-302-617
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