ブランドが威信をかけて放つ機械式の真骨頂!2017新作コンプリケーションを吟味

時計愛好家の皆さんが新作時計で気になる話題といえば、複雑時計は欠かせないでしょう。今年発表された中にはいったいどのような時計があったのか、改めて最新コンプリケーションを見てみましょう。

戦略価格のトレンドは複雑時計にも!

今年の複雑時計は、全く新しい超ド級のコンプリケーションというのは少なかった印象。その代わり、限られたスペースを無駄なく活用し、いかに実用性を持たせるかという点にこだわったモデルが目立ちました。複雑時計にも迫り来る戦略価格というトレンドの中で注目すべきは、革新機構に対する価格とのバランス。昨年はタグ・ホイヤーが200万円以下のトゥールビヨンを発表しましたが、今年もブルガリ、ゼニス、ブライトリングも、それぞれの道を極めた機構を現実的なプライスで作り上げてきました。こうした戦略価格の複雑系は、今後も増えていきそうな予感です。

驚異の技術力を発揮して
自動巻きの世界最薄記録を更新

↑ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック」167万4000円/Ref.102713/自動巻き/3気圧防水/直径40mm、厚さ5.15㎜

毎年のように世界最薄記録を塗り替えてきたブルガリが、今年は自動巻きで新記録を樹立。新開発のCal.フィニッシモ オートマティックは、わずか2.23㎜の厚みにマイクロローターを組み込むだけでなく、60時間ものパワーリザーブを達成しています。ケース自体の厚みも5.15㎜にまで抑えているほか、110面カットケース素材にチタニウムを採用し、驚くほどの軽さを実現! サンドブラッシュ仕上げが施されたマットなチタニウムケースは、従来にない存在感を放ちます。

3万6000振動と36万振動が
共存するエル・プリメロの発展型

↑ゼニス「デファイ エル・プリメロ21」124万2000円/Ref.95.9000.9004/78.R582/自動巻き/10気圧防水/直径44㎜、厚さ14.5㎜

ゼニスが誇る世界唯一の量産型ハイビートキャリバー、エル・プリメロに進化型が登場。Cal.9004は、毎時3万6000振動で正確に時を刻みながら、クロノグラフ作動時には別の動力を持つエスケープメントが瞬時に起動。毎時36万振動という超ハイビートで1/100秒計測を実現します。センターの極細針が高速回転しながら60秒と30分を積算計測。このほかに非スケルトン仕様も用意されています。

クロノグラフの上位機構を
自社開発する悲願を達成!

↑ブライトリング「ナビタイマー ラトラパンテ」138万2400円/Ref.A031Q15WBA/自動巻き/3気圧防水/直径45㎜、厚さ15.73㎜

機械式時計の四大コンプリケーションに数えられるスプリットセコンド(=ラトラパンテ)・クロノグラフの自社開発を達成した、歴史的な一本。Cal.B03には、スプリット針の操作を行ってもテンプの振り角を落とさず、計測精度に影響を及ぼさない2件の特許技術を実装しています。価格も極めて現実的なラインで、長く欠番となっていた分だけこだわりが詰まった、圧巻の複雑時計です。

複雑機構を優雅に搭載した
最高峰ブランドの面目躍如

↑ブレゲ「マリーン エクアシオン マルシャント 5887」2514万2400円/Ref.5887BR/12/9WV/自動巻き/10気圧防水/直径43.9㎜、厚さ11.75㎜

パーペチュアルカレンダー、永久カレンダー、トゥールビヨンを集約したグランドコンプリケーション。通常の時針で平均太陽時を、太陽をかたどった針で真太陽時を示します。その機構の要となるのは、トゥールビヨンと同軸にセットされた、いびつな円形ディスク。日付はレトログラード式のポインターデイトになっており、7時から8時にかけてパワーリザーブインジケーターも備えます。文字盤に施されたギョシェに加え裏面にも緻密なエングレーブを採用し、フランス国王海軍の戦艦姿などで時計の世界観が表現されています。

加工精度の困難さでは今年No.1!
次世代パーツ製造のあり方を提示

↑パテック フィリップ「アドバンストリサーチ アクアノート・トラベルタイム5650」694万4400円/Ref.5650/自動巻き/12気圧防水/10時-4時方向:40.8㎜、厚さ11mm

スポーツエレガンスを体現する「アクアノート」のトラベルタイムをベースにした、世界限定500本の革新モデル。ヒゲゼンマイの内端側に膨らみを持たせて精度の重力姿勢差を緩和し、平均日差を-1秒から+2秒以内の調整が可能になりました。さらに上下のプッシャーでスムーズに時刻合わせが行える「トラベルタイム」機構も、最先端の3D設計と素材加工によって発展させています。

 

オールマイティーに使用できるシンプルな時計が流行している昨今ですが、芸術的ともいえる複雑機構の機械式時計は、やはり愛好家ならつい目を留めてしまうもの。これからも技術の進歩と共にどのような発展を続けていくのか、期待が高まります。