マテリアルを自在に操るオメガ 60周年記念「スピードマスター」のベゼルに息づく匠の技

セラミックの採用が広がるなど、時計の“マテリアル面”でのイノベーションが著しくなっている昨今。その中でもオメガは、さまざまな素材を使用することで堅牢製や美しさの向上を行い、毎回驚きのニュースを届けています。60周年を迎えた「スピードマスター」の新作にも採用されている超合金・リキッドメタル&セラミックを世界で初めて取り入れたのも同社なのです。

数々の素材革命を成し遂げてきたオメガ

オメガが初めてセラミックにリキッドメタルを組み合わせた腕時計を世界に発表したのが2009年。二重ケースによる対策が一般的だった耐磁性では、2013年、ムーブメント自体を非磁性素材にする新発想で大成功を収めました。その翌年には、ゴールド、銅、パラジウムの3つの元素を配合した「セドナゴールド」を発表。美しい色味を長く維持することができる新合金の誕生で、伝統的な貴金属の改良も達成しています。このように、新素材を適材適所へと活かしていくオメガはまさに“マテリアルの匠”なのです。

↑オメガ「スピードマスター レーシング マスター クロノメーター」97万2000円/Ref.304.32.44.51.01.001/自動巻き/50m防水/直径44.25㎜

カーレーシングの歴史を象徴する「スピードマスター」の分目盛りのデザインが、60周年となる2017年に復活を遂げた新作「スピードマスター レーシング マスター クロノメーター」。18Kホワイトゴールド製のアプライドインデックス、オレンジのアクセントカラーが絶妙です。ベゼルには光沢のあるセラミック&リキッドメタルのタキメーターを採用しています。

リキッドメタルとはジルコニウム等から成る合金。溶解温度が低く、加熱すればプラスチックのように簡単に加工できるうえ、冷却すると硬度はステンレススティールの3倍にもなります。

従来は、数字や目盛りをアルミのベゼル表面に施していましたが、このリキッドメタルの特性を利用すれば、それらをセラミック製ベゼルの溝に記すことが可能に。外部からの損傷で、タキメーター目盛りが消えることもありません。

シリコン製ヒゲゼンマイやニヴァガウス製天真(右)を使った自社製Cal.9900は、スイス連邦計量・認定局(METAS)が認めたマスター クロノメーター。完成状態での高精度や1万5000ガウスの強耐磁性を誇ります。

 

航空業界や医療現場などで開発されるハイテク素材は、時計作りにおいても積極的に取り入れていくことが業界の潮流となっています。オメガは時代の最先端テクノロジーを駆使した時計作りを一貫して行っているので、これからも異色素材を採用した他社とは一線を画すようなモデルを発表していくかもしれません。

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