GT(=伊語:グランツーリスモ)という言葉は通常、長距離を快適に走行できるクルマを指す。余裕あるパワー、乗り心地の良さ、運転疲労の少なさ、走行安定性といった要素においてドライバーの負担を軽減するための技術が駆使されており、ざっくり「心地よく走れる」グレードといえる。そんなGTの名を冠する腕時計を、スイスの高級時計ブランドであるパルミジャーニ・フルリエが発表した。最新作「トンダ GT」は、最も展開数の多いコレクションである「トンダ」に加わる新型。GTと名付けた真意について、実機インプレッションと共にお伝えする。
長く使いたくなる心地よいハイエンドデイリーウオッチ
実はこの新作、7月時点で発表されているので耳の早い時計好きならばすでに知っている人もいるだろう。ではなぜ、WN編集部がこの時期にレポートするのかというと、それはプレス向けのプレビューが11月下旬になってようやく行われたから。聞けば、すでに少なくない反響があるそうで、既存コレクションとは異なるモデルとなる可能性を感じているとのこと。
正直なところパルミジャーニ・フルリエは、日本での展開店舗数は多くないし、価格帯も百万円台以上からと安くもない。そのような状況でも評判が良いというのだから、実際に見ないで書くわけにはいかないだろう。
さて「トンダ GT」は、ご覧の通り昨今の高級時計界のトレンドデザインとなっている「ブレスレット統合型」の外装設計が採用されている。やや乱暴なセグメント分けをすれば「ラグジュアリー・スポーツウオッチ」といってもいいだろう。
発表されたのはビッグデイトを持つ3針仕様の基本モデル「トンダ GT」と、アニュアルカレンダー+クロノグラフという機能が組み合わさった「トンダグラフ GT」の2つのタイプがある。
ケースの形状は、2017年のジュネーブウォッチグランプリ(=GPHG)のクロノグラフ部門賞を受賞した「トンダ クロノール」を継承。もちろんパルミジャーニ・フルリエのデザインコードに則った「黄金比」により、あらゆる要素が構築されている。
ブレスレット統合型の時計は、ロイヤル オークとノーチラスという特定モデルのイメージを抱きがちだが、緻密なコインエッジベゼルやデルタ型時分針などパルミジャーニ・フルリエはすでに多くのアイコニックなディテールを確立していることもあり、他社製品と比較してもしっかりとオリジナリティが感じられる。とはいえ、ここに至るまでには相当な苦労があったという。全体のデザインを手掛けたベテランデザイナーのディノ・モドロは、1996年にヴァシュロン・コンスタンタンが発表したオーヴァーシーズのデザインも手掛けた人物であるが、彼を招聘してもトータルの開発期間には約2年かかったようだ。
結果、完成したモデルは価格も魅力で、パルミジャーニ・フルリエとしてはリーズナブルな171万6000円〜。トンダグラフ GTにいたっては複数の機構を搭載しながら234万3000円〜という破格さ。搭載ムーブメントに既存の自社製自動巻きキャリバーPF044(トンダ GT)、または自動巻きキャリバーPF043(トンダグラフ GT)を使うなど、高品質を保ったままコストを抑える工夫が色々とあるのだろうが、ひとまず手に持った感触ではツメの甘さは一切感じられずコストパフォーマンスは高いという印象を受けた。
とはいえ、「トンダ」シリーズ自体は百万円代前半から購入可能な3針モデルもある。では、パルミジャーニ・フルリエ「トンダ GT」がなぜ新機軸となるのか。その理由は、あらゆるシーンで使うことのできる万能性にある。GTというに相応しい快適性とスペックを備え、さらにクールにも、情熱的にも装うことができ、フォーマルな場にもしっくり馴染むこの時計は、まさしくブランドが謳う通り“パルミジャーニ・フルリエらしいデイリーウォッチ”と言えるだろう。
問い合わせ先:パルミジャーニ・フルリエ TEL.03-5413-5745
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