ブルーとスケルトン。限定製造の「インディペンデンス 21」に込めたノルケインの時計作りへの情熱

2018年にスイスで創業するや、翌年には日本でも全国各地30以上の正規時計店で取り扱われることになったノルケイン。目の肥えたバイヤーたちをも魅了した同社の時計は、いったいどこが評価されているのだろうか。6月24日21時に情報解禁となった最新の限定モデルとともに解き明かしていく。

TEXT/Daisuke Suito(WN)

未来に繋ぐスイスの伝統的な時計製造のシンボルとして

時計産業の盛んなスイス・ビール/ビエンヌにて、ノルケインは2018年に創業した。少量生産の高額品を手がけるマイクロウオッチブランドが注目を集める時期に、メジャーブランドを目指す同社のアプローチは極めて異彩を放っていた。コレクションは、アドベンチャー、フリーダム、インディペンデンスの3つ。すべてに機械式ムーブメントを搭載している。

ノルケインのユニークな点は、スイスの時計製造体制の主流である「エタブリスール」、すなわちサプライヤーからの供給を受けて時計を製造していることを表明し、さらにその供給元さえオープンにしていることだ。時計製造はパーツ単位から自社で一貫して時計を製造する「マニュファクチュール」体制で作られたものが尊ばれている。そのためか、エタブリスールであることが周知の事実でありながら、外部供給されたパーツを使っていることを隠すブランドは多い。その供給元の名前を明かすことなど、異例中の異例なのだ。

こうした姿勢は、ノルケイン創業者のベン・カッファーが掲げた「スイスの時計製造の伝統を後世に残す」が基盤となっている。ケースやストラップ、針、文字盤、ムーブメントと、それぞれのスペシャリストであるサプライヤーの経営安定化の一助となることも、スイスの時計製造がエタブリスールで成り立ってきたことを明らかにすることも、すべては次世代に伝統を残すためである。そのためには、当然、一代限りではなく、ブランド自体も長く続く必要がある。そのことを前提にすれば、コレクション展開も必然的にメジャーブランドを見据えたものになるわけだ。

こうしたブランドの姿勢に共感してだろう。サプライヤーとの協力関係は厚く、新作発表から発売までのスピード感は新興ブランドと思えないほどに迅速かつスムーズだ。発売時期が大幅に遅れることもあるスイス時計業界にあって、これは驚異的というほかない。しかも、高品質な時計作りでありながらコストもかなり抑えられている。これら様々な要因が、日本の高級時計専門店の目利きたちを唸らせたことは、想像に難くない。

「挑戦し続ける姿勢」こそノルケイン最大の魅力

もちろん、最新作として発表された2本の「インディペンデンス 21」も限定製造の特別品ながらノルケインらしさが詰まっている。オールドスチールフィニッシュのミッドナイトブルー文字盤は、ムーブメントにシャネルやチューダーなどでも使われている「ケニッシ」社と共同で製造したムーブメントを搭載。キャリバーNN20/1は、スイス公式クロノメーター認定機関C.O.S.C.にて高精度認定を受けたハイスペック機で、パワーリザーブは約70時間と長く、頑健な設計も特徴だ。

職人の手作業で表情をつけた文字盤は、限定200本の個体すべてが異なるという希少性も魅力。ケースバックに記されたONE OF 200の文字が、その特別感をいっそう盛り上げてくれる。

もう一つの限定新作は、ノルケイン初となるスケルトンウオッチ。こちらは「セリタ」社のSW200-1Sをベースに独自のリファインを行なった新開発キャリバーNN085を搭載する。輪列を支えるプレートをどこまでデザインに寄せるか、あるいはどこまで極限まで肉抜きするか、という方向へスケルトンウオッチのトレンドが進むなか、ノルケインはあえて十分なタフネス性能の確保にもチャレンジ。ベースムーブメントからさらに肉抜きするのではなく、新規に別作したと思われるプレートによって外縁との支点を増やすなどして剛性を確保した。ギアの上にかかるプレートの入り組んだ構造は、さながら高速道路の複雑なジャンクションのようでもある。さらにケース表面にもノルケイン初となるダイヤモンド・ライク・カーボン処理を採用。ここまで手がかかっているゆえ、スケルトンウオッチの限定本数はブルーダイアルの半分の100本のみだ。

どちらのモデルにもノルケインのアイコンであるケース左サイドの「ノルケインプレート」を装着。直径は42mmで、ブレスレットかブラックレザーストラップが選択可能となっている。

左2本「インディペンデンス 21」41万8000円(ステンレススチールブレスレット)/39万3800円(レザーストラップ)自動巻き(キャリバーNN20/1)。ステンレススチールケース(シースルーバック)。直径42mm。
「インディペンデンス 21 DLC スケルトン」52万8000円(DLCブレスレット)、48万4000円(レザーストラップ)自動巻き(キャリバーNN085)。DLC加工ステンレススチールケース(シースルーバック)。直径42mm

実はインディペンデンスコレクションから限定モデルを毎年発表していくことは、ノルケイン創業時のマニフェストだった。そんなブランドのコアコレクションから出す限定には、新たな仕様が適用される。今年披露された新キャリバーと新色文字盤は、ブランドとしての可能性の幅を広げるのはもちろん、サプライヤーの技術向上にも貢献する。「スイスの時計製造の伝統を後世に残す」という取り組みはまだ始まったばかりだが、その壮大なテーマにさえ果敢に臨む「チャレンジ精神」こそ、ノルケインが着実に支持者を増やしている一番の理由なのかもしれない。

 

問い合わせ先:ノルケイン ジャパン TEL.03-6864-3876 https://www.norqain.com/?lang=ja