博物館級の貴重なヴィンテージタイムピースの修復師として活躍していたミシェル・パルミジャーニは、1996年に自身の名を冠するブランドを立ち上げた。5月29日、ローザンヌのボー・リバージュ・パレスで行われたセレモニーでは、シンプルなものから超複雑機構まで合計52型もの時計を一挙に発表したという。以来、25年間にわたってオリジナリティあふれる高級品を作り続けてきたパルミジャーニ・フルリエが、この四半世紀の歩みの集大成に位置づける新作を発表。最新作「トンダ PF」は自動巻き2針、クロノグラフ、アニュアルカレンダーが18Kとステンレススチールの2種類に加え、こプラチナ製スプリットセコンド・クロノグラフの合計4つの機能バリエーションで展開される。
TEXT/Daisuke Suito(WN)
新しいブランドロゴに象徴される控えめだが確かな上質感
スーツにシャツに靴に鞄など、仕立ての良いものはなんであれ、与えられた銘によらず本物を見抜く目を持つ人々を魅了するものだ。絶えず理想を追い求めてより高度なクリエイティブに邁進することで品質はより高まり、人々の支持を集め、それが歴史の礎となる。これは多くの世界的ブランドが身をもって証明してきた通りである。
パルミジャーニ・フルリエは、著名な時計修復師ミシェル・パルミジャーニ氏が立ち上げたブランドだ。氏はその後25年にわたり(一時は本人がブランドを離れた時期もあったが)、ブランドの方向性を見届けてきた。現在のトップは、長くブルガリ グループのウオッチ部門でディレクターを務めてきたグイド・テレーニ氏。最新作「トンダ PF」は彼が就任して最初の大規模な新作につき、相当な気合が入ったことだろう。
その証拠のひとつが、新作に与えられた新しいロゴだ。これまで横長にフルスペルで記されていたブランド名は、縦オーバル形状のシンプルなPFの組み合わせに変更。内外周で層の異なる文字盤を跨ぐようセットされた短いバーインデックスは、権威あるジュネーブウォッチグランプリを2017年に受賞した「クロノール アニヴェルセール」にも通じる意匠となっている。文字盤面の大半は、緻密に掘り込まれたバーリーコーン(麦の穂)模様のギヨシェ。これに手彫りのローレット加工ベゼルを備えることで、4つの機能のどれを見ても必ずパルミジャーニ・フルリエの製品でありながら、これまでにない世界を持つ「トンダ PF」のスタイルを成立させた。
これまでの「トンダ コレクション」を補完する目的を持って作ったという今回の「トンダ PF」は、既存の躍動的なデザインの「トンダ GT」と対をなすモデルと言えるだろう。いくつもの要素をデコラティブに足すのではなく、自らの持つ個性の一つひとつを研ぎ澄ませながら最小構成で組み合わせていく引き算の美学。パルミジャーニ・フルリエの魅力が詰まった本機は、完全自社製造のムーブメントを搭載している点まで含め現代のラグジュアリーウオッチのあるべき姿を示していると言えよう。
問パルミジャーニ・フルリエ Tel.03-5413-5745
https://www.parmigiani.com/jp/