世界で愛される時計界の雲上ブランドの魅力を掘り下げる vol.1 ――【パテック フィリップ】ヒストリー編

時計趣味人にとって、雲上ウオッチブランドの名品はいつか手に入れたいもの。そんな至高のブランドを掘り下げる本特集の初回は、時計史に輝く数々の革新技術を生んできた【パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)】の魅力にフィーチャーする。

Photo / Hiroyuki Kodera (Nautilus) Styling / Eiji Ishikawa (TableRockStudio)

時計界を牽引するパテック フィリップ革新の歴史

帝政ロシア統治下のポーランドから、圧政を逃れジュネーブへ亡命した将校アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックは、この地の時計製造に強い関心を示し、時計師フランソワ・チャペックとの出会いから1839年にパテック チャペック社を設立。これがパテック フィリップ社の前身となる。5年後の1844年、パリの時計師、ジャン・アドリアン・フィリップが、従来の鍵巻き式に代わり、リューズでゼンマイ巻き上げと時刻合わせが可能な革新的な懐中時計をパリの産業博覧会に出品し銅メダルを受賞。彼を新たなパートナーに迎え、1851年にはパテック フィリップ社に改称する。同年、第1回ロンドン万博にこの機構の懐中時計を出品し金賞を受賞。ヴィクトリア女王へ献上の栄誉にも浴している。以降、永久カレンダー、スプリット秒針クロノグラフ、リピーターなど先進機構を次々と開発。工芸性の高い外装も世界の上流階級の心を捉えていく。

2001年11月ジュネーブ市内にパテックフィリップ・ミュージアムを開設。貴重な歴史的タイムピースやオブジェ約2500点を所蔵。パテックフィリップのみならず、欧州の時計製造の歴史を概観できる

 

世界恐慌後の1932年、文字盤製造会社を営むシャルルとジャンのスターン兄弟に経営権を移譲。以降、スターン家のファミリービジネスとして、アンリ氏、フィリップ氏、そして現在のティエリー氏が代々社長を継承。フラッグシップのひとつ「カラトラバ」のルーツ「Ref.96」が発表されたのも、スターン家が経営を担い始めた1932年のこと。翌1933年には、ニューヨークの銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニアの依頼で超複雑な懐中時計「グレーブス・ウォッチ」を製作。他の追随を許さぬ複雑機構製作の伝統は、創業150周年を迎えた1989年の「キャリバー89」、2000年の「スターキャリバー2000」などへと受け継がれていく。

2020年に竣工したパテック フィリップの新工場「PP6」。地上6階、地下4階の巨大空間に時計製造以外の部門も集約

 

一方、1937年にはワールドタイム、1976年には今なおラグスポモデルの主役的存在として注目を集める「ノーチラス」、1996年には年次カレンダーモデルを発表し、柱となるコレクションを着実に構築。1999年に発表した「Twenty~4®」は、新時代の女性たちを虜にした。

2005年にはパテック フィリップ《アドバンストリサーチ》を創設し、先進技術の研究・開発にも積極的な取り組みを見せ、2009年にはジュネーブ・シールを凌ぐ厳格さの独自の品質認証規準パテック フィリップ・シールも導入した。2020年には新工場PP6がプラン・レ・ワットに完成。盤石の態勢がメゾンをさらなる高みに押し上げている。

 

パテック フィリップの技術力を証明する逸品

パテック フィリップ「インライン表示永久カレンダー」 Ref.5236P 1718万2000円

曜日、日付、月の3つの表示窓を1列に配置した1972年製の永久カレンダー懐中時計の機構を、3件の特許技術とともに腕時計サイズで達成。エレガントなブラック・グラデーションのブルーダイアルには、そのほかに閏年と昼夜の窓表示とスモールセコンド、ムーンフェイズを配する。新開発の自動巻きムーブメント「キャリバー31-260 PS QL」は、ケースと同じプラチナ製のマイクロローターを備える。パテック フィリップ・シールを刻印。

スペック:自動巻きムーブメント(自社製Cal.31-260 PS QL)、毎時2万8800振動、最大48時間パワーリザーブ。プラチナケース(シースルーバック)、アリゲーターストラップ。直径41.3mm、厚さ11.07mm。 3気圧防水。

 

問い合わせ先:パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL.03-3255-8109 https://www.patek.com/ja

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