【シリーズ】次の世代に繋げるためのACTION–子供のために時計ブランドができること
腕時計は大切にするほど長く愛用できる一方、ひどい扱いをすればすぐに壊れてしまう。それは人間も、地球も同じこと。未来のために行動を起こした時計界の現状を、シリーズ[次の世代に繋げるためのACTION]としてレポートする。今回は、困難な環境に置かれた子供達をサポートする様々な活動について、現状と各社の取り組みをまとめた。
社会全体で子供を守る世界を目指して
国連が世界人口デーの7月11日に発表した世界人口予測2022によれば、今年中に世界人口は80億人に達し、2058年には100億人に到達するそうだ。平均寿命が伸びる一方、子供の出生率が増えることはない。日本では15歳から64歳までの生産年齢人口が減り、高齢化社会が進行中。この傾向は日本だけではない。次世代を担う子供を大切にできなければ、それは自分たちの首を絞めることになる。
こうした子供のために行動を起こしたブランドにIWCシャフハウゼンがある。同社は、2000年にリシュモンとダイムラーによって設立されたローレウス・スポーツ・フォー・グッドのグローバルパートナーを2005年から務めている。「障壁を打ち砕いて人と人とを結びつけ、より良い世界を実現する力が、スポーツにはある」と信じるローレウスのアカデミーには、サッカーやテニス、陸上競技、スケートボードやモーターレースなど様々なスポーツ分野の一流選手約70名が参加。創設以来、社会の変化を促進し、暴力、差別、不遇を撲滅するための250を超えるプログラムが世界40か国で実施され、参加した子どもや青少年の数は600万人を超える。ちなみにIWCは、毎年サステナビリティレポートを発表するスイス時計界でも稀有なブランドで、2018年にはWWFが最も透明性のあるスイス時計ブランドと認めた。
ブルガリは2009年からセーブ・ザ・チルドレンとパートナーシップを締結。輝く女性にスポットを当てる「アウローラアワード」を筆頭に、ブルガリは非営利活動に積極的に取り組んでいるほか、セーブ・ザ・チルドレンの活動に共感して製作されたもの。売り上げの一部が、世界で最も弱い立場にある子供や若者に支援や機会を提供するファンドプログラムに寄附される。
リシャールミルジャパンは、ラグジュアリーブランドの使命として、助けを必要とする人々の支援を積極的に行うべきと考え、継続的なチャリティ活動を実施。「リシャールミルジャパン基金」を通じ、医療機関や子供のために活動するNPO法人など、国内外に寄附を続けている。昨年は、国立国際医療研究センターへの寄附により、紺綬褒章も授与された。
さらに歴史の浅いノルケインもまた、「バタフライ ヘルプ プロジェクト」を運営するノーブシェルパとアンドレア ツィメルマンとのパートナーシップを締結。プロジェクトの主な活動は、エベレストの登頂に欠かせない現地のヘルパー「シェルパ」が命を落としたとき、残された家族や子供たちを支援すること。昨年はノルケインの貢献により、50人の子供たちが学校に行くことができたという。
実はシェルパの遺児のようなケースに限らず、やむを得ない事情で貧困に陥った子供は世界中にいる。親を頼れない子供に救いの手を差し伸べることができる社会整備が急務の課題となっている。
Text/Daisuke Suito (WN)