【シリーズ】次の世代に繋げるためのACTION–ロレックスがスタートした「パーペチュアルプラネット」の取り組み

腕時計は大切にするほど長く愛用できる一方、ひどい扱いをすればすぐに壊れてしまう。それは人間も、地球も同じこと。未来のために行動を起こした時計界の現状を、シリーズ【次の世代に繋げるためのACTION】としてレポートする。今回は、ロレックスが2019年から行っている社会貢献活動の取り組みをまとめた。

©Rolex/National Geographic  ヒマラヤ山脈の氷河は10億もの人々に重要な水資源を提供している。遠征チームの任務は、気候変動で氷河の減少傾向が続くこの水系を調査し、水の需給に関する追加データと併せ、健康状態を追跡すること

純粋な発見を目的とする探検は自然保護の手段へ移行

ロレックスは腕時計を実用レベルに引き上げたパイオニアだ。しかもその性能は、いつの時代も最高レベルであり続ける。1953年のエベレスト初登頂に代表されるように、数多くの過酷な探検や探検家によって試され、優秀性を実証してみせた。だが、21世紀に入ると「探検」の目的は、「未知なる世界の発見」から「自然保護の手段」へと移行。ロレックスは、「パーペチュアル プラネット」という新たなミッションを担う現代の探検家を支援してくことを2019年に表明した。この取り組みでは、1954年から探検の分野でパートナーシップを結んでいるナショナル ジオグラフィックとの関係をより一層強化。両社により5年間にわたり計画された3つのプロジェクト「パーペチュアル プラネット エクスペディション」の目的は、世界的に知られる科学的知見と最先端技術を駆使し、地球上の生命に不可欠な体系に気候変動が及ぼす影響についての洞察を明らかにすること。最初の遠征は、世界の給水塔である高山の実態を調査するべく、ナショナル ジオグラフィックとトリブバン大学のチームがロレックスの支援を受けて2019年4月から6月までエベレストで科学探査を行った。このほか、地球の肺に相当する熱帯雨林と、冷却システムである海洋での調査が予定されている。

©Rolex 「ミッション・ブルー」の働きかけで設立されたサルガッソ海連合(現サルガッソ海委員会)は、10年以上にわたり同海域を守り管理してきたホープ・スポットのひとつ。クジラやエイなど多くの種が行き交う回廊でもある

ロレックスはまた個人レベルでの支援も積極的に行ってきた。1976年から続く「ロレックス賞」では、これまでに150名以上の受賞者が科学と医療、探検、環境、応用技術、文化遺産の分野で傑出した発見、献身、再生を実現してきた。世界を変えるために情熱を捧げる人々への支援は、微生物研究から前人未踏の地の探検、未知の海洋生物の発見と生態調査、絶滅危惧種の保護まで地域も分野も幅広い。現在、2023年度への応募受付が開始されている。また、2014年からロレックスが支援しているシルビア・アールの活動「ミッション・ブルー」にも触れておきたい。

海洋生物学者で海洋探検家の彼女は、海洋生態系の脆さに焦点を当てている。ミッション・ブルーでは、危機に晒されている海洋生物を保護するよう地域社会や政府に働きかける活動を行っており、「ホープ・スポット」と名付けた海洋保護区を140か所以上も設定。2030年までに世界の海洋の30%の保護を目指す。「共に行動を起こせば、変化を起こすことは可能」だとアールは信じている。

将来を見通す先見の明に長け、利他主義者でもあった創立者の遺志を受け継ぐ「パーペチュアル プラネット」への取り組み。「環境を守るべく探究を続けてきた探検家たちを長期的かつ献身的に支援する決意を新たにした」というロレックスの掲げたコミットメントが、少しでも早く達成される日が訪れることを願っている。

 

Text/Daisuke Suito (WN) 本記事は『ウオッチナビ 2022 Autumn Vol.87』より抜粋・編集しています。