創業1932年。時計販売の名店「トミヤ」は、岡山市を拠点に広島、福岡にも店舗を展開し、正規輸入の高級時計を取り扱っている。毎年7月9日の創業記念日を含む週末には恒例行事「トミヤ創業祭」を実施(今年は7月7日(金)〜11日(月))するなど、地域活性にも貢献するトミヤが長く支持され続ける理由を、代表取締役社長・古市聖一郎さんへのインタビューから読み解く。
高級時計の販売は2000年代から本格化
–今年で91周年。もうすぐ『創業祭』も始まりますね。この催しは古市社長が始めたと伺いましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?
「私が入社した2003年、トミヤの主軸は宝飾品でした。一方、国内では機械式時計の人気が急速に高まっていたのです。とくにブライトリングは、服飾系のショップでも扱われるほど販路を拡大させていました。そのような社会的背景もあって、トミヤも時計に注力することになっていきます。
なかでも2004年にオープンしたフランク ミュラー by TOMIYAは、会社にとっても、自分にとっても大きな転機となりました。このトミヤ初のブランドブティックで私が初代店長を任され、高級時計の販売について本当に多くの経験ができました。その後、トミヤ全体の時計販売の事業規模が拡大し続け、扱う時計ブランドの数も増えていくことになります。
そうした流れもある中で、宝飾メインの秀宝展や時計メインの催事はあったのですが、オールトミヤの商材で臨む展示会がなかったので全ての商材を扱う展示会として創業祭を開始したのです。
–創業祭は毎年のように2000名以上の来場があると聞きました。岡山の会場で、かつ高級時計のイベントでこれだけの規模があることに驚きます。
「トミヤには、先代である父(※注:現会長・古市大藏さん)の時代からの方針が受け継がれています。2000年代は高級時計の中でもとりわけ高額な“複雑時計”のブームでもありました。しかし、父は“トミヤは多くの人が買い物を楽しめるよう、社員全員で力を合わせよう”という考えの人。もちろん複雑時計を買ってくださることは嬉しい限りですが、その1本のために手を尽くすよりも私たちは多くのお客様をおもてなしすることを常に意識しているのです。催事でも平時でもトミヤにお客様がお越しいただけるのは、社員全員の献身的な努力があってこそだと思っています」
社員一丸となって「創業祭」を盛り上げる
–創業祭のパンフレットを見ても、社員の方々の個性がよくわかる内容になっていて親近感が湧いてきます。
「今年は、学生時代に所属していた部活や熱中していたことをテーマに写真を撮影しました。これを楽しみにしてくださっている方もいますし、何より撮影時期になると7月に向けた社員のモチベーションが変わってきます。あとこれは社内的な話ですが、催事の1か月前に創業祭の決起会を行なっていて、私が企画したプロモーションビデオなどで創業祭にかける意気込みを社員と共有しています。実質、私の出番はここまでで、あとは時計マネージャーの山田をはじめ現場スタッフに委ねるようにしているのです」
–本当に社員の方々を信頼されているのですね。
「私自身はすべてを把握して積極的に関わっていきたい性分なのですが、2014年から岡山市の青年会議所のメンバーに入って以降は物理的に関われない案件もでてきたので、ならばいっそ売り場で判断してもらおうと。今では最初の大枠だけ関わったら、その後のことはほとんど現場に任せるようになりました」
–まさにトミヤコーポレーション一丸となって臨む『創業祭』。今年はどのような見どころがありますか?
「91周年のトミヤ創業祭は『祭り』がテーマ。提灯を飾り付けるなどして、縁日に来たような雰囲気を楽しんでいただきます。出展ブランドには久しぶりにカルティエが加わり、ブレゲのコーナーを拡大。タグ・ホイヤーコーナーで見られるトミヤ限定モデルのほか、創業祭でしか見られないような希少モデルなどを数多く揃えます。ライフスタイルグッズや宝飾品などもあるので、WATCHNAVIさんの記事ですが時計の知識は気にせず気軽にご来場いただけたら嬉しいです(笑)」
取材後記
トミヤ創業祭は編集部も毎年取材に入る日本時計販売の重要イベント。その規模は都内にある有名百貨店のワールドウオッチフェアさえ凌ぐ、と筆者は考えている。実際、出展ブランドの関係者に話を聞くと「創業祭に出展できるかどうかでその年の売り上げが大きく変わる」という声もあるほどだ。会場となる岡山国際ホテル 別館「瑞光の間」は中四国最大級の総合宴会場なのだが、ここに世界に名だたるブランドの時計が並び、それを吟味する多くの人々で連日賑わう光景は、それだけで気分が高揚する。ショーケースに目を向ければ、「古市社長の超目玉です!」などのユニークなポップがあり、実はそれが時計好きの所有欲を掻き立てる激レアモデルだったりする。こうした品揃えを実現すべく、トミヤの社員の方々は開催日のギリギリまでブランドと折衝を重ねるのだという。こうした努力ができるのも、すべては顧客をもてなすため。これこそが91年の歴史を紡いできた企業の本質と言えるだろう。
TOMIYA 91ST ANNIVERSARY SOUGYOUSAI 2023
DATE|7月7日(金)・8日(土)・9日(日)・10日(月)
OPEN|11:00-19:00 ※7月10日(最終日)11:00-18:00
PLACE|岡山国際ホテル別館「瑞光の間」 岡山県岡山市中区門田本町4-1-16
問い合わせ先:トミヤ本店 TEL.0120-16-1038 https://www.tomiya.co.jp/
Text/Daisuke Suito(WATCHNAVI)
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