<取材協力>
ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)
リューズを備えた【ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)】のアイコンウオッチ「フリークX」から、日本限定仕様の「フリークX グレー エナメル」が登場した。そのこだわりのディテールを、明らかにする。
伝統と革新の職人技が宿るデイリーコンプリケーション
今回、ユリス・ナルダンが日本の時計愛好家に向けて製作した特別な「フリークX グレー エナメル」には、初の試みが2つなされた。ひとつは、人気作の「フリークX」にグレーのエナメルディスクを与えたこと。もうひとつが、そのディスクに文字盤メーカーである「ドンツェ・カドラン」のシークレットシグネチャーを記したことだ。

↑ユリス・ナルダンが日本のファンのために製作した新作、「フリークX グレー エナメル」。
ドンツェ・カドランとは、熟練エナメル職人フランシス・ドンツェが1972年に設立した文字盤メーカーで、現在のアトリエには30年以上のキャリアを重ねたベテランを含む、8人の職人が在籍する。高温焼成の〝グラン・フーエナメル〞のほか、クロワゾネやシャンルヴェ、ギヨシェ・フランケといった伝統的な技法を得意とし、複数の有名時計ブランドや歴史的作品の修復を依頼する機関にもサービスを提供。なかでもユリス・ナルダンとは1980年代から提携しており、2011年より正式にブランドの傘下に入った。だが、豊かな経験と実績を持つドンツェ・カドランでさえ、今回の「フリークX グレー エナメル」のように回転することを前提にしたエナメル文字盤を製作したことはほぼなかったという。

↑ギヨシェ彫りを施したホワイトゴールドの盤面に、特別に調色したエナメルを塗り800℃で焼成。これを何層も繰り返しながら、ほぼ丸1日かけて1枚ずつ文字盤を完成させる。
新作のベースとなる「フリークX」は、2001年に同社が発表した複雑時計に起源がある。現在「フリーク 2001」と呼ばれるそれは、調速・脱進機が分針となって60分間に文字盤を一周することで、トゥールビヨンと同様の重力分散効果を得る「フライングカルーセル」の機構に加え、シリコンパーツで構成された新型脱進機も採用するなど、いくつもの技術革新を1本でやってのけた歴史的なモデルだった。その後も「フリーク」はユリス・ナルダンのアイコンとして進化・発展を継続。そして2019年、「フリークX」が誕生したのである。
同年のユリス・ナルダンは、〝未知なるもの〞を象徴する記号「X」を、新作のテーマに掲げており、それを体現していたのが「フリークX」だった。この時計は、独創デザインをそのままにリューズを備え、長時間駆動も達成するなど実用性を向上。時計愛好家のデイリーコンプリケーションとして高い評価を得た。最新作もまた、芸術性の高い文字盤を有しながら、使い勝手の良さを継承。ブラックDLCケースにラバーストラップというスポーティな外装に、革新ムーブメント、そしてギヨシェエナメル文字盤というメティエダールまで堪能できる「フリークX グレー エナメル」は、どこまでも特別すぎる日本限定モデルなのである。
日本限定25本のみ! メティエダールの高次元融合により実現

ユリス・ナルダン「フリークX グレー エナメル」 Ref.2303-270LE-1AE-J/3A 700万7000円
2001年に誕生した「フリーク」の発展型となるフライングカルーセルムーブメント搭載モデルの特別版。ホワイトゴールドのディスクにフランケ模様のギヨシェを施し、さらにドンツェ・カドランの職人の手によるグレーエナメルでコーティングしたダイアルが、圧倒的な個性を主張する。
スペック:自動巻き(Cal.UN-230)、毎時2万1600振動、72時間パワーリザーブ。ブラックDLCチタンケース(シースルーバック)、ブラックラバーバリスティックストラップ。直径43mm、厚さ13.92mm。50m防水。日本限定25本。
歴史を更新した21世紀の腕時計が「フリーク」
2001年にユリス・ナルダンが発表した「フリーク」は、21世紀の始まりに相応しい革新的な機能と素材を有して登場。露出したムーブメントが回転する「オービタル・フライング60分カルーセル」ウオッチは、その後の時計業界に多大すぎる影響をもたらした。

↑初代となる「フリーク2001」。シリコンパーツを組み込んだ独創のデュアルダイレクト脱進機を備えたムーブメント自体が時を告げる。
問い合わせ先:ソーウインド ジャパン TEL.03-5211-1791 https://www.ulysse-nardin.com/ja-jp ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
Text/水藤大輔(WATCHNAVI) Photo/新倉哲也(Studio 29)
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