<取材協力>
モバード(MOVADO)
かつてスイス屈指のマニュファクチュールとしてその名を轟かせた【モバード(MOVADO)】。1881年創業の歴史あるこのスイスブランドが、いま再び注目を集めている。その功績を振り返りながら、最新作の魅力を検証する。
時代に翻弄されながらも栄光の歴史は続いていく
1881年にラ・ショー・ド・フォンにて創業したモバードは、現在モバードグループとして、多くのブランドを抱える一大グループ企業の筆頭に君臨している。これほどの地位を築いた背景には、単一ブランドとして歩んできた栄光の歴史があり、時計のデザインと計時技術における特許は100件以上。国際的な賞の受賞は実に200以上に及ぶ。彼らの時計は芸術性にも優れ、世界20の美術館に所蔵されるほどだ。
1940’s アートウオッチ黎明期
1947年、工業デザイナーのネイサン・ジョージ・ホーウィットが「ミュージアムダイアル」をデザイン。1960年にニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵された最初の時計の文字盤をモバードが腕時計にした「ミュージアム ウォッチ」は爆発的なヒットを記録。アートウオッチの先駆けとしての地位を確立した。

↑中央が「ミュージアム ウォッチ」のオリジナル。“時間とは数字の連なりではない。人は地球の回転、太陽の位置で時間を体感するのだ”という原画のコンセプトを体現した腕時計は1961年に登場。12時のドットの意匠は太陽をイメージしたものだ。

モバード「ミュージアム ウォッチ」 Ref.0607269 11万円
漆黒の文字盤の12時位置に凹面のシルバーの丸型プレート“シングルドット”を配置した、オリジナルに忠実な現代モバードの大定番。幅の狭いベゼルにドフィーヌ針の組み合わせが、上質なドレスウオッチにも通じる気品を醸し出す。
スペック:クオーツ。ステンレススチールケース。直径40mm。3気圧防水。

モバード「ボールド クエスト」 Ref.B3601222.8106S 12万5400円
アズラージュ仕上げを施したシングルドットを持つ最新コレクション「ボールド」の直径40mmモデルは、力強い造形とシンプルの共存が魅力。サテン仕上げが施されたブレスインテグレーテッドケースの中にサンレイ文字盤の光沢が映える。日付表示付きで普段使いに向く。
スペック:クオーツ。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径40mm。5気圧防水。
モバード(MOVADO)というブランド名は、エスペラント語で「たゆまぬ前進」を意味する。その名の通り、モバードはつねに技術研鑽を積み重ねてきた。初期の有名なものでは1912年に発表した3面設計ムーブメント搭載の「ポリプラン」や、ケースの開閉によって主ゼンマイを巻き上げる1926年発表の携帯時計「エルメト」などが挙げられる。その後、大手ジュエラーなどとのコラボレーションを活発に行いながら、防水時計「アクヴァティック」(1935年)や自動巻き時計「テンポマティック」(1945年)などを精力的に開発。1947年にはアートウオッチの先駆けとなる「ミュージアムダイアル」が誕生する一方で、モバードは1960年代までに多彩な腕時計を展開していく。そして1969年、モバードはゼニスとともに世界初のハイビート自動巻きクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」を発表。時計界の名門として、揺るぎない地位を確立した。
1960’s クロノグラフ革命
モバードは腕時計黎明期よりカレンダーウオッチの「カレンドプラン」を筆頭に、多彩な機能を持つ機械式時計の発表で優れた技術力を誇示していた。自動巻きクロノグラフの開発競争に沸いた1960年代には1969年にゼニスと協業し、時計界の名機「エル・プリメロ」をともに開発。完全一体設計で毎時3万6000振動を誇った唯一のムーブメントで他社を圧倒したのだった。

↑1930年代には優秀なクロノグラフメーカーとなっていたモバード。キャリバー90Mやキャリバー95Mといった名機があり、左の防水時計「スーパーサブシー」にもクロノグラフを果敢に搭載した。

モバード「ヘリテージ カレンドプラン」 Ref.3650166 24万2000円
モバードが得意としていたカレンダーウオッチの名を受け継ぐヘリテージコレクションの一本。クロノグラフは60秒と30分計を有し、9時側にポインター式曜日表示を備えて、伝統的な3カウンター配置を成立させた。
スペック:クオーツ。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径43mm。3気圧防水。
クオーツショックの煽りを受けてアメリカ企業に買収された1980年代以降のモバードは、アートウオッチと機械式時計の両輪で自社のプレゼンスを示していく。その姿勢は今も続き、自社の豊かな歴史を基にしたスイスメイドのタイムピースを数多く展開中だ。アイコニックなシングルドットを冠する「ミュージアム ウォッチ」や、それにモダンな解釈を加えた「ボールド」、1912年からの伝統を持つモデル名を継承する「カレンドプラン」「オンドプラン」など、ここに取り上げた定番・新作が誕生した経緯を知れば、きっとモバードがもっと好きになるに違いない。
1970’s インテグレーテッドデザインの隆盛
1970年代はクオーツ腕時計が台頭する一方、雲上ブランドが立て続けにケースとブレスレットが一体となったインテグレーテッドデザインの高級ステンレススチールウオッチを打ち出した時代。モバードも同時期に音叉時計「エレクトリック・サーフ」を開発し、機構とデザインの両面でラグジュアリースポーツの潮流の最先端に乗った。

↑1970年代のモバードを象徴する、ゼニス製の自動巻きキャリバー2572を搭載したダブルネームウオッチ。すでにミュージアム ウォッチを手がけていたモバードのデザインセンスが見事に発揮されている。

モバード「ヘリテージ オンドプラン」 Ref.3650215 16万7200円
1974年に発表した「エレクトリック・サーフ」のデザインを直径36mmという小ぶりなサイズ感も含めて忠実に復刻。ヴィンテージな雰囲気を醸し出すグラデーション文字盤を採用し、ミッドセンチュリーデザインの魅力を際立たせた。
スペック:クオーツ。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径36mm。5気圧防水。
〈モバード旗艦店リスト〉
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問い合わせ先:MOVADO(栄光時計) TEL.03-3837-0783 https://www.eikotokei.co.jp/brand/MOVADO/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/水藤大輔(WATCHNAVI編集部) Photo/新倉哲也(Studio 29)
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