SIHH2017で発表された新作を取り上げていきます。今回は、モンブラン。2003年に誕生してから、長らく大黒柱としてウオッチコレクションを支え続けてきたタイムウォーカーがリニューアルしました。
ミネルバの遺産を継承した新生タイムウォーカー
現在、モンブランの時計製造はル・ロックルとヴィルレ(ミネルバ)の2つを拠点に行われています。
SIHHで発表された新しいタイムウォーカーは、従来のデザインにミネルバの歴史が融合。ハイコンプリケーションからデイリーウオッチまで、5つのモデルが発表されました。
さて、ミネルバを語るうえでクロノグラフは欠かせません。1911年には5分の1秒計測が可能なストップウオッチを開発し、その5年後には計測精度を100分の1秒にまで高めました。ミネルバの計測精度の優秀性については、1936年に同社製品がオリンピック競技で採用されたことからも証明されています。
ミネルバの優れたストップウオッチは、やがて世界各地で開催されるモーターレースの計測機器としても使われていきます。スイス・ジュラ山脈にあるヴィルレで作られた製品が、数々の記録達成を計測してきたのです。
そうしたミネルバの歴史的背景にインスパイアを受けて誕生したのが、今年の最新作となるタイムウォーカー。発表された5つのモデルには、クラシックカーの造形に着想を得たという共通のデザインコードがあります。
サテン仕上げのケースには美しいカーブを描く半スケルトン構造のラグをセットし、ベゼルにはブラックセラミックを採用。リューズやプッシュボタンのトップにはローレット加工を施し、シースルーバックはスモークガラスとなっています。
1000分の1秒計測を行う超絶キャリバーを搭載
タイムウォーカーの最上位モデルとして発表されたコンプリケーションは、1000分の1秒計測が可能なクロノグラフです。2012年に「TimeWriter II Chronograph Bi-Fréquence 1,000」でもすでに機構は発表されていますが、これをタイムウォーカーに搭載したのはグッドアイデアだと思います。
文字盤側から見える大小2つのテンプは、7時位置が毎時1万8000振動する時刻表示用で、10時位置にあるのが毎時36万振動するクロノグラフ用となっています。
毎時36万振動では100分の1秒までの計測ですが、ここにモンブランは特殊ギアを加えることで、100分の1秒をさらに10分割する「モビル・ド・ミリエム」機構を開発。これによって1000分の1秒計測を可能にしたのです。
その表示は、クラシックカーのスピードメーターを想起させる12時位置のカウンターで表示されます(ストップ操作で針が動く)。ちなみに6時位置は分と秒の同軸積算計で、センターの赤い針は100分の1秒計測。右側の扇型メーターはクロノグラフ用のパワーリザーブとなっています。
ケースサイズは、46.4mmで素材はブラックDLC加工を施したサテン仕上げのチタン製となっています。
1930年代製のキャリバーをリメイクした限定モデル
直径50mmの大型ウオッチは、ミネルバのラリータイマーへのオマージュモデル。
ムーブメントは、手巻きモノプッシャークロノグラフのCal.MB M16.29。1930年代に開発され懐中時計や腕時計に使われたミネルバのキャリバー17.29をベースに開発されたものです。
縦並びのサブダイアルやクラシックなアラビア数字、5分ごとのレッドマーカーなどもオリジナルのラリータイマーに倣ったデザイン。現代においては新鮮に映ります。
サテン仕上げのケースは、サイドにローレット加工とDLCコーティングが施されています。この本体は着脱でき、腕時計のほか、ポケットウオッチやダッシュボードクロックとしても使用可能。ケースバックはシースルー仕様になっており、美しく仕上げられたCal.MB M16.29を見ることができます。
レギュラーモデルは3型が登場
非限定モデルのタイムウォーカーは、クロノグラフUTCと、クロノグラフ、オートマティック デイトの3型が登場。
クロノグラフUTCは、ケースにDLCコーティングが施すなど、徹底してブラックにこだわったモデルとなっています。逆回転防止式ベゼルを使えば、GMT針との組み合わせで最大3か国の現在時刻を同時に把握することができます。
クロノグラフは直径43mm、オートマティックデイトは直径41mmとなっており、それぞれサンレイ仕上げのブラックダイアルを採用。ストラップはレザーとラバー、SSブレスの3種類で用意されています。
2006年にミネルバを吸収してから10年が経ち、タイムウォーカーのリニューアルを経て、モンブランとミネルバの境界線はすっかりなくなった印象。これから同社が擁する幅広いコレクションも、円熟期へと突入することでしょう。
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