2018年の高級時計の新作が披露される国際高級時計展(SIHH)が、今年も1月にジュネーブで開催されました。ここで発表された新作から今年で150周年を迎えたIWCの新作について、ウオッチナビ編集部の水藤が詳細をお伝えします。
クラシックなだけじゃないラインナップに「ギャップ萌え」
IWCのSIHH新作は、毎年のようにひとつのシリーズをリニューアルすることが恒例のようになっています。その流れのなかで、IWCが150周年を迎える2018年に発表したのは、ジュビリーコレクションと銘打った限定モデルでした。合計27本の限定ウオッチはクラシックなデザインのモデルがベースとなっており、それらの文字盤色は暗に「過去」を示すホワイトと、「現代」を示すブルーの2色のラッカーダイアルのみという展開でした。
ジュビリーコレクションの文字盤の何層にも重ねられたラッカーは、エナメルにも似た独特の光沢が魅力。1885年発表作をベースにしたデジタル表示式の「パルウェバー」や「ポートフィノ」では、かつてのポケットウオッチのような雰囲気が楽しめます。その一方で、「ダ・ヴィンチ」「ポルトギーゼ」「パイロット・ウォッチ」は、古き良き時代の空気感を残しながらもよりモダンなデザインと言えるでしょう。
こうしたジュビリーコレクションに「インヂュニア」「アクアタイマー」が入っていないことは、むしろ高評価。150周年のジュビリーコレクションに、スポーティでパワフルなデザインはあまり相応しくなかったかもしれません。逆に、「うまい!」と唸ったのは、パイロット・ウォッチ。なかでも初のビッグデイトを搭載したビッグ・パイロット・ウォッチのホワイトダイアルは、時計の持つ力強さと上品な光沢文字盤との組み合わせに「ギャップ萌え」しました。
今年のIWC新作のハイライトは、1884年にIWCが開発したパルウェバー懐中時計の意匠を腕時計に再現したデジタル表示式の一本。ディスクの回転に別の動力源をもたせ、エネルギー消費の大きい機構でも高精度を維持しながら60時間パワーリザーブを実現。SSケースに採用された現代的なブルーラッカーダイアルとの組み合わせが、ポケットウオッチ時代のデザインを新鮮な印象に変えています。
シャイニーなブルーダイアルは通常モデルにありましたが、ジュビリーコレクションではラッカーブルーでシックな雰囲気に。注目は、ハイコストパフォーマンスな新型の自社製クロノグラフムーブメントCal.69355の搭載。お馴染みの縦配列2インダイアルの完成されたデザインはもちろん、ケースサイズもほぼ変えることなく作り上げられた本機が、人気作「ポルトギーゼ・クロノグラフ」の近い未来を予感させます。
力強いパイロット・ウォッチのデザインと艶やかなラッカーダイアルの組み合わせのギャップがユニークな一本。初めてビッグデイト表示を採用したチャレンジングな試みも大きな見どころとなっています。耐磁性軟鉄製インナーケースや夜光処理の採用など、アニバーサリー限定ながらパイロット・ウォッチならではの実用性が追求されている点も好印象。個人的なIWC新作のハイライトです。
ブランド誕生の背景にも通じる挑戦心こそIWCの真髄
IWCは毎年のSIHHに向けて大きなトピックスを用意していますが、今年の新作は特に驚きの多かったように思います。アメリカ人時計師がシャフハウゼンで創業したというユニークな背景を持つIWCが一世紀半もの歴史を重ねてこられたのは、オリジナリティに溢れ、実用性に優れた製品を開発し続けてきたからに他なりません。
今回の150周年のジュビリーコレクションには新型も定番もラインナップしていますが、より「IWCらしさ」を求めるならば、あえて上に挙げたような新たな試みが行われたモデルを手に入れたいところ。デザインこそ目新しいかもしれませんが、そうした挑戦心こそIWCの真髄だと思うのです。
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