昨年末、ありがたくもグランドセイコーの高級モデルを長期間使用させていただいた。今回はその使用レポートとともに、”150万円を超える国産時計”がアリだと感じさせられたそのディテールに迫ってみたい。
人生初のGSはイメージとは全く異なるものだった。GSなのに大きくてゴツいし、ブラックセラミックはキラキラだし、なんだかギラついた時計だからである。ではそれがマイナスかというと、とんでもなく好印象。GSのデザインコードは踏襲しているから、もちろんスーツなんかにもバッチリ合ううえ、人と違ったものを身に着ける“タダモノじゃない”感が出るからだ。それは、いかなるときも煌く、磨き込まれたセラミックベゼルとケースによるところが大きいだろう。
なんといっても、このセラミックの煌きにやられてしまった。非常に硬く、研磨の難しいとされるセラミックをまるでステンレススチールかのように、GSクオリティのレベルにまで磨き上げているのだ。日中は上品に微笑み、夜は妖しく輝く表情の違いはなかなかお目にかかれるものでない。こうした素材にフォーカスした付加価値の付け方は、国産ブランドはあまりしてこなかったように思う。いかにも舶来ブランドの手法であり、GSが国際市場に本格的にアプローチしたのだと改めて実感した。
本機はチタンとセラミックを巧みに使い分けたケース構造になっており、縦52.5×横46.4mmとやや大型でありながらサイズの割に軽量性にも優れている。このあたりの発想はユーザーからすると最もGSらしくない部分なんじゃないかと思う。こんなスポーティな出で立ちのGSは賛否がありそうだが、独立ブランド化したが故の挑戦的な姿勢そのものだ。
いま、市場では高級スポーツウオッチがブランド成功のカギを握り、超老舗と言われるメーカーが積極展開を仕掛けている。100万円超のスポーツウオッチカテゴリは大激選区と言って間違いなく、オーデマ ピゲのロイヤル オークやパテック フィリップのノーチラス、ロレックスのデイトナがその中心で、ジラール・ペルゴがロレアートを復活させてさらに混戦模様となっている。GSがそのフィールドに果敢に挑んだ初期の姿が本機だとすれば、わたしは絶賛を贈りたい。元来、国産時計というと機能で訴求することを作法とし、デザインなどブランド力が大きく作用する要素に弱かった。 GSはここに切り込んだのだ。
どこか漆のような質感を思わせる艶やかなセラミックの輝きは、不思議と和の場面にもマッチする。スポーツウオッチというとビーチなど夏のシーンを連想しがちだが、広い意味で”旅”に携えたい時計ということであれば、こんな1本があってもいいと思う。光の具合や眺める角度によって真っ黒であったりグレーであったりと、色の表情を変えるこのセラミックは、アクティブではないシーンにもなじむような、繊細な美しさがある。
ムーブメントにはGS伝統のスプリングドライブを搭載し、もちろん中身も世界に誇るセイコー品質を保っている。が、しかし、どんなシーンにもよりそうような日本人らしい特徴を備えた点をこのスポーツウオッチの最大の魅力として推薦したい。
/商品詳細
グランドセイコー
ブラックセラミックス コレクション
SBGC223
167万4000円
問合せ セイコーウオッチお客様相談室 0120-061-012
https://www.grand-seiko.jp/
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