キャスケットと聞いて思い浮かべるのは当然、帽子の形だろう。だが、熱心な時計好きにとって、それはジラール・ペルゴがかつて手がけたデジタル表示式ウオッチを意味する。マニア垂涎のこの時計が、「2.0」にバージョンアップして約50年ぶりに復活を遂げた。820本限定で作られ、そのうちのオンライン受注分が2月22日のサイトオープンから間もなく完売となった「キャスケット2.0」。本機は、これより日本のジラール・ペルゴ取り扱い店の店頭に並ぶという。価格は56万1000円。
フルセラミックで復活したレジェンダリーウオッチ
2022年版となる「キャスケット2.0」は、モデル名の由来でもある側面表示のケース形状をフルセラミックで再現。1976年の開発当時はマクロロン(ポリカーボネイト樹脂)でできていたが、現代的な素材への変更によってシャープさが際立つデザインとなっている。
ブレスレットも同じくブラックセラミック製。ポリッシュとサテンで仕上げ分けされた面は、光を受けて独特な光沢を見せる。バックルは、ケースバックと同じくチタン製。107gに重量を抑えており、軽快な着け心地が得られる。
ちなみにキャスケットの名は時計愛好家が与えたものであり、発売当初はリファレンスナンバーで呼ばれていたという。また、ジラール・ペルゴがこうしたデジタルウオッチを製作することを意外に思う人もいるかもしれないが、同社は1960年代にクオーツムーブメントの開発に単独で挑み続けたスイスブランド。実際に、現在の世界標準となっているクオーツ時計の振動数3万2768Hz/秒は、ジラール・ペルゴが設定したものだ。
1976年から78年にかけて8200本製造されたオリジナルモデルは、時、分、秒、曜日と日付を表示することができた。表示方式は、当時の最先端を行くチューブ状LEDディスプレイを採用。ケースと一体型になったブレスレットの設計も、時計の持つレトロフューチャーデザインの醸成にひと役買っていた。
これら特徴を受け継ぐ最新モデルは、素材がセラミックに変わったほか、機能面でも進化を遂げた。初代機と同じ表示に加え、新たに月、年、クロノグラフ、セカンドタイムゾーン表示を内蔵。さらにユーザーが指定した時刻になると思い出の日(日付、月、年)を表示する「シークレット デイト」機能も備えている。
これら表示は左右のプッシュボタン操作の組み合わせで呼び出しや設定が可能。1日に平均20回押すと仮定した場合には、約2年間の電池持ちになるという。
先述の通り、820本の限定製造数は2月22日から始まった公式オンラインブティックでの受注分が即日完売。これから手に入れるには、わずかに国内正規店の店頭に並ぶ限定モデルを入手するほかない。
最後になるが、このキャスケット 2.0は、実は2021年に行われたチャリティーオークション「オンリーウォッチ」のためにバンフォード・ウォッチ・デパートメントと協力して製作したユニークピースがベースとなっている。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法研究に必要な資金を募るために開かれた、このオークションでの予想落札額は1〜2万スイスフラン。対して、実際のハンマープライスは約8万スイスフランにもなった。こうした背景もあり、「キャスケット 2.0」に対してオンライン注文に漏れた世界の愛好家が店頭販売分の入荷を手ぐすねを引いて待っている可能性は極めて高いといえるだろう。
問い合わせ先:ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791
https://www.girard-perregaux.com/jp_jp/
Text/Daisuke Suito Photo/Masanori Yamaguchi
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