時間は誰にでも平等。だからこそ1日24時間、その限られた時間をどう使うかが「人生を楽しむ」ための鍵となります。様々な業界で活躍する人物から「時間術」を聞く本連載。第25回は日本最大級の税理士法人で働きながら、個人向けの一口馬主制度のサービスを立ち上げた、マイケル・タバートさんにお話を聞きました。
Photos:高橋敬大 Text:赤坂匡介
常に物事を6分単位で捉えている
普段は、日本最大級の税理士法人に勤める、マイケル・タバートさん。出身のオーストラリアでは、競馬は大衆娯楽であり、タバートさんは幼少時代から好きだった競馬の世界に、個人馬主を経て、「一口馬主制度」を利用したサービスの提供という形(クラブ馬主)で関わることを実現しました。
2足のわらじを履き、忙しくも充実した日々をおくるタバートさんに、日々どんな時間の使い方をしているのか聞いてみると、そこには「6分刻みで時間を意識する」という、タバート流の時間術がありました。
――税理士法人で働くエリート会社員とクラブ馬主という2足のわらじを履くタバートさん。昔から競馬が好きだったのですか?
はい、競馬も馬も大好きでした。私の生まれたオーストラリアでは、日本よりも馬券を気軽に購入できますし、販売している場所も多く、ギャンブルというよりも、ゆるめの娯楽として浸透しています。
両親も競馬好きだったこともあり、自然と私も競馬や馬に興味を持つようになりました。大学は日本の大学に進んだのですが、その頃はダビスタ(ゲームのダービースタリオン)ばかりしていました(苦笑)。それがきっかけで、いつか馬主になりたいと思うようになったんです。
――タバートさんは、名馬・ハナズゴールの馬主として競馬界では知られていた存在です。そもそも馬主とは、どうやってなるものなのですか?
まず、馬主とは、競走馬のオーナーを指します。中央競馬の場合、個人馬主になるためには、年間所得が2年連続で1700万円以上であること、さらに7500万円以上の資産を所有していることが条件になっています。
その条件をクリアすることも決して簡単ではありませんが、競走馬を購入したあとも、高額な維持費が発生したりと、個人馬主であり続けることは非常に難しいことなんです。
そのなかで生まれたのが、JRAの馬主資格を有する個人馬主に向けた「一口馬主制度」です。これは一頭の馬に対して、複数人がオーナーになることで、金銭的な負担を軽減できるというものです。私が立ち上げたオーナーズクラブ「ニューワールドレーシングオーナーズ」もこの制度を利用したサービスです。自分の馬が勝つ喜びというのは、言葉では表現できないほど、本当にうれしいものなんです。その喜びをみんなで分かち合えることも、一口馬主制度のもうひとつの魅力です。
今回のサービスは、“競馬が好き”が興じて始めたものですから、入会金や月会費などは一切いただいていません。「ニューワールドレーシングオーナーズ」が、競馬好きの仲間が集うコミュニティのようなサービスに育ってくれたらうれしいですね。
――そんなタバートさんの日課はなんですか?
現在も勤めている税理士法人は、シドニーにも支社があり、私は当初、そこで働いていたんです。そこでは6分刻みで、費用が発生していました。つまり、クライアントのための資料作りをしたとして、その作業時間を6分単位で換算し、金額が決定していたわけです。
まさにタイムイズマネー。時間を無駄遣いすることは許されませんでしたから、いまでも私のなかでは6分刻みの周期が刻み込まれています。これはもう職業病ですね(苦笑)。常に「何にどれくらい時間を使うか」という意識は持っています。そのなかで、もし時間が空いたときには「尊敬する上司など、自分にとってプラスになる人に会う」ようにしています。
愛用しているのは、ブルガリとロンジン
――今日お持ちいただいた時計は、ブルガリとロンジンの時計ですね。
はい。働き出して、初めていい時計を買おうと思い、購入したのがこのブルガリの時計です。昔からブルガリは香水などもよく使っていたこともあり、漠然と「初めての高級時計はブルガリにしよう」と決めていました。
社会人一年目。決して給与も高くはありませんでしたが、当時を思い出す1本ですね。初心に戻れる気がします。
もう1本はロンジン。これは奥さんからのプレンゼントです。ロンジンは世界的に競馬をサポートしているブランドとして知られています。毎年、その年のナンバーワンの競走馬とジョッキーを表彰していて、昨年は武豊さんが日本人初となる国際功労賞を受賞しました。
競馬好きとしてはやはり、同社の馬やジョッキーを讃える姿勢は非常に共感できますし、“競馬愛”という点で自分とも共通項があると感じています。またこの時計に関しては、デザインがとても気に入っていて、ずっとほしいなと思っていたんです。だから妻からクリスマスプレゼントとしてもらったときは、とてもうれしかったですね。
――ロンジンの時計はいわば、タバートさんが「競馬を愛する」気持ちの現れでもあるのですね。
そうですね。ただ日本だと、競馬=ギャンブルのイメージが強く、普段の仕事の際は、気軽に「競馬が好き」とは言いづらい空気があります。オーストラリアでは、もっと身近に、大衆娯楽として競馬がありますから、「競馬好き=ギャンブル好き」とは思われないんです。だからもっと、日本でも競馬のいいイメージが浸透してほしいという思いも込めて、ロンジンの時計はしています。
――最後に、タバートさんの夢を教えてください。
いま、在籍している会社は本当にいい会社なんです。勤続20年、一度も転職したいと思ったことがありません。
ですが仕事だけではなく、私は人生を豊かに生きたいと思っています。そこに“競馬”は、絶対に欠かせない要素なんです。無休でも働きたいと思えることというのは、なかなかないと思いますが、私は競馬のことなら、赤字になってでも関わりたいんです。それくらい私にとって、競馬への愛は大きなものなんです。
現在、大好きな会社で働きながら、馬とも関わることができています。2足のわらじを履く日々は忙しいですが、“大変”だと思ったことはありません。むしろ毎日楽しいですし、とても幸せだと感じています。
今後はクラブ馬主として、「ニューワールドレーシングオーナーズ」の会員の方と勝利の喜び、感動を共有するために、強い馬の育成に力を入れていきたいですね。
マイケル・タバート
ニューワールドレーシングオーナーズ株式会社 代表取締役
1975年生まれ。オーストラリア出身。小中高とオーストラリアで過ごし、京都大学への進学を機に日本へ。現在は日本最大級の税理士法人で働きながら、2017年より、“競馬愛”から個人向け一口馬主制度「ニューワールドレーシングオーナーズ」を設立。北海道の日高地方の牧場を利用することで、地域創生にも寄与することを目指している。