有名時計店スタッフが「この時計は欲しい」と魅力に感じた逸品について本音で語る

高級嗜好品のなかでも時計は種類が豊富なため、どれを購入するか迷ってしまいやすい。それが楽しみでもあるが、実際、ショップやデパートに足を運ぶとディスプレイされている点数の多さに驚くし、ターゲットを絞ってからでないと途方に暮れてしまうこともある。
そこで、ブランドをわたって多くの高級時計を扱っているトミヤ タイムアートのスタッフ・増田さんに、参考として身銭を切っても購入したいと思った時計を挙げてもらった。その深い知見から語られる評価は、必読の内容だ。

知名度は世界レベル!! グランドセイコーの限定エディション

国産時計の最高峰に君臨するグランドセイコーは、いまや世界でも販売好調なことが伝わってきている。日本人としても誇らしい。そんな日本の定番時計から2020年は限定仕様がいくつか登場しているが、増田さんはなかでも希少な一本に心惹かれると話す。

「グランドセイコーの雪白ダイアルモデル(SBGA211)はもともと人気ですが、このAJHH(日本正規高級時計協会)特別限定モデルはさらに特殊なディテールを備えています。雪白ダイアルに加えて、日の丸をイメージさせる赤を随所に配色。製造は、搭載しているスプリングドライブムーブメントの生まれ故郷である“信州 時の匠工房”で行っています。ジャパンウオッチの最高峰たる細部と機能、そして職人技が生かされた逸品なのです」

そう語りながら増田さんが什器から取り出してくれたのが、レギュラーモデルの雪白ダイアルモデル。人気のため在庫を保有しているショップは珍しいが、老舗かつ多店舗を展開しているトミヤグループにはこういったレアピースも集まりやすい。

「スプリングドライブが生産されている塩尻の工房から望める、美しい穂高連峰の雪景を表現した“雪白”のパターンは、ぜひ店頭で手に取ってご覧いただきたいですね。こういった語りどころがあるのも、本格時計が持つ魅力のひとつと言えるでしょう」

そして続けて、過去にグランドセイコーを販売した際のエピソードも話してくれた。

「以前、海外出張が多いというお客様がグランドセイコーをお求めになられたことがありました。購入の理由を尋ねると、海外でもグランドセイコーは認知度が高く、取引先の外国の方とも話題にしやすいとのことでした。“日本にはグランドセイコーがあるのに、なぜスイス製を着けるんだ”と諭されたこともあり、ある種の感動を覚えたそうです」

近年、グランドセイコーのリミテッドエディションは増えている印象だが、このAJHH特別限定モデルは取扱店も限られているスペシャル中のスペシャル。本数も390ピースと希少であることから、争奪戦が予想されている。

プライベートなら“冒険”してユニークな複雑時計もイイ

もう一本、気になっている時計を選んでもらったところ意外な回答が得られた。

「販売の職業柄、毎日スーツかジャケットを着ているのでインパクトの強い時計は避けているのですが、もしもプライベート用として、そして金額を気にすることなく手にするならタグ・ホイヤー カレラのトゥールビヨンモデル限定が欲しいですね。カーボンコンポジット製ヒゲゼンマイという未来素材を使い、そのカーボンを原子レベルで見たときのヘキサゴン構造を文字盤デザインに取り入れてしまう。これらはタグ・ホイヤーならではの発想ではないでしょうか」

この時計を紹介する際、増田さんはトリックアートのような特徴も披露し、“驚き”を提供しているようだ。

「ブラックライトをあてると、6時位置のトゥールビヨンキャリッジがミステリアスに光ります。通常、この繊細なパーツに夜光を塗布するブランドはありませんが、常識にとらわれないタグ・ホイヤーだからこそ実現しました。堅実なグランドセイコーとアバンギャルドなタグ・ホイヤー カレラ。リッチで希少なこの2モデルを所有できたとしたら、日々のモチベーションも高まること間違いなしですね(笑)」

“商売とは感動を与えることである”と偉人が残したが、高級時計のような高額製品ではいっそうその心得が必要だろう。感動や驚きといった心を揺さぶることができる時計と、その素晴らしさを伝えられるスタッフ。この要素が重なるトミヤなら、最高の時計に出会えるに違いない。

 

＜取材・撮影協力＞
トミヤ タイムアート

Tel：086-235-1038
住所：岡山県岡山市北区表町2-2-60
営業：11:00～18:00(※時短営業中)
定休日：無休
https://www.tomiya.co.jp/

取扱ブランド：グランドセイコー、タグ・ホイヤー、チューダー、H.モーザー、ウブロ、パテック フィリップなど