ここ2〜3年で、ビッグブランドを中心に文字盤のグレードが飛躍的に進化しています。目の肥えたユーザーを満足させるため、色表現や仕上げ、設計にこだわって作られた注目の時計を紹介します。
2016年は梨地仕上げが大豊作
2016年のバーゼルワールドでは、表面に細かな凹凸のついた梨地仕上げの文字盤が数多く見られました。盤面に粒子を吹き付けるサンドブラスト加工は、マットな質感が特徴。文字盤が受ける光の反射を抑えて、視認性を高めるという効果も得られます。
ゼニスは経年変化したような風合いに仕上げて独特のヴィンテージ感を演出。ブルガリは昨年発表されたディアゴノ マグネシウムにクロノグラフを搭載したモデルにも「モーターラック」仕上げを採用しました。国産時計では、グランドセイコーが独自技術で新たな世界観を構築するなど、各社が梨地仕上げのダイアルで次世代の時計表現に取り組んでいます。
外装をエイジング加工したカフェレーサー仕様
エル・プリメロCal.4069を搭載したケースや文字盤に、エイジング加工を施した一本。英国で1960年代に起こったカスタムバイク文化「カフェレーサー」に通じるスタイルを、マットなスレートグレー文字盤と、いぶし銀のケース、ヌバックレザーで表現しています。裏蓋にはバイクに跨がる「カフェレーサー」の姿も確認できます。
【SPEC】
ムーブメント:自動巻き(Cal.エル・プリメロ4069)、毎時3万6000振動、50時間パワーリザーブ
素材:SSケース、オイリーヌバックストラップ
サイズ:直径45mm、厚さ14.25mm
防水性:10気圧
先進素材を組み合わせつつ仕上げに統一感をもたせる
実用金属中で最も軽いとされるマグネシウム合金を、超耐熱高分子樹脂のPEEKで挟み込み、セラミックベゼルと合わせた2015年発表モデルのクロノグラフ版。耐久性に配慮し、裏蓋や操作系統にはPVD加工を施したSSが使われています。ミドルケースと文字盤は、高級スポーツカーのエンジンにも通じる「モーターラック」仕上げです。
【SPEC】
ムーブメント:自動巻き(Cal.B130)、毎時2万8800振動、約38時間パワーリザーブ
素材:マグネシウム+PEEK+セラミック+SSケース(シースルーバック)、ラバーストラップ
サイズ:直径42mm
防水性:10気圧
ダイアルの奥で輝き出す粒子に高度な技術を見る
独自の駆動方式「スプリングドライブ」のパワーリザーブを8日間に引き上げた限定仕様。長野県塩尻市にある高級時計の専門工房「マイクロアーティスト工房」が手がけた、初のグランドセイコーとして発表されました。チラチラと光の瞬きを見せる文字盤は、諏訪地方の冬の朝に見られるダイヤモンドダストがモチーフとなっています。
【SPEC】
ムーブメント:手巻きスプリングドライブ(Cal.9R01)、約192時間パワーリザーブ
素材:プラチナケース(シースルーバック)、クロコダイルストラップ
サイズ:直径43mm、厚さ13.2mm
防水性:10気圧
梨地仕上げの文字盤自体は古くからありますが、現代の技術を用いることで非常に目が細く、立体的な造形が愉しめます。このひと手間が、時計の持つ固有の世界観を盛り上げていることは、言うまでもないことでしょう。