生誕90年、没後40年に振り返る伝説のスター“スティーブ・マックイーン”と腕時計の物語――タグ・ホイヤー&ロレックス

“新型コロナウイルス”によって外出自粛を余儀なくされ、自宅でどのように快適に過ごすかが話題となった。そこで衛星放送やネットストリーミング配信が大人気となったわけだが、この機会にひとりの映画俳優の名がにわかに存在感を放っている。それが「スティーブ・マックイーン」だ。銀幕のスターにしてファッションアイコンだった彼は、腕時計にもこだわりを持っていた。とくに有名なエピソードがある2本の腕時計について紹介しよう。

Photofest/アフロ 「大脱走」© 1963 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC. AND JOHN STURGES. All Rights Reserved

いまも語り継がれるスティーブ・マックイーンの魅力とは

1960年代から‘70年代にかけハリウッドムービーの頂点に立つ名優として名を馳せ、その生き様や芸風から“The King of Cool”と崇められた「スティーブ・マックイーン」。彼が生まれたのは1930年で、今年で生誕90年となり、没年が1980年のため没後40年にもあたる。この節目に際し、すべての出演作がBS10 スターチャンネルで一挙放送されるなど、改めて関心が高まっている。マックイーンがこうして時を越えて多くの人々に支持されるのは、演技の素晴らしさもさることながら、嗜好からファッションまで一貫した独自のスタイルを確立したことが大きい。

マックイーンが演技を学び、俳優を志したのは1952年、22歳の頃だ。それより以前の経験も彼の人生に影響を与えた。インディアナ州に生まれた彼は幼年期から思春期を両親の離婚、アルコール依存症となった母との生活、継父の暴力などの苦難に翻弄されながら過ごし、一時は鬱憤に耐え切れず非行に走り、感化院に収容されたこともあった。だが、多感な時期にどん底を見た彼の中には生への情熱がメラメラと燃えあがり、一念発起して海兵隊に入隊。1950年に名誉除隊を果たしている。

Photofest/アフロ 「拳銃無宿」©1958-1960 FOUR STAR – MALCOLM(A JOINT VENTURE)

以降、TVシリーズの『拳銃無宿』(1958年〜‘61年)、映画『荒野の七人』(1960年)、『大脱走』(1963年)、『ブリット』(1968年)など多くの作品に出演し、飛ぶ鳥を落とす勢いでスターダムに上り詰めたのは多くの人が知るところ。

そして『大脱走』におけるミリタリーファッションや『ブリット』のド派手なカーアクションといった、劇中で重要な役割りを果たす要素は従来の“演出”の域を超えていた。それらは若い頃、試練の日々のなかで出会って魅了され、我がものとしてきたスタイルや偏愛、あるいは彼の核心そのものともいえる。無骨で実用的な装いや、クルマやバイクによるスピードへの挑戦は、“反逆のヒーロー”というマックイーンのパブリックイメージを決定的なものにした。

角型レーシング・クロノグラフを着けたレーサーを演じる

そんなマックイーンは、腕時計に関しても並々ならぬこだわりがあったようで、いくつかの作品でその片鱗を見ることができる。代表的なものが、1971年に公開された傑作レース映画『栄光のル・マン』だ。

本作は世界的カーレースとして知られる「ル・マン24時間耐久レース」を描いたもの。一般的なレース映画と異なり、実際のレースに撮影車両を参加させ、本物の競技風景がふんだんに盛り込まれている。多数のトップドライバーがキャストとして参画し、臨場感あふれるセミ・ドキュメンタリー形式に仕上がった本作は、マックイーン自身のプロダクションが制作を担当。まさに彼の本懐といえる内容だった。

マックイーンは主人公のドライバー、マイケル・デラニーを演じており、劇中でタグ・ホイヤー(当時はホイヤー)の傑作クロノグラフ「モナコ」を着用している。敬愛するスイス人レーサー、ジョー・シフェールと同じガルフチームのレーシングスーツに身を包み、ジョーをサポートしていたホイヤーの当時の最先端モデルを腕に撮影に挑んだのだ。

1969年に発表されたオリジナルのモナコ

モナコは『栄光のル・マン』が公開される2年前の1969年、ホイヤーがブライトリングやハミルトンらと共同開発した世界初の自動巻きクロノグラフムーブメント「キャリバー11」を搭載し、レーシングウオッチ戦略の一環として発表された。世界初の角型防水時計でもあり、当初から実力機として注目されてはいたが、この映画でマックイーンが着用したことで一気にブレイク。現在はオリジナルの復刻モデルがラインナップされている。

【現行モデル】「タグ・ホイヤー モナコ キャリバー11 クロノグラフ」Ref.CAW211P.FC6356 72万6000円/自動巻き(Cal.11)、毎時2万8800振動、約40時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)。カーフストラップ。縦横39mm。100m防水

問:LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー TEL.03-5635-7054
https://www.tagheuer.com/ja-jp

ロレックス好きで知られる2大スターが共演!! そこで“サブ”を着用

『栄光のル・マン』から3年後。1974年公開の『タワーリング・インフェルノ』では、マックイーンの腕にロレックスの人気モデルを見ることができる。この映画で彼は消防隊長のマイケル・オハラハンを演じており、火災現場という修羅場を耐え抜くためのツールとしてダイバーズのサブマリーナー(Ref.5512)を着用していた。彼はロレックスの愛好家としても知られており、長年連れ添った仕事仲間のスタントマンにも同じ“サブ”のRef.5513を贈るなど、逸話が語り継がれている。

ちなみにこの映画はマックイーンとポール・ニューマンのW主演であり、それだけでもかなりの超大作とわかる。冒頭に流れる出演者テロップには、両者の名前が同時に表示されるという当時ではめずらしいシーンも話題になった。一種のライバル関係を示すエピソードだが、彼らの共通点のひとつがロレックスをこよなく愛していたこと。マックイーンはサブマリーナーを、ポール・ニューマンはクロノグラフのデイトナを着けている姿が確認されている。

サブマリーナー Ref.5512は、1959年に登場

ダイバーズウオッチのベンチマークたる普遍的な存在のサブマリーナーは、ダイビングスケール付きの回転ベゼル、ねじ込み式のリューズとケースバック、海中でも高い視認性を発揮するブラックダイアルなど、大きな水圧に耐える屈強なオイスターケースに潜水のための様々な機能を備えている。とりわけRef.5512は、初めてリューズガードを搭載した名機であり、発売後20年間のロングセラーを誇った。

【現行モデル】「ロレックス オイスターパーペチュアル サブマリーナー」Ref.114060 83万2700円/自動巻き(自社製Cal.3130)、毎時2万8800振動、約48時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径40mm。300m防水
Photofest/アフロ

スティーブ・マックイーン独自のスタイルとは、若かりし日に培った不屈の反骨精神。そのバックボーンによって時代のヒーローになった彼に選ばれた「モナコ」と「サブマリーナー」は、一見似つかぬようだがどちらも長きにわたって原初の魅力をそのままに、現行モデルへと至る進化を継続している点で類似している。取りも直さず、それは本物を見抜き、愛することにも繋がる。映画の歴史の偉大な節目は、“本物の時計”の存在も示唆してくれるのだ。

 

【BS10 スターチャンネル】「史上初!生誕90年スティーヴ・マックイーン完全網羅」
5月は【キャリア初期・貴重な作品】、6月は【別の顔】などテーマごとに出演作品を放送中。
詳しくは特集ウェブサイト(https://www.star-ch.jp/mcqueen/)