「グランドセイコー」がなぜ国産最高峰であり続けるのか、その秘密をキーワード別に調査する本企画。
後編は、岩手県雫石にある同ブランド工房のユニークな特色や、クロノメーターの規格基準を上回る「GS規格」検査について徹底解説。
さらに、3タイプのムーブが選べるコレクションもピックアップ。その魅力を、余すことなくご紹介していきます!
※前編はコチラ!
KeyWord⑥:マイスターの匠技
技能の到達度や熟練度によって、社内で数人しか認定されていないゴールドマイスターやシルバーマイスター、マイスターなど社内資格を認定。上位のマイスターから下位のマイスターへ技術の指導や伝授を行う体制が採られているのも、この工房のユニークな特色です。長い歴史と共に育み、蓄積されたグランドセイコーのテクノロジーとノウハウは、後の世代へも連綿と継承されるシステムが確立されています。
1人の技能士が1本の時計を最後まで担当するのではなく、調速・脱進機構の組み立て、輪列機構の組み立て、外装パーツの組み込みなど、作業は工程ごとに細分化して各技能師が担当。これにより専門的で高度な、そして効率的な作業が実現しています。
KeyWord⑦:GS 規格
クロノメーター規格で実施される5姿勢に加え、12時上位置を加えた合計6姿勢などで検査されるGS規格。自社の製品にあえて苛酷すぎる規格を適用するのも「ユーザーがどんな使用状況下でも、グランドセイコーとして誇れる精度と安定性を提供する」という、ブランドとしての真摯な姿勢の表れです。
約20名の精鋭集団が機械に鼓動を吹き込む
時計製造の最終工程である組み立て・調整、検査工程はチリやホコリをシャットアウトしたクリーンルーム工房で実施されます。ここでは、黄綬褒章や卓越技能章を受章した現代の名工を筆頭に、約20名の時計技能士が作業を担当。
ひげゼンマイが正確な円を描き安定して振幅しているか、歯車の噛み合わせは適切かなど、ミクロン単位の精密な調整を重ねながら時計は組み立てられ、ケーシング前に待ち構えるのが同社独自のグランドセイコー(GS)規格検査です。
このテストでは、クロノメーターの規格基準を上回る苛酷なテストを実施。クロノメーターでは「5つの姿勢差で15日間」の検査が行われますが、GS規格では「6つの姿勢差で17日間」などの検査を実施します。
6つの姿勢差とは時計を、文字盤を上にしたり横にしたりと、全方位で検査するということ。これは調整技術的には「逃げ場のない(部品の作動誤差がどの方向へも許されない)」苛酷なテストで、世界でもあまり例を見ない検査方法です。グランドセイコーが「世界最高峰の精度」と称されるのも、このテストが由来となっています。
KeyWord⑧:新たな未来への飛翔
2017年の独立ブランド化により、新たな歴史を刻み始めたグランドセイコー。プレステージ性豊かなそのコレクションは、独立を契機にさらに拡充。今後はスポーツ系モデルや、ラグジュアリーラインなどにも、さらなる頂点を目指した進化が予定されています。
3タイプのムーブが選べる多様なコレクションが魅力
グランドセイコーのメカニカルムーブが「世界最高水準」を達成していることはここまで紹介してきましたが、同社にはこの機械式に加えてあと2タイプの旗艦ムーブが存在します。それが塩尻市のマニュファクチュールで製造される、9Rスプリングドライブと9Fクオーツ。
スプリングドライブとは、電池やモーターを使用しないメカニカルな基本構造を持ちながらも、クオーツ並みの高精度を実現した同社が独自開発したハイブリッド型ムーブ。9Fクオーツは、グランドセイコーのために1993年に「クオーツを超えたクオーツ」として誕生した、世界最高峰のクオーツムーブのことを指します。
ちなみに、一般的なクオーツは通常のブランドでは工場で自動組み立てされますが、9Fクオーツはデイト表示の瞬間日送りカレンダー機構や、ひげゼンマイを用いて秒針の動きを安定させる運針機構が複雑なので、オート組み立てが不可能。そのため、熟練職人が手作業で組み立てを担当するといいます。
歴史が育んできた優れた職人技を基幹にしながら、そんな時計界の常識を覆す革新を成し遂げる最高峰への探求の姿勢が、グランドセイコーというブランドが持つ「凄み」であり「真価」といえるでしょう。
9S メカニカル ハイビート36000 GMT(機械式)
文字盤外周の24時間表記とブラックダイアルに映える赤いGMT針で、異なる地域の時刻を表示。ダイアルには雫石高級時計工房から望む、岩手山の山肌を表現した「岩手山パターン」を採用。Cal.9S86搭載。ケース径40㎜。10気圧防水。SSケース
Cal.9S86
MEMS技術や新素材などを採用し、パワーリザーブや精度安定性を進化させた新世代の自動巻きハイビート9S85に、GMT機能を追加。毎時3万6000振動。平均日差+5秒~-3秒
9F クオーツ
GSの持つ凛とした風格のあるデザインをベースに、ケース径を40㎜に拡大。文字盤サイズのアップに伴い、針はより長
くインデックスも細やかな面取りを増し、視認性がさらに向上している。Cal.9F82搭載。10気圧防水。SSケース
Cal.9F82
高いトルクを実現するツインパルス制御モーターや瞬間日送りカレンダーなど、独自機構を盛り込んだ最高峰クオーツ。年差±10秒
スプリングドライブ ブライトチタン
SSに比べ約30%軽量で、耐傷性や耐食性にも優れたブライトチタンをケースとブレスに採用することで軽快な着用感を実現。純白ダイアルにブルースチール秒針の組み合わせが、シックなクラス感を演出する。ケース径41㎜。Cal.9R65搭載。10気圧防水
Cal.9R65(スプリングドライブ)
ゼンマイを動力源としながらも調速を水晶振動子とIC回路が担当することで、クオーツ並みの超高精度を実現。機械式とクオーツのメカニズムを融合した、腕時計の第3の駆動方式ムーブ。平均月差±15秒
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